44 / 52
第15話 その後 俯瞰視点(2)
しおりを挟む
「それにだ、ラシェル嬢。貴女の崇高な目標を、俺はよく知っている」
新当主への協力を提案した、セレスティン。彼は斜め前方にある建物、孤児院を一瞥しました。
「受け皿を用意して、生涯の幸せを実現させたい。それが、貴女の悲願だ」
「はい。そちらが、私の夢です」
「清い人が抱いているのは、至極清らかなもの。故に、現実のものにしたいと強く思っているのだよ。そこも含め、支えてゆきたいと思っているのだよ」
澄んだ意志のみが存在する考えは最大限尊重し、実現に向けて最大限の手助けを行うべきだ。それが、新精霊王の考えでした。
そのためセレスティンは再びラシェルへと視線を向け、ゆっくりと右手を差し出しました。
「精霊界のトップとしても、一人の精霊としても、貴女のすべてに感銘を受けている。故に今後も関係を持ってもらいたいと思っているのだが、どうだろうか? 俺を――俺達を、受け入れてはもらえるだろうか?」
「…………セレスティン様。私は、幸せ者でございます」
ラシェルの顔にある、美しいブルーの瞳。真っすぐ彼を見つめていたソレが、潤み始めました。
「私も恩人様と、もっともっと同じ時間を過ごしたいと思っておりました。また、そちらは是が非でも実現したいと望むものでした。…………ですので、セレスティン様。いただいたお言葉の全てを、有難く受け取らせていただきます」
恩人がくれたのは、たくさんの幸せが詰まった提案。なのでラシェルは差し出された右手を両手で握り、
「あ、あの……」
そうしていた彼女の喉が動き、ごくりと唾液を呑み込みました。
「…………すでに、これ以上ない幸せをいただいているのですが……。我が儘を口にすることを、お許しください」
「ふ。貴女の我が儘なら、喜んで耳を傾けよう。ラシェル嬢、なにかな?」
「ありがとう、ございます。………………。セレスティン様」
息を一回、大きく吸って、吐いて。急激に速くなり始めた鼓動を、一生懸命抑えて。
ラシェルは心の中で祈りをながら、こんな風に言葉を紡いだのでした。
「貴方様に、異性として好きになっていただけるように……。努力をしても、構いませんでしょうかっ?」
新当主への協力を提案した、セレスティン。彼は斜め前方にある建物、孤児院を一瞥しました。
「受け皿を用意して、生涯の幸せを実現させたい。それが、貴女の悲願だ」
「はい。そちらが、私の夢です」
「清い人が抱いているのは、至極清らかなもの。故に、現実のものにしたいと強く思っているのだよ。そこも含め、支えてゆきたいと思っているのだよ」
澄んだ意志のみが存在する考えは最大限尊重し、実現に向けて最大限の手助けを行うべきだ。それが、新精霊王の考えでした。
そのためセレスティンは再びラシェルへと視線を向け、ゆっくりと右手を差し出しました。
「精霊界のトップとしても、一人の精霊としても、貴女のすべてに感銘を受けている。故に今後も関係を持ってもらいたいと思っているのだが、どうだろうか? 俺を――俺達を、受け入れてはもらえるだろうか?」
「…………セレスティン様。私は、幸せ者でございます」
ラシェルの顔にある、美しいブルーの瞳。真っすぐ彼を見つめていたソレが、潤み始めました。
「私も恩人様と、もっともっと同じ時間を過ごしたいと思っておりました。また、そちらは是が非でも実現したいと望むものでした。…………ですので、セレスティン様。いただいたお言葉の全てを、有難く受け取らせていただきます」
恩人がくれたのは、たくさんの幸せが詰まった提案。なのでラシェルは差し出された右手を両手で握り、
「あ、あの……」
そうしていた彼女の喉が動き、ごくりと唾液を呑み込みました。
「…………すでに、これ以上ない幸せをいただいているのですが……。我が儘を口にすることを、お許しください」
「ふ。貴女の我が儘なら、喜んで耳を傾けよう。ラシェル嬢、なにかな?」
「ありがとう、ございます。………………。セレスティン様」
息を一回、大きく吸って、吐いて。急激に速くなり始めた鼓動を、一生懸命抑えて。
ラシェルは心の中で祈りをながら、こんな風に言葉を紡いだのでした。
「貴方様に、異性として好きになっていただけるように……。努力をしても、構いませんでしょうかっ?」
1
お気に入りに追加
1,336
あなたにおすすめの小説

男爵令嬢の私の証言で公爵令嬢は全てを失うことになりました。嫌がらせなんてしなければ良かったのに。
田太 優
恋愛
公爵令嬢から嫌がらせのターゲットにされた私。
ただ耐えるだけの日々は、王子から秘密の依頼を受けたことで終わりを迎えた。
私に求められたのは公爵令嬢の嫌がらせを証言すること。
王子から公爵令嬢に告げる婚約破棄に協力することになったのだ。
お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】
私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。
その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。
ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない
自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。
そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが――
※ 他サイトでも投稿中
途中まで鬱展開続きます(注意)
君は妾の子だから、次男がちょうどいい
月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。
【完結】婚約を解消して進路変更を希望いたします
宇水涼麻
ファンタジー
三ヶ月後に卒業を迎える学園の食堂では卒業後の進路についての話題がそここで繰り広げられている。
しかし、一つのテーブルそんなものは関係ないとばかりに四人の生徒が戯れていた。
そこへ美しく気品ある三人の女子生徒が近付いた。
彼女たちの卒業後の進路はどうなるのだろうか?
中世ヨーロッパ風のお話です。
HOTにランクインしました。ありがとうございます!
ファンタジーの週間人気部門で1位になりました。みなさまのおかげです!
ありがとうございます!

「これは私ですが、そちらは私ではありません」
イチイ アキラ
恋愛
試験結果が貼り出された朝。
その掲示を見に来ていたマリアは、王子のハロルドに指をつきつけられ、告げられた。
「婚約破棄だ!」
と。
その理由は、マリアが試験に不正をしているからだという。
マリアの返事は…。
前世がある意味とんでもないひとりの女性のお話。
お飾りの側妃ですね?わかりました。どうぞ私のことは放っといてください!
水川サキ
恋愛
クオーツ伯爵家の長女アクアは17歳のとき、王宮に側妃として迎えられる。
シルバークリス王国の新しい王シエルは戦闘能力がずば抜けており、戦の神(野蛮な王)と呼ばれている男。
緊張しながら迎えた謁見の日。
シエルから言われた。
「俺がお前を愛することはない」
ああ、そうですか。
結構です。
白い結婚大歓迎!
私もあなたを愛するつもりなど毛頭ありません。
私はただ王宮でひっそり楽しく過ごしたいだけなのです。
王太子妃は離婚したい
凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。
だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。
※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。
綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。
これまで応援いただき、本当にありがとうございました。
レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。
https://www.regina-books.com/extra/login

夫に捨てられた私は冷酷公爵と再婚しました
香木陽灯(旧:香木あかり)
恋愛
伯爵夫人のマリアーヌは「夜を共に過ごす気にならない」と突然夫に告げられ、わずか五ヶ月で離縁することとなる。
これまで女癖の悪い夫に何度も不倫されても、役立たずと貶されても、文句ひとつ言わず彼を支えてきた。だがその苦労は報われることはなかった。
実家に帰っても父から不当な扱いを受けるマリアーヌ。気分転換に繰り出した街で倒れていた貴族の男性と出会い、彼を助ける。
「離縁したばかり? それは相手の見る目がなかっただけだ。良かったじゃないか。君はもう自由だ」
「自由……」
もう自由なのだとマリアーヌが気づいた矢先、両親と元夫の策略によって再婚を強いられる。相手は婚約者が逃げ出すことで有名な冷酷公爵だった。
ところが冷酷公爵と会ってみると、以前助けた男性だったのだ。
再婚を受け入れたマリアーヌは、公爵と少しずつ仲良くなっていく。
ところが公爵は王命を受け内密に仕事をしているようで……。
一方の元夫は、財政難に陥っていた。
「頼む、助けてくれ! お前は俺に恩があるだろう?」
元夫の悲痛な叫びに、マリアーヌはにっこりと微笑んだ。
「なぜかしら? 貴方を助ける気になりませんの」
※ふんわり設定です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる