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第5話 1か月後~続々と起きる、不可思議なこと~ ナタリー視点(2)
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「………………………………」
「? どうしたんだい、ナタリー。どうして固まっているんだい?」
あまりの出来事に唖然呆然となっていたら、フィリップ様が目をパチパチと瞬かせ始めた。
ど、どうしてって……。それは……。貴方が…………。
「貴方が、お別れの時なのに満面の笑みを浮かべて……。ミレスという、まるで違う名前を口にされたから、ですわ……」
今までは名残惜しそうにしてたのに、真逆の顔になる。一文字目も文字数の違う女性の名前を、口にした。
その2つが、わたくしをそうさせているんですわ…………。
「なぜ……。そんなにも、嬉しそうなんですの……? なぜ……。ナタリーではなく、ミレスとなっているんですの……?」
「えっ!?」(しまった……っ。ミレスのもとに行けることが嬉しくて、表に出てしまった……!)
「フィリップ様、ぶつぶつと何を仰っていますの? 理由を、説明してください」
「あ、そうだな。うん、そうしよう。あのね、ナタリー。俺がああいった顔をしていたのはね。実はね。アレなんだよ。お別れが寂しくならないように、敢えてあのようにしたんだよ」
フィリップ様はオドオドしながら、改めてスマイルを作った。
「俺のせいでこんなことになって、申し訳なくってね。せめてものお詫びに、心に残る――次回まで君の心に笑顔を刻んでおきたいと考えて、そうしたんだよ。……急にそんなことをすると、驚いてしまうよね? ごめん、言葉足らずだったよ」
「…………そう、なんですの。では、ミレスはどんな理由がおありですの?」
「それは、あれだよあれ。ゆうべ寝る前に読書をしていて、その物語にミレスという人物が出てくるんだ。そのキャラクターが、非常に印象的でね。その影響でああして不意に口から出てしまったんだよ」
また。フィリップ様は終始オドオドしながら、説明をされた。
この方は、行動の理由を語っているだけのはずなのに――。簡単なことな、はずなのに――。やけに難しそうに、懸命になって、行った。
「今日は――今日もだね。重ね重ね、申し訳ない。余計な心配をかけた件も含め、次回挽回させてもらう。期待しておいてくれ」
そうしてフィリップ様は足早に去られ、一家揃ってお見送りをしたあと――。わたくしは自室に戻らず、エゾンお父様にお声をかけて、執務室でお話をすることにしたのでした。
もしかしなくても……。
あの人は…………。
「? どうしたんだい、ナタリー。どうして固まっているんだい?」
あまりの出来事に唖然呆然となっていたら、フィリップ様が目をパチパチと瞬かせ始めた。
ど、どうしてって……。それは……。貴方が…………。
「貴方が、お別れの時なのに満面の笑みを浮かべて……。ミレスという、まるで違う名前を口にされたから、ですわ……」
今までは名残惜しそうにしてたのに、真逆の顔になる。一文字目も文字数の違う女性の名前を、口にした。
その2つが、わたくしをそうさせているんですわ…………。
「なぜ……。そんなにも、嬉しそうなんですの……? なぜ……。ナタリーではなく、ミレスとなっているんですの……?」
「えっ!?」(しまった……っ。ミレスのもとに行けることが嬉しくて、表に出てしまった……!)
「フィリップ様、ぶつぶつと何を仰っていますの? 理由を、説明してください」
「あ、そうだな。うん、そうしよう。あのね、ナタリー。俺がああいった顔をしていたのはね。実はね。アレなんだよ。お別れが寂しくならないように、敢えてあのようにしたんだよ」
フィリップ様はオドオドしながら、改めてスマイルを作った。
「俺のせいでこんなことになって、申し訳なくってね。せめてものお詫びに、心に残る――次回まで君の心に笑顔を刻んでおきたいと考えて、そうしたんだよ。……急にそんなことをすると、驚いてしまうよね? ごめん、言葉足らずだったよ」
「…………そう、なんですの。では、ミレスはどんな理由がおありですの?」
「それは、あれだよあれ。ゆうべ寝る前に読書をしていて、その物語にミレスという人物が出てくるんだ。そのキャラクターが、非常に印象的でね。その影響でああして不意に口から出てしまったんだよ」
また。フィリップ様は終始オドオドしながら、説明をされた。
この方は、行動の理由を語っているだけのはずなのに――。簡単なことな、はずなのに――。やけに難しそうに、懸命になって、行った。
「今日は――今日もだね。重ね重ね、申し訳ない。余計な心配をかけた件も含め、次回挽回させてもらう。期待しておいてくれ」
そうしてフィリップ様は足早に去られ、一家揃ってお見送りをしたあと――。わたくしは自室に戻らず、エゾンお父様にお声をかけて、執務室でお話をすることにしたのでした。
もしかしなくても……。
あの人は…………。
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