14 / 37
第6話 お願い ナタリー視点(2)
しおりを挟む
「お父様っ! お父様っっ⁉ 今一度繰り返しますがっ。これは唯々諾々と受け入れらない問題っ。看過できるはずのないっ、大問題なのですわっ! なのにどうしてっ!? そんなことを仰るんですの!?」
娘が、浮気をされている可能性が限りなく高いんですのよ!? なのになぜっ、二の足を踏んでいますの!?
「わからないっっ、ワケが分かりませんわっ! なんでそうなりますの!?」
「…………それはな……。その対象がフィリップ様、侯爵家の次期当主様だからなのだよ……」
相手は圧倒的な力を持つ家の嫡男であり、おまけに、現当主に溺愛されている。そのため万が一勘違いだった場合は――それ以前に、こちらのそういった動きを悟られてしまった場合は、反感を買って大変なことになってしまう。
だから、無理。行いたくても、できない。そう、説明をされた……。
「その道の者を雇い、格下が格上をあれやこれやと調べる。それはお前が思っている以上に危険な、恐ろしい結末を生んでしまう行為なのだよ……」
「……………………」
「侯爵家ならウチ以上に、『強い』駒を持っているに違いない。下手に動くと、大げさではなく……。潰されるのだよ」
わたくしが、物心つく前に起きた出来事――。他の侯爵家の暗躍により、とある男爵家が没落してしまった話を聞かされた。
この国の上級貴族は……。わたくしが想像していたよりも、遥かに……。厄介な存在だった、のですのね……。
「お、思い返せば……。フィリップ様は、リュシーと縁を切る際に……。『駄々をこねるなら、侯爵家の力を以て』と仰られていましたわ……」
「味方であれば神の如し、敵となれば死神の如し。アズステ侯爵家はそれが顕著でな、恐らくは…………こちらが正当な理由で訴えても、ねじ伏せてくるだろう。…………こんなことになるなんて、思いもしなかった……」
「わっ、わたくしもですわっ! じゃ、じゃあっ。わたくしは、どうすれば…………いいん、ですの……っ!?」
だったら、責任の追及なんて夢のまた夢っ。これから、どうしてゆけばいいの……っ?
「………………受け身でいるしか、ない……」
お父様は、ポツリと呟いた。
そして……。そして……っ。
お父様は更に……。愕然となることを、口にしたのだった……。
「再度の心変わりによってお前に気が向き、正式に婚約となる。あるいは完全に興味がなくなり、お前のもとを去ってゆく。この2つのどちらからが起きるのを、待つしかないだろう……」
娘が、浮気をされている可能性が限りなく高いんですのよ!? なのになぜっ、二の足を踏んでいますの!?
「わからないっっ、ワケが分かりませんわっ! なんでそうなりますの!?」
「…………それはな……。その対象がフィリップ様、侯爵家の次期当主様だからなのだよ……」
相手は圧倒的な力を持つ家の嫡男であり、おまけに、現当主に溺愛されている。そのため万が一勘違いだった場合は――それ以前に、こちらのそういった動きを悟られてしまった場合は、反感を買って大変なことになってしまう。
だから、無理。行いたくても、できない。そう、説明をされた……。
「その道の者を雇い、格下が格上をあれやこれやと調べる。それはお前が思っている以上に危険な、恐ろしい結末を生んでしまう行為なのだよ……」
「……………………」
「侯爵家ならウチ以上に、『強い』駒を持っているに違いない。下手に動くと、大げさではなく……。潰されるのだよ」
わたくしが、物心つく前に起きた出来事――。他の侯爵家の暗躍により、とある男爵家が没落してしまった話を聞かされた。
この国の上級貴族は……。わたくしが想像していたよりも、遥かに……。厄介な存在だった、のですのね……。
「お、思い返せば……。フィリップ様は、リュシーと縁を切る際に……。『駄々をこねるなら、侯爵家の力を以て』と仰られていましたわ……」
「味方であれば神の如し、敵となれば死神の如し。アズステ侯爵家はそれが顕著でな、恐らくは…………こちらが正当な理由で訴えても、ねじ伏せてくるだろう。…………こんなことになるなんて、思いもしなかった……」
「わっ、わたくしもですわっ! じゃ、じゃあっ。わたくしは、どうすれば…………いいん、ですの……っ!?」
だったら、責任の追及なんて夢のまた夢っ。これから、どうしてゆけばいいの……っ?
「………………受け身でいるしか、ない……」
お父様は、ポツリと呟いた。
そして……。そして……っ。
お父様は更に……。愕然となることを、口にしたのだった……。
「再度の心変わりによってお前に気が向き、正式に婚約となる。あるいは完全に興味がなくなり、お前のもとを去ってゆく。この2つのどちらからが起きるのを、待つしかないだろう……」
26
お気に入りに追加
2,931
あなたにおすすめの小説

結婚を先延ばしにされたのは婚約者が妹のことを好きだったからでした。妹は既婚者なので波乱の予感しかしません。
田太 優
恋愛
結婚を先延ばしにされ続け、私は我慢の限界だった。
曖昧な態度を取り続ける婚約者に婚約破棄する覚悟で結婚する気があるのか訊いたところ、妹のことが好きだったと言われ、婚約を解消したいと言われた。
妹は既婚者で夫婦関係も良好。
もし妹の幸せを壊そうとするなら私は容赦しない。

結婚式間近に発覚した隠し子の存在。裏切っただけでも問題なのに、何が悪いのか理解できないような人とは結婚できません!
田太 優
恋愛
結婚して幸せになれるはずだったのに婚約者には隠し子がいた。
しかもそのことを何ら悪いとは思っていない様子。
そんな人とは結婚できるはずもなく、婚約破棄するのも当然のこと。

立派な王太子妃~妃の幸せは誰が考えるのか~
矢野りと
恋愛
ある日王太子妃は夫である王太子の不貞の現場を目撃してしまう。愛している夫の裏切りに傷つきながらも、やり直したいと周りに助言を求めるが‥‥。
隠れて不貞を続ける夫を見続けていくうちに壊れていく妻。
周りが気づいた時は何もかも手遅れだった…。
※設定はゆるいです。

王妃様は死にました~今さら後悔しても遅いです~
由良
恋愛
クリスティーナは四歳の頃、王子だったラファエルと婚約を結んだ。
両親が事故に遭い亡くなったあとも、国王が大病を患い隠居したときも、ラファエルはクリスティーナだけが自分の妻になるのだと言って、彼女を守ってきた。
そんなラファエルをクリスティーナは愛し、生涯を共にすると誓った。
王妃となったあとも、ただラファエルのためだけに生きていた。
――彼が愛する女性を連れてくるまでは。

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

男爵令嬢の私の証言で公爵令嬢は全てを失うことになりました。嫌がらせなんてしなければ良かったのに。
田太 優
恋愛
公爵令嬢から嫌がらせのターゲットにされた私。
ただ耐えるだけの日々は、王子から秘密の依頼を受けたことで終わりを迎えた。
私に求められたのは公爵令嬢の嫌がらせを証言すること。
王子から公爵令嬢に告げる婚約破棄に協力することになったのだ。

待ち合わせの時間になっても婚約者は迎えに来ませんでした。平民女性と駆け落ちしたですって!?
田太 優
恋愛
待ち合わせの時間になっても婚約者は迎えに来なかった。
そして知らされた衝撃の事実。
婚約者は駆け落ちしたのだ。
最初から意中の相手がいたから私は大切にされなかったのだろう。
その理由が判明して納得できた。
駆け落ちされたのだから婚約破棄して慰謝料を請求しないと。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる