心を失ってしまった令嬢は、心優しい精霊王に愛される

柚木ゆず

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第13話 愚かな王の末路 俯瞰視点(4)

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「あ、ああ……。あ、あああ……。ぁぁぁぁぁ――」
「「「「「チチチチチッ。チチチチチ!!」」」」」
「「「「キキキキキッ。キキキッツ!!」」」」
「――ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああ!! うあああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 異形は一斉に飛び掛かり、ジスランはそれを辛うじて交わし、再び全力で逃走を開始。死に物狂いで森の中を駆け、

「「「「「チチチチチッ。チチチチチ……?」」」」」
「「「「キキキキキッ。キキキ……?」」」」

 今度は十五分ほどの全力疾走・・・・・・・・・・によって異形を撒き、傍にあった大木の陰に身を潜めます。そして、

「よかった……。今度こそ、大丈夫だ……。ちゃんと、逃げ切れ――」
「「「「「チチチチチッ。チチチチチ」」」」」
「「「「キキキキキッ。キキキッツ」」」」
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああ!! またでたぁああああああああああああああああああああ!?」

 撒いたはずの異形たちがいつの間にか居て、ジスランは悲鳴をあげて逃走。みたび死に物狂いの逃走が始まりました。

「ま、まただ……! また来ぁぁぁ……!! どうやったらっ、アイツらから逃げ切れるんだぁぁぁぁぁぁ!? わたしはいつまでっ、こうしなければならないんだぁぁぁぁぁ!!」

 その答えは、

 ――清算が終わるまで――。

 これまで多くの人間に恐怖を与えて続けてきた、国王ジスラン。彼らは他者に植え付けてきた分の恐怖を全て味わうまで、こうして追いかけごっこを続ける運命を定められてしまっていたのです。
 そのため――

「今度こそっ!! にげきるぅぅぅうぅううううううううううううう!!」

 そう叫んでいますが、残念ながらそんな時は訪れません。
 彼はこれから100年間、怯えながら逃走を続ける羽目になってしまったのでした――。


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