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第12話 王の代償 俯瞰視点(3)
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「こんな愚者が、一国の舵を取っていた。それがこの国一番の不幸だな」
どこまでも醜い行動を見て聞いた、セレスティン。彼は再び、冷めた呆れの息を吐き出しました。
「だがそんな不幸も、今日で終わる。これからこの国は、よい方向に進んでゆくことだろう」
「……え? え……? お、わる……? せ、精霊王様……? そ、それは……。まさか…………」
「ああ、そのまさかだ。……これまで幾度となく、『恐怖』で多くの人間を抑えつけてきた愚王。そんな存在は必要であるはずがなく、これより貴様を排除する」
その言葉を合図として、ジスランの真下に直径5メートルほどの魔法陣が発生。それは眩く七色に輝き始め、更には陣の内部が高速で回転を始めました。
「ひぃぃぃぃぃ!? にっ、逃げないとっ! にげぇぇ――足が動かない!? ゆっ、床に足がぁぁぁ!! 貼りついてるぁぁああ!?」
「術が発動する十数秒後まで、貴様は決してそこを動けない。どう足掻いても抜け出せはしない」
「そっ、そんなぁぁ!! なっ、なにが起きる!? なにがあるんだぁぁ!?」
「これから貴様は俺が創造した世界に飛ばされ、貴様に相応しい出来事が待っているだろう。因果の応報を味わい、朽ちてゆくがいい」
「いっ、いやだぁぁああああああ!! せっ精霊王お願い致します!! 金っ、酒っ、女!! 貴方様が望むものなら何でも用意させていただきますのでぇぇ!! おやめくださいませぇええええええええ!!」
ジスランは自分が喜ぶ内容を叫びましたが、言わずもがな、それはセレスティンが喜ぶ内容ではありません。むしろ、その逆。多くの不快感を覚えるものでした。
そのため、発動が撤回されることはなく――
「……時は来た。貴様がこれまで他者に与えてきた、痛みを知るがいい」
「おっ、おまちくださああああああ!! おまっ、おまぁぁ!! たった一度の過ちでこんなことっ、厳しすぎる!! チャンスぉぉぉ!! チャンスをくれぇえええええええええええええええええええええええええええ!! おねがいしま」
――魔法陣が強く発光し、醜く泣き叫んでいたジスランの姿は消失しました。
「…………これで、こちらは片付いた。あとは、あちらだな」
愚かなる王が居た場所、そして玉座。それらを眺めたあとセレスティンは、人払いの結界を解除しました。
そうして彼はこの場にメッセージの伝達係を一つ置いたあと、転移魔法陣を用いて次の目的へと飛んだのでした。
こうしてセレスティンはターザッカル伯爵邸を目指し、同時刻――。同じく王の間から姿を消した、ジスランは――。
※明日の投稿分は、ジスランを中心とした視点となります。
どこまでも醜い行動を見て聞いた、セレスティン。彼は再び、冷めた呆れの息を吐き出しました。
「だがそんな不幸も、今日で終わる。これからこの国は、よい方向に進んでゆくことだろう」
「……え? え……? お、わる……? せ、精霊王様……? そ、それは……。まさか…………」
「ああ、そのまさかだ。……これまで幾度となく、『恐怖』で多くの人間を抑えつけてきた愚王。そんな存在は必要であるはずがなく、これより貴様を排除する」
その言葉を合図として、ジスランの真下に直径5メートルほどの魔法陣が発生。それは眩く七色に輝き始め、更には陣の内部が高速で回転を始めました。
「ひぃぃぃぃぃ!? にっ、逃げないとっ! にげぇぇ――足が動かない!? ゆっ、床に足がぁぁぁ!! 貼りついてるぁぁああ!?」
「術が発動する十数秒後まで、貴様は決してそこを動けない。どう足掻いても抜け出せはしない」
「そっ、そんなぁぁ!! なっ、なにが起きる!? なにがあるんだぁぁ!?」
「これから貴様は俺が創造した世界に飛ばされ、貴様に相応しい出来事が待っているだろう。因果の応報を味わい、朽ちてゆくがいい」
「いっ、いやだぁぁああああああ!! せっ精霊王お願い致します!! 金っ、酒っ、女!! 貴方様が望むものなら何でも用意させていただきますのでぇぇ!! おやめくださいませぇええええええええ!!」
ジスランは自分が喜ぶ内容を叫びましたが、言わずもがな、それはセレスティンが喜ぶ内容ではありません。むしろ、その逆。多くの不快感を覚えるものでした。
そのため、発動が撤回されることはなく――
「……時は来た。貴様がこれまで他者に与えてきた、痛みを知るがいい」
「おっ、おまちくださああああああ!! おまっ、おまぁぁ!! たった一度の過ちでこんなことっ、厳しすぎる!! チャンスぉぉぉ!! チャンスをくれぇえええええええええええええええええええええええええええ!! おねがいしま」
――魔法陣が強く発光し、醜く泣き叫んでいたジスランの姿は消失しました。
「…………これで、こちらは片付いた。あとは、あちらだな」
愚かなる王が居た場所、そして玉座。それらを眺めたあとセレスティンは、人払いの結界を解除しました。
そうして彼はこの場にメッセージの伝達係を一つ置いたあと、転移魔法陣を用いて次の目的へと飛んだのでした。
こうしてセレスティンはターザッカル伯爵邸を目指し、同時刻――。同じく王の間から姿を消した、ジスランは――。
※明日の投稿分は、ジスランを中心とした視点となります。
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