心を失ってしまった令嬢は、心優しい精霊王に愛される

柚木ゆず

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第12話 王の代償 俯瞰視点(1)

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((はっはっは。予想以上に効果覿面だったな))

 王城内にある、王の間。ジスランは今日も大好きな場所こと玉座に腰をかけ、心の中では大笑いを浮かべていました。

『リヴィアぁぁ……。リヴィアぁぁぁ……っ。ぁぁあぁぁぁぁぁぁぁあ……!』
『リヴィア、ごめんなさい……。泣かないでって言われたけど……。無理、だわ……!』
『お姉さまぁぁぁ……っ。もう、会えないなんて……っ ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああ……っっ!』

 セゼール達は万が一怪しまれてしまわないように、絶望しているお芝居をたっぷりと行いました。そしてそれによって、その姿を目の当たりにした弟達――ジスラン曰く『反乱分子』は更に怯えるようになり、ますます従順になりました。
 そのため彼は上機嫌で、笑いが止まらない状態となっていたのです。

((内面も外面も、妹……ええと…………ラシェル、だったか。ラシェルの方が優れていたが、あの判断は間違いではなかったな。狙い通り、大きなダメージを受けてくれて助かったぞ))

 調査によってターザッカル家では、リヴィアが可愛がられていると把握していました。そこでジスランは敢えて姉を指名し、弟達が受けるインパクトをより大きくしていたのです。

((あの様子だと、反乱分子は金輪際生意気な行動は取らないだろうな。かっかっかっ。完璧だ。理想の世界の出来上がりだ))

 今まで以上に好き放題しても、なんら問題はなくなった。
 さあて、次はなにをしようか? どんなことをして楽しもうか?
 ジスランはアレコレ思い浮かべ、彼にとっての名案が閃くたびに大笑い。両手をパンパン叩いて『楽しみ』を考えてゆき、早速一つ目を実行することにしました。

「よし、まずはこいつをやろう。おいっ、フェルナン!! これからお前に――ん? え……?」

 控えさせている腹心を、呼ぼうとしたジスラン。彼は、ようやく気が付きました。
 腹心フェルナンや護衛担当者など――複数人が居たはずの王の間に、自分以外誰もいなくなっていることに。

「ど、どうなっているんだ!? どっ、どこに行ってしまったんだ!? フェルナンっ、ザーケルっ、ケヴィンっ!! どこにいるんだ!? 何が起きているんだ!? だっ、誰か答えろっっ!!」
「では俺が、その問いに答えてやるとしよう」

 不意に王の間の扉が開き、一人の男性が入ってきました。ですがそれは、王ジスランの配下ではなく――

「なぜここに、貴様しかいないのか。それは、この男――精霊王が、お前以外の人間を外へと転移させたからだ」

 ジスランにとっては最大の敵となる、セレスティンでした。

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