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第3話 あれ……? ナタリー視点(2)

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「ふぃっ、フィリップ様っ! フィリップ様っっ!? お帰りになりますのっっ!?」

 帰る宣言が出た、その直後。わたくしは座っていたイスから立ち上がり、おもわずお顔を覗き込んだ。
 帰る!? まだプレゼントを渡していないのに!? 帰るんですの!?

「あ、ああ。このあと、家に関する予定があるからね。……ど、どうしたんだい?」
「ど、どうしたって……。それは……。その……」

 言えない。言えるはずがありませんわ。
 だって『昨日見た』と口にしてしまえば、フィリップ様の行動と努力が台無しになってしまうんですもの。プレゼントに言及できず、言い淀んでしまう。

「??? そ、その? なんなんだい?」
「ええと、ですね……。えーっと……。えっと……。え~……。あ~……。んーと……。あー……。えー……………………っっ、フィリップ様っ。何か、お忘れではありませんか?」

 悩んだ末に、この角度で攻めてみることにしました。
 両手には何も持っていないから、ポケットか懐。そのどちらかに隠しているものを、出し忘れていますわよっ。

「よく、お考えください。何か、お忘れになっていませんか?」
「え……? ………………いいや? なにも忘れていないよ?」

 え!? なにも忘れていない!?
 なっ、何を仰ってますの!? アレ、を忘れているじゃありませんのっ!!

「ふぃっ、フィリップ様っ! 大事な何かを、忘れている気がしますわっ! もう一度、振り返ってみてくださいっ!」

 多少強引になるのは、この際仕方がありませんわ。
 さあっ、早くっ! 考えてみてくださいましっ!!

「あ、ああ。………………………………」
「フィリップ様っ! あるはずですわ! ありました、よねっ!?」
「…………………………………………」

 フィリップ様はまだ、お考えになられている。
 うそでしょう!? 自分が行った事を、忘れているんですの!?

「…………………………………………。いや、そういったものはないと――」
「なんだかっ、2日前に切っ掛けがあるような気がしますわっ! この部屋を去られる辺りに、何かがある気がしますっ!」

 ほぼ言っているようなもの。でも、さっきよりも更に仕方がありませんわ。
 だって、こうでもしないと出てきそうにないんですものっ。

「よ~く考えて、思い出してみてください。あります、わよね?」
「…………………………………………あっ。そうだった! 『何か素晴らしいものを用意しておく』、と約束したんだったよね」

 ほっ。そう、そうですわ。それ、ですわ。
 貴方はそんな優しい嘘をついて、昨日わたくしのために――


「ごめんよナタリー。昨日一昨日と多忙で、何も用意できていないんだ。それは次回、行わせてもらうよ」


 ――え……?
 …………なにも、ない…………?

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