心を失ってしまった令嬢は、心優しい精霊王に愛される

柚木ゆず

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第13話 愚かな王の末路 俯瞰視点(2)

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「ははっ、こいつは嬉しい誤算だ! 精霊王、なんて愚かなヤツだ! わたしが知っている場所を選んだら逆効果だぞ!!」

 精霊の祭壇を前にしたジスランは、空へと向けて大笑いを始めました。せめてもの反撃として、たっぷりと嘲笑を浮かべました。

「大方ここに閉じ込め、独りで生きろと言うのだろう!? だがここは見知っている場所! 更には大量の食糧があり、おまけに動物も多々いる! はっはっは、孤独とはなんなんだろうなぁ? あいにくとノーダメージだぞ、精霊王殿――え……? え…………?」

 セレスティンを鼻で笑っていた、その動きが突然止まってしまいました。
 なぜならば、彼の視界の上部にあった景色が――空の様子が、一変。清々しく広がっていた青空が、禍々しいどす黒いものへと変化してしまったのです。

「な、なんだ……? 空が――っっ!? 空、だけじゃない……。下も……。周りも、変わっている……!!」

 視界の中間部に広がっていた、木々。活き活きとしていた葉や幹は黒一色となり、おどろおどろしさを醸し出すようになりました。

「どうなって、いる……!? なんなんだっ!? なんなんだこの光景は――ぁ、ぁぁぁ……。ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」

 まさか、全部変わってしまったのか!? 違うよな!? 見えていない部分はっ、後ろは元のままだよな!? そうだよな!?
 縋るように振り返っていたジスランを待っていたのは、更に大きな衝撃でした。

「「「「「ギギギギギ」」」」」
「「「「「グルルルルルルルル」」」」」

 さっきまで『チチチ』『キキキ』と鳴いていた、可愛らしい鳥やリス。そんな動物達は鳥やリスの形をしたどす黒い塊になっていて、凶暴な赤い双眸がジスランを見据えていたのです。

「よ、ヨダレ、が出ている……。ま、まさか……。お前達は…………。わたしを――」
「「「「「チチチチチッ。チチチチチ!!」」」」」
「「「「キキキキキッ。キキキッツ!!」」」」

 喰らう!! そうだと分かる大声が揃って上がり、『異形』は一斉にジスランへと向かってきたのでした。
 そして――
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