心を失ってしまった令嬢は、心優しい精霊王に愛される

柚木ゆず

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第14話 家族3人の代償 俯瞰視点(1)

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「ラシェルよ、すまなかった……。我々は心を入れ替えた……。だからな……」
「わたくし達を、好きにしてもらって構わないわ。だって、殺されても文句を言えないことをしてしまったんですもの……」
「ラシェル……。貴方の気が済むのなら……。わたし達は喜んで、この身を差し出すわ……」

 ターザッカル伯爵邸内にあるある、食堂。前日、大きな異変が発生した場所。そこでは今日も父セゼール、母エミリ、双子の姉リヴィアが、偽りの懺悔を行っていました。

((ラシェルならば、こういっておけば何もできまいよ))
((あの子が甘い子で、助かったわ))
((こうやって反省したフリを続けていたら、きっと2~3日で満足するでしょうね。さっさと消えてくれないかしら。こんな風にしてるのは不愉快なのよね))

 そのため3人は心の中でこんなことを思っており、内心とは正反対な行動を取り続けます。

「ラシェルよ……。遠慮する必要はないぞ……」
「どうぞ、やって頂戴……」
「ラシェル……。貴方に殺してもらえたら、わたし達もそっちに行けるわ……。その時は、直接謝らせてね……?」

 ラシェルは生きているため悪霊などになってはおらず、この空間には3人以外誰もいません。ですが居ると思い込んでいる3人は懸命に言葉を口にし続け、無意味なことが1時間ほど続いた時でした。

「「「っ!?」」」

 突如目の前の床に幾何学模様の魔法陣が浮かび上がり、セゼール達は急激に戸惑い始めてしまいました。

「これは!? まさかラシェル!?」
「あの子の怒り!? わっ、わたくし達を殺すつもり!?」
「嘘でしょ!? ラシェルがわたし達に危害を!? う、嘘よ!! 嫌よっ!! 死にたくない――え……? だ、誰……?」

 本当に死ぬつもりなどないため、本性が出てしまっていた3人。そんな彼らの前に現れたのは、白のローブを纏った美男。精霊王、セレスティンでした。

「「「よ、よかった……。ラシェル、じゃなかった……」」」

 魔法陣によって、見知らぬ男が現れた。それは激しく荒唐無稽な出来事でしたが、死が過ぎっていたため3人にとっては左程驚かない出来事。そのため仲良く胸を撫で下ろしますが――彼らはまだ、知りません。
 これから悪霊ラシェルによって殺される以上のことが、起きてしまうと――。

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