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第10話 その後~フィリップの場合~ 前編 フィリップ視点(4)

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「たっ、頼むっ!! やめてくれ!! 浮気なんてしないっ、しないと誓うから!! もしもその気配を感じたら、その時はやってもらって構わないから!! 構いませんから・・・・・・・!! お願いですっっ!! やめてくださぃいいいいいいいいい!!」

 目の前にいるのは、可憐な少女ではなく闇を秘めた化け物。それを理解した俺は、必死に首を振りながら懇願する。
 自分の身体なのにっ! 首から下が自分の意思では動かなくなってきているっ! 思い通りに動かなくなってきているからっ!!
 早くっ、はやくっ!! 止めてくれぇ!!

「え~。だからぁ、駄目ですよぉ。それにぃ、フィリップ様ぁ。その状態になったらぁ、もうストップできないんですよぉ。もとには戻せないんですよねぇ」
「!? そ、んな…………」
「でもでもぉ。フィリップ様は、わたしを世界で一番愛してくれているんですよねぇ? そんなわたしとず~っと、一緒に居られるんですからぁ。い~じゃないですかぁ」

 いいワケがない!! 俺はもう、お前を好きじゃない!! 恐ろしい!! こんな人間と一生一緒だなんてごめんだ!!

「た、頼む……!! 他の事ならなんでもするから……!! 許してくれ……!! 助けてくれぇぇ……!!」
「これも、さっき言ったばかりですけどぉ、無理なんですよぉ。フィリップ様ぁ、怖いのは今だけですぅ。もうすぐ、きもちよ~くなりますからぁ。安心してくださいねぇ」
「いっ、嫌だっ!! 嫌だ嫌だ嫌だっ!! 俺が俺でなくなるのは嫌だ!! そんなのはっ、俺じゃな――ミレス。大好き、だよ」

 口が独りでに、こんなことを言った。
 そ、それに……。それに…………っ。

((心が、変わってゆく……!))

 ミレスは恐ろしい女のはずなのに、次第に愛しくなってゆく。
 どんなに抗っても、意味がなく……。どんどんと恐怖が消えていって……。愛情が、生まれてゆく……。

((お、俺が塗り替えられていく……!! ぁぁぁぁああああああ!! とまれぇぇぇぇ!! とまれぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!))

 必死に叫んで、抵抗をする。でも……。やはり、無意味で……。
 やがては…………。心の中が、好きで満たされて……。思考回路は、ミレス中心になってしまって…………。

「完成、ですねぇ。フィリップ様ぁ、ずっとずっとぉ。わたしだけを、見ていてくださいねぇ?」
「ああ。君だけを愛すると誓うよ」

 俺は満面の笑みを浮かべて、#最愛の人__#を抱き締めたのだった――。













 突然すみません。ご報告になります。

 構成の都合で明日はとある視点でのお話(ある人のエピローグにあたるもの)を投稿させていただき、翌日より後編、そして侯爵家当主(フリップの父)のざまぁの投稿をさせていただきます。

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