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第16話 理由~前夜の出来事~ ラシェル・ターザッカル視点(2)
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「新精霊王になるためには、現精霊王に気に入られなければならない。故に俺は心を殺して忠実な存在を演じ続け、およそ70年後に後継者に指名された。そうしてようやく条件が整い、今から1か月前――『王』継承の儀を行う際に、生贄の嘘を明るみにしたのだよ」
記憶の読み取りは、セレスティン様しか所有していない能力。そのため主張をしても信じてはもらえず、信用を得るには精霊王の口から出た言葉を大勢に聞かせる必要がありました。
ですので水面下で集めていた、真っすぐな心を持った精霊――ゴーチェ様達の協力を得て、精霊界中に知らしめたそうです。
「それによって先代精霊王――歴代精霊王の威厳信頼は失墜し、更には罪に問われるようになったため自棄になる。生贄によって得た強力な力を使って暴れ出し、力によって精霊界を支配をしようとし始めたのだよ」
「……贄を喰らえば、別格の存在になると聞きました。よく勝利を収められましたね?」
「先代の行動は想定しており、長年ソレに対する準備を行っていた。故に俺は重傷を負いしばしの療養が必要となったものの、討ちとれたのだよ」
ゴーチェ様がお会いした直後に仰られていた、知略などなど。頭を駆使した方法を中心として戦われ、1か月前に悲願を達成されたです。
「その際に1日間、生死を彷徨う羽目になったが――。今後は二度と、あのような形で絶望し命を落とす者が生まれなくなったのだ。やってよかったと、心より思っている」
セレスティン様は柔らかく目を細めて締め、そうして私が行った質問へのお返事が終わりとなりました。
((……一面識もない人間のために、こんなにも必死になられるだなんて。そんな風に、満足そうに微笑まれるだなんて。やはりこの方は、珍しい方ですね))
感情が――心がない私はその際、こんな風に考えていました。相変わらずの合理的思考により、不思議な人という認識を持っていました。
ですが。
心を取り戻したあとは、違います。そうであるはずがありません。
((セレスティン様は……。なんて、お優しい方なのでしょうか))
一面識もない人間のために、こんなにも必死になれるお心。本当に幸せそうな声音と、表情。そして――私に向けてくださった優しさ。
それらに惹かれて、
((……もっと、この方のお傍に居たい……。できることなら、一生お傍に居させていただきたい……))
セレスティン様のお帰りを待っている間に、そんな気持ちが生まれて。それは時間が経つにつれて、どんどん膨らんでいって。
ですので――
「貴方様に、異性として好きになっていただけるように……。努力をしても、構いませんでしょうかっ?」
――私はこう、お願いをさせていただいたのでした。
記憶の読み取りは、セレスティン様しか所有していない能力。そのため主張をしても信じてはもらえず、信用を得るには精霊王の口から出た言葉を大勢に聞かせる必要がありました。
ですので水面下で集めていた、真っすぐな心を持った精霊――ゴーチェ様達の協力を得て、精霊界中に知らしめたそうです。
「それによって先代精霊王――歴代精霊王の威厳信頼は失墜し、更には罪に問われるようになったため自棄になる。生贄によって得た強力な力を使って暴れ出し、力によって精霊界を支配をしようとし始めたのだよ」
「……贄を喰らえば、別格の存在になると聞きました。よく勝利を収められましたね?」
「先代の行動は想定しており、長年ソレに対する準備を行っていた。故に俺は重傷を負いしばしの療養が必要となったものの、討ちとれたのだよ」
ゴーチェ様がお会いした直後に仰られていた、知略などなど。頭を駆使した方法を中心として戦われ、1か月前に悲願を達成されたです。
「その際に1日間、生死を彷徨う羽目になったが――。今後は二度と、あのような形で絶望し命を落とす者が生まれなくなったのだ。やってよかったと、心より思っている」
セレスティン様は柔らかく目を細めて締め、そうして私が行った質問へのお返事が終わりとなりました。
((……一面識もない人間のために、こんなにも必死になられるだなんて。そんな風に、満足そうに微笑まれるだなんて。やはりこの方は、珍しい方ですね))
感情が――心がない私はその際、こんな風に考えていました。相変わらずの合理的思考により、不思議な人という認識を持っていました。
ですが。
心を取り戻したあとは、違います。そうであるはずがありません。
((セレスティン様は……。なんて、お優しい方なのでしょうか))
一面識もない人間のために、こんなにも必死になれるお心。本当に幸せそうな声音と、表情。そして――私に向けてくださった優しさ。
それらに惹かれて、
((……もっと、この方のお傍に居たい……。できることなら、一生お傍に居させていただきたい……))
セレスティン様のお帰りを待っている間に、そんな気持ちが生まれて。それは時間が経つにつれて、どんどん膨らんでいって。
ですので――
「貴方様に、異性として好きになっていただけるように……。努力をしても、構いませんでしょうかっ?」
――私はこう、お願いをさせていただいたのでした。
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