裏切りの代償~嗤った幼馴染と浮気をした元婚約者はやがて~

柚木ゆず

文字の大きさ
上 下
12 / 37

第5話 1か月後~続々と起きる、不可思議なこと~ ナタリー視点(2)

しおりを挟む
「………………………………」
「? どうしたんだい、ナタリー。どうして固まっているんだい?」

 あまりの出来事に唖然呆然となっていたら、フィリップ様が目をパチパチと瞬かせ始めた。
 ど、どうしてって……。それは……。貴方が…………。

「貴方が、お別れの時なのに満面の笑みを浮かべて……。ミレスという、まるで違う名前を口にされたから、ですわ……」

 今までは名残惜しそうにしてたのに、真逆の顔になる。一文字目も文字数の違う女性同性の名前を、口にした。
 その2つが、わたくしをそうさせているんですわ…………。

「なぜ……。そんなにも、嬉しそうなんですの……? なぜ……。ナタリーではなく、ミレスとなっているんですの……?」
「えっ!?」(しまった……っ。ミレスのもとに行けることが嬉しくて、表に出てしまった……!)
「フィリップ様、ぶつぶつと何を仰っていますの? 理由を、説明してください」
「あ、そうだな。うん、そうしよう。あのね、ナタリー。俺がああいった顔をしていたのはね。実はね。アレなんだよ。お別れが寂しくならないように、敢えてあのようにしたんだよ」

 フィリップ様はオドオドしながら、改めてスマイルを作った。

「俺のせいでこんなことになって、申し訳なくってね。せめてものお詫びに、心に残る――次回まで君の心に笑顔を刻んでおきたいと考えて、そうしたんだよ。……急にそんなことをすると、驚いてしまうよね? ごめん、言葉足らずだったよ」
「…………そう、なんですの。では、ミレスはどんな理由がおありですの?」
「それは、あれだよあれ。ゆうべ寝る前に読書をしていて、その物語にミレスという人物が出てくるんだ。そのキャラクターが、非常に印象的でね。その影響でああして不意に口から出てしまったんだよ」

 また。フィリップ様は終始オドオドしながら、説明をされた。
 この方は、行動の理由を語っているだけのはずなのに――。簡単なことな、はずなのに――。やけに難しそうに、懸命になって、行った。

「今日は――今日もだね。重ね重ね、申し訳ない。余計な心配をかけた件も含め、次回挽回させてもらう。期待しておいてくれ」

 そうしてフィリップ様は足早に去られ、一家揃ってお見送りをしたあと――。わたくしは自室に戻らず、エゾンお父様にお声をかけて、執務室でお話をすることにしたのでした。

 もしかしなくても……。
 あの人は…………。

しおりを挟む
感想 262

あなたにおすすめの小説

結婚を先延ばしにされたのは婚約者が妹のことを好きだったからでした。妹は既婚者なので波乱の予感しかしません。

田太 優
恋愛
結婚を先延ばしにされ続け、私は我慢の限界だった。 曖昧な態度を取り続ける婚約者に婚約破棄する覚悟で結婚する気があるのか訊いたところ、妹のことが好きだったと言われ、婚約を解消したいと言われた。 妹は既婚者で夫婦関係も良好。 もし妹の幸せを壊そうとするなら私は容赦しない。

結婚式間近に発覚した隠し子の存在。裏切っただけでも問題なのに、何が悪いのか理解できないような人とは結婚できません!

田太 優
恋愛
結婚して幸せになれるはずだったのに婚約者には隠し子がいた。 しかもそのことを何ら悪いとは思っていない様子。 そんな人とは結婚できるはずもなく、婚約破棄するのも当然のこと。

立派な王太子妃~妃の幸せは誰が考えるのか~

矢野りと
恋愛
ある日王太子妃は夫である王太子の不貞の現場を目撃してしまう。愛している夫の裏切りに傷つきながらも、やり直したいと周りに助言を求めるが‥‥。 隠れて不貞を続ける夫を見続けていくうちに壊れていく妻。 周りが気づいた時は何もかも手遅れだった…。 ※設定はゆるいです。

王妃様は死にました~今さら後悔しても遅いです~

由良
恋愛
クリスティーナは四歳の頃、王子だったラファエルと婚約を結んだ。 両親が事故に遭い亡くなったあとも、国王が大病を患い隠居したときも、ラファエルはクリスティーナだけが自分の妻になるのだと言って、彼女を守ってきた。 そんなラファエルをクリスティーナは愛し、生涯を共にすると誓った。 王妃となったあとも、ただラファエルのためだけに生きていた。 ――彼が愛する女性を連れてくるまでは。

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

男爵令嬢の私の証言で公爵令嬢は全てを失うことになりました。嫌がらせなんてしなければ良かったのに。

田太 優
恋愛
公爵令嬢から嫌がらせのターゲットにされた私。 ただ耐えるだけの日々は、王子から秘密の依頼を受けたことで終わりを迎えた。 私に求められたのは公爵令嬢の嫌がらせを証言すること。 王子から公爵令嬢に告げる婚約破棄に協力することになったのだ。

待ち合わせの時間になっても婚約者は迎えに来ませんでした。平民女性と駆け落ちしたですって!?

田太 優
恋愛
待ち合わせの時間になっても婚約者は迎えに来なかった。 そして知らされた衝撃の事実。 婚約者は駆け落ちしたのだ。 最初から意中の相手がいたから私は大切にされなかったのだろう。 その理由が判明して納得できた。 駆け落ちされたのだから婚約破棄して慰謝料を請求しないと。

【完結】愛することはないと告げられ、最悪の新婚生活が始まりました

紫崎 藍華
恋愛
結婚式で誓われた愛は嘘だった。 初夜を迎える前に夫は別の女性の事が好きだと打ち明けた。

処理中です...