心を失ってしまった令嬢は、心優しい精霊王に愛される

柚木ゆず

文字の大きさ
上 下
52 / 52

エピローグ 1年後~2人はその後~ 俯瞰視点(2)

しおりを挟む
「――。――――。――――。――――――。――――――――」

 人間には聞き取れない特殊な言語で構成された、精霊化の文言。セレスティンがソレを唱え始めるとラシェルの足元に七色の魔法陣が輝き、詠唱が終わると同時に陣は強く強く発光します。
 まるで太陽が間近にあるような、大きく強い光。そんな光が収まるとラシェルは光の繭に包まれており、

「――――。――――」

 再び特殊な言語をセレスティンが紡ぐと、繭は蒸気のようになって消え去り、そうすると再びラシェルが――神聖なるオーラを纏ってはいるものの、先程までと全く同じ姿をしたラシェルが現れました。

 ――精霊化――。

 それは新たな種へと変化させる儀式ではありますが、外見やあらゆる生命活動に変化が生じることはありません。
 今後ラシェルは精霊界では精霊王妃として、人間界ではターザッカル伯爵家の当主として、これまでと変わらない毎日を過ごすことになるのです。

「終わったよ、ラシェル」
「…………ありがとうございます。…………これで私は末永く、貴方様と共に歩めるのですね」
「ああ、そうだよ。ラシェル、ありがとうと言ってくれてありがとう」

 長い間一緒に進めることを、嬉し涙を流して喜んでくれる。そんな姿に喜びを感じ、目を細めながら感謝を伝えて――。
 そうしていると2人の身体が自然と近づき、やがて2人は見つめ合いました。

「先ほど、いただいたばかりですが……。私は今、精霊ですので。精霊での初めてを、いただけますでしょうか?」
「もちろん。それは最高の栄誉だ」

 熱を帯びた瞳に、真摯で柔らかな目線が注がれて。身体のあとは、ふたつの唇の距離が縮まってゆき――

「ラシェル。愛している」
「セレスティン様、お慕いしております」

 キスをして――。
 2人は声と動作、感触で、お互いの想いを感じ合ったのでした――。









しおりを挟む
感想 55

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(55件)

弓はあと
2022.03.09 弓はあと
ネタバレ含む
柚木ゆず
2022.03.12 柚木ゆず

弓はあと様。わざわざ感想をくださり、ありがとうございます。

おっしゃる通りでして。最初彼が抱いていたのは、そういった感情でした。
ですがラシェルに触れていくうちに、自然と、そういったものが芽生えていって。理解をして。そうして関係が始まったら、もっと好きになって。
ですので二人は夫婦となり、あのように変化をしましたので。ずっとずっと、幸せな日々が続くこととなりました……っ。



弓はあと様。
こちらこそ、でして。最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました。

解除
penpen
2022.03.09 penpen
ネタバレ含む
柚木ゆず
2022.03.12 柚木ゆず

penpen様。わざわざ感想をくださり、ありがとございます(素敵なAAまで送ってくださり、ありがとうございます……っ)。

ラシェルとセレスティン。お互いに相手を、想うようになって。知れば知るほど、その気持ちは大きくなっていって。
どちらにとっても、最愛な存在、となりました。

ですのでこの先もずっと、そばにいられるように。二人は、同じ存在となって。
今後もずっとずっと、二人一緒に歩いてゆきます……っ。

解除
ぱら
2022.03.09 ぱら
ネタバレ含む
柚木ゆず
2022.03.12 柚木ゆず

ぱら様。わざわざ感想をくださり、ありがとうございます。

そして。ふたりへの言葉までくださり、ありがとうございます……っ。

あのように偶然出会った二人は、必然的に惹かれるようになって。その想いは、どんどんと膨らんでいって。こういった関係と、なりました。

二人は心から、相手を想っておりますので。
これからも時間に比例して、さらにさらに愛は大きくなっていって。幸せな毎日が、ずっと続いてゆきます……っ。

解除

あなたにおすすめの小説

君は妾の子だから、次男がちょうどいい

月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

王太子妃は離婚したい

凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。 だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。 ※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。 綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。 これまで応援いただき、本当にありがとうございました。 レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。 https://www.regina-books.com/extra/login

「これは私ですが、そちらは私ではありません」

イチイ アキラ
恋愛
試験結果が貼り出された朝。 その掲示を見に来ていたマリアは、王子のハロルドに指をつきつけられ、告げられた。 「婚約破棄だ!」 と。 その理由は、マリアが試験に不正をしているからだという。 マリアの返事は…。 前世がある意味とんでもないひとりの女性のお話。

悪役令嬢、資産運用で学園を掌握する 〜王太子?興味ない、私は経済で無双する〜

言諮 アイ
ファンタジー
異世界貴族社会の名門・ローデリア学園。そこに通う公爵令嬢リリアーナは、婚約者である王太子エドワルドから一方的に婚約破棄を宣言される。理由は「平民の聖女をいじめた悪役だから」?——はっ、笑わせないで。 しかし、リリアーナには王太子も知らない"切り札"があった。 それは、前世の知識を活かした「資産運用」。株式、事業投資、不動産売買……全てを駆使し、わずか数日で貴族社会の経済を掌握する。 「王太子?聖女?その程度の茶番に構っている暇はないわ。私は"資産"でこの学園を支配するのだから。」 破滅フラグ?なら経済で粉砕するだけ。 気づけば、学園も貴族もすべてが彼女の手中に——。 「お前は……一体何者だ?」と動揺する王太子に、リリアーナは微笑む。 「私はただの投資家よ。負けたくないなら……資本主義のルールを学びなさい。」 学園を舞台に繰り広げられる異世界経済バトルロマンス! "悪役令嬢"、ここに爆誕!

夫に捨てられた私は冷酷公爵と再婚しました

香木陽灯(旧:香木あかり)
恋愛
 伯爵夫人のマリアーヌは「夜を共に過ごす気にならない」と突然夫に告げられ、わずか五ヶ月で離縁することとなる。  これまで女癖の悪い夫に何度も不倫されても、役立たずと貶されても、文句ひとつ言わず彼を支えてきた。だがその苦労は報われることはなかった。  実家に帰っても父から不当な扱いを受けるマリアーヌ。気分転換に繰り出した街で倒れていた貴族の男性と出会い、彼を助ける。 「離縁したばかり? それは相手の見る目がなかっただけだ。良かったじゃないか。君はもう自由だ」 「自由……」  もう自由なのだとマリアーヌが気づいた矢先、両親と元夫の策略によって再婚を強いられる。相手は婚約者が逃げ出すことで有名な冷酷公爵だった。  ところが冷酷公爵と会ってみると、以前助けた男性だったのだ。  再婚を受け入れたマリアーヌは、公爵と少しずつ仲良くなっていく。  ところが公爵は王命を受け内密に仕事をしているようで……。  一方の元夫は、財政難に陥っていた。 「頼む、助けてくれ! お前は俺に恩があるだろう?」  元夫の悲痛な叫びに、マリアーヌはにっこりと微笑んだ。 「なぜかしら? 貴方を助ける気になりませんの」 ※ふんわり設定です

学園首席の私は魔力を奪われて婚約破棄されたけど、借り物の魔力でいつまで調子に乗っているつもり?

今川幸乃
ファンタジー
下級貴族の生まれながら魔法の練習に励み、貴族の子女が集まるデルフィーラ学園に首席入学を果たしたレミリア。 しかし進級試験の際に彼女の実力を嫉妬したシルヴィアの呪いで魔力を奪われ、婚約者であったオルクには婚約破棄されてしまう。 が、そんな彼女を助けてくれたのはアルフというミステリアスなクラスメイトであった。 レミリアはアルフとともに呪いを解き、シルヴィアへの復讐を行うことを決意する。 レミリアの魔力を奪ったシルヴィアは調子に乗っていたが、全校生徒の前で魔法を披露する際に魔力を奪い返され、醜態を晒すことになってしまう。 ※3/6~ プチ改稿中

【完結】元婚約者であって家族ではありません。もう赤の他人なんですよ?

つくも茄子
ファンタジー
私、ヘスティア・スタンリー公爵令嬢は今日長年の婚約者であったヴィラン・ヤルコポル伯爵子息と婚約解消をいたしました。理由?相手の不貞行為です。婿入りの分際で愛人を連れ込もうとしたのですから当然です。幼馴染で家族同然だった相手に裏切られてショックだというのに相手は斜め上の思考回路。は!?自分が次期公爵?何の冗談です?家から出て行かない?ここは私の家です!貴男はもう赤の他人なんです! 文句があるなら法廷で決着をつけようではありませんか! 結果は当然、公爵家の圧勝。ヤルコポル伯爵家は御家断絶で一家離散。主犯のヴィランは怪しい研究施設でモルモットとしいて短い生涯を終える……はずでした。なのに何故か薬の副作用で強靭化してしまった。化け物のような『力』を手にしたヴィランは王都を襲い私達一家もそのまま儚く……にはならなかった。 目を覚ましたら幼い自分の姿が……。 何故か十二歳に巻き戻っていたのです。 最悪な未来を回避するためにヴィランとの婚約解消を!と拳を握りしめるものの婚約は継続。仕方なくヴィランの再教育を伯爵家に依頼する事に。 そこから新たな事実が出てくるのですが……本当に婚約は解消できるのでしょうか? 他サイトにも公開中。

結婚記念日をスルーされたので、離婚しても良いですか?

秋月一花
恋愛
 本日、結婚記念日を迎えた。三周年のお祝いに、料理長が腕を振るってくれた。私は夫であるマハロを待っていた。……いつまで経っても帰ってこない、彼を。  ……結婚記念日を過ぎてから帰って来た彼は、私との結婚記念日を覚えていないようだった。身体が弱いという幼馴染の見舞いに行って、そのまま食事をして戻って来たみたいだ。  彼と結婚してからずっとそう。私がデートをしてみたい、と言えば了承してくれるものの、当日幼馴染の女性が体調を崩して「後で埋め合わせするから」と彼女の元へ向かってしまう。埋め合わせなんて、この三年一度もされたことがありませんが?  もう我慢の限界というものです。 「離婚してください」 「一体何を言っているんだ、君は……そんなこと、出来るはずないだろう?」  白い結婚のため、可能ですよ? 知らないのですか?  あなたと離婚して、私は第二の人生を歩みます。 ※カクヨム様にも投稿しています。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。