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第4話 確信と、フィリップの秘密 ナタリー&俯瞰視点
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「…………やっぱり、そうですわ。あれは、フィリップ様ですわ」
改めての思案を始めて、およそ30分後。念入りに記憶を掘り返していたわたくしは、そう結論付けました。
見間違え、ではない。あそこにいたのは確かに、フィリップ様でした。
「…………なら、どうしてあのような嘘を……? あの方は…………何を、考えていらっしゃるんですの……?」
〇〇
「わぁ~っ。来てくださり、ありがとうございます~」
「ミレス、遅くなってごめんね。会いたかったよ……っ」
ルース邸を――ナタリーのもとを去ってから、およそ2時間後。彼はこの国の西部に建つユレスト男爵家邸の2階にある、ピンクを基調とした部屋にいました。
この部屋の持ち主である、ユレスト家の長女・ミレス。彼女とフィリップの関係は、友達以上恋人未満。
フィリップは再び浮気を行い、再び、2人の令嬢と同時に関係を持っていたのです。
その切っ掛けは、1か月前でした――。
((…………。ナタリーには、以前のような輝きがなくなってきたな……))
リュシーとの縁を切って、4か月後。正式に交際を始めてから、4か月後。フィリップはナタリー、そしてナタリーと過ごす時間に、飽き始めていました。
そして、そんな時――
((っっ! 女神が、いた……!!))
友人が開いた夜会で、ミレスを目撃。緩いウェーブがかかったブロンド。タレ目。ほんわかとした雰囲気。それらに一瞬にして目を奪われ、なんと即日、アプローチを始めていたのでした。『君に惚れてしまった。どうか俺と時を過ごし、俺を理解して欲しい』『そうして良いと感じたら、付き合って欲しい』と、口にしていたのでした。
「フィリップ様のお家からは、遠いのに~……。毎日来てくださって、大変じゃないですかぁ?」
「ミューズに会う為なのだから、そんなものは苦労に入らないよ。それに前にも言ったように、今は誰とも付き合っていないからね。そもそも時間には余裕があるんだよ」
今日が2時間の滞在だったのも、一昨日早く切り上げたのも、昨日丸一日会わなかったのも。全ては、ミレスと過ごす時間を確保すするためのものでした。
そして――
「今日はね、君にプレゼントがあるんだ。受け取って欲しい」
「わぁ、ありがとうございます~っ。えっとえっと、フィリップ様からのプレゼントは…………ふぇっ!? 素敵なネックレスをいただいちゃいました~……っ」
――昨日レーフェルンで購入していたアレは、ミレスにプレゼントするためのもの。
今日は関係を持ち始めて1か月の記念日なため、是が非でもハイクオリティーな逸品を欲しかった。それを実現しつつミレスと会うには時間が足りないため、フィリップはあのように嘘を吐いていたのでした。
「フィリップさまぁ、ありがとうございます~。わたしぃ、幸せです~っ」
「あははっ、喜んでもらえて嬉しいよ。いずれはエンゲージリングを渡せるようになるといいな」
へにゃっとした笑顔に微笑みを返し、2人はキス――。
ナタリーがあれこれ悩んでいる時。フィリップは別の令嬢の部屋で、甘い時を過ごしていたのでした――。
改めての思案を始めて、およそ30分後。念入りに記憶を掘り返していたわたくしは、そう結論付けました。
見間違え、ではない。あそこにいたのは確かに、フィリップ様でした。
「…………なら、どうしてあのような嘘を……? あの方は…………何を、考えていらっしゃるんですの……?」
〇〇
「わぁ~っ。来てくださり、ありがとうございます~」
「ミレス、遅くなってごめんね。会いたかったよ……っ」
ルース邸を――ナタリーのもとを去ってから、およそ2時間後。彼はこの国の西部に建つユレスト男爵家邸の2階にある、ピンクを基調とした部屋にいました。
この部屋の持ち主である、ユレスト家の長女・ミレス。彼女とフィリップの関係は、友達以上恋人未満。
フィリップは再び浮気を行い、再び、2人の令嬢と同時に関係を持っていたのです。
その切っ掛けは、1か月前でした――。
((…………。ナタリーには、以前のような輝きがなくなってきたな……))
リュシーとの縁を切って、4か月後。正式に交際を始めてから、4か月後。フィリップはナタリー、そしてナタリーと過ごす時間に、飽き始めていました。
そして、そんな時――
((っっ! 女神が、いた……!!))
友人が開いた夜会で、ミレスを目撃。緩いウェーブがかかったブロンド。タレ目。ほんわかとした雰囲気。それらに一瞬にして目を奪われ、なんと即日、アプローチを始めていたのでした。『君に惚れてしまった。どうか俺と時を過ごし、俺を理解して欲しい』『そうして良いと感じたら、付き合って欲しい』と、口にしていたのでした。
「フィリップ様のお家からは、遠いのに~……。毎日来てくださって、大変じゃないですかぁ?」
「ミューズに会う為なのだから、そんなものは苦労に入らないよ。それに前にも言ったように、今は誰とも付き合っていないからね。そもそも時間には余裕があるんだよ」
今日が2時間の滞在だったのも、一昨日早く切り上げたのも、昨日丸一日会わなかったのも。全ては、ミレスと過ごす時間を確保すするためのものでした。
そして――
「今日はね、君にプレゼントがあるんだ。受け取って欲しい」
「わぁ、ありがとうございます~っ。えっとえっと、フィリップ様からのプレゼントは…………ふぇっ!? 素敵なネックレスをいただいちゃいました~……っ」
――昨日レーフェルンで購入していたアレは、ミレスにプレゼントするためのもの。
今日は関係を持ち始めて1か月の記念日なため、是が非でもハイクオリティーな逸品を欲しかった。それを実現しつつミレスと会うには時間が足りないため、フィリップはあのように嘘を吐いていたのでした。
「フィリップさまぁ、ありがとうございます~。わたしぃ、幸せです~っ」
「あははっ、喜んでもらえて嬉しいよ。いずれはエンゲージリングを渡せるようになるといいな」
へにゃっとした笑顔に微笑みを返し、2人はキス――。
ナタリーがあれこれ悩んでいる時。フィリップは別の令嬢の部屋で、甘い時を過ごしていたのでした――。
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