裏切りの代償~嗤った幼馴染と浮気をした元婚約者はやがて~

柚木ゆず

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第6話 お願い ナタリー視点(2)

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「お父様っ! お父様っっ⁉ 今一度繰り返しますがっ。これは唯々諾々と受け入れらない問題っ。看過できるはずのないっ、大問題なのですわっ! なのにどうしてっ!? そんなことを仰るんですの!?」

 娘が、浮気をされている可能性が限りなく高いんですのよ!? なのになぜっ、二の足を踏んでいますの!?

「わからないっっ、ワケが分かりませんわっ! なんでそうなりますの!?」
「…………それはな……。その対象がフィリップ様、侯爵家の次期当主様だからなのだよ……」

 相手は圧倒的な力を持つ家の嫡男であり、おまけに、現当主に溺愛されている。そのため万が一勘違いだった場合は――それ以前に、こちらのそういった動きを悟られてしまった場合は、反感を買って大変なことになってしまう。
 だから、無理。行いたくても、できない。そう、説明をされた……。

「その道の者を雇い、格下が格上をあれやこれやと調べる。それはお前が思っている以上に危険な、恐ろしい結末を生んでしまう行為なのだよ……」
「……………………」
「侯爵家ならウチ以上に、『強い』駒を持っているに違いない。下手に動くと、大げさではなく……。潰されるのだよ」

 わたくしが、物心つく前に起きた出来事――。他の侯爵家の暗躍により、とある男爵家が没落してしまった話を聞かされた。
 この国の上級貴族は……。わたくしが想像していたよりも、遥かに……。厄介な存在だった、のですのね……。

「お、思い返せば……。フィリップ様は、リュシーと縁を切る際に……。『駄々をこねるなら、侯爵家の力を以て』と仰られていましたわ……」
「味方であれば神の如し、敵となれば死神の如し。アズステ侯爵家はそれが顕著でな、恐らくは…………こちらが正当な理由で訴えても、ねじ伏せてくるだろう。…………こんなことになるなんて、思いもしなかった……」
「わっ、わたくしもですわっ! じゃ、じゃあっ。わたくしは、どうすれば…………いいん、ですの……っ!?」

 だったら、責任の追及なんて夢のまた夢っ。これから、どうしてゆけばいいの……っ?


「………………受け身でいるしか、ない……」


 お父様は、ポツリと呟いた。
 そして……。そして……っ。
 お父様は更に……。愕然となることを、口にしたのだった……。

「再度の心変わりによってお前に気が向き、正式に婚約となる。あるいは完全に興味がなくなり、お前のもとを去ってゆく。この2つのどちらからが起きるのを、待つしかないだろう……」

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