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第11話 元に戻ったあとは~喜びを分かち合う前に~ 俯瞰視点
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「お姉ちゃん? ラシェルお姉ちゃん? どうして泣いてるの? どこか痛いの?」
「ううん、そうじゃないの……っ。会えない間に、色々なことがあってね……っ。こうやってオレルちゃんに会えたことがね、すごく嬉しいの……っ」
ラシェルが抱えていた問題は、子どもにはあまりにも重いものでした。そのためラシェルは嬉し涙を零しながら何度も何度も首を左右に振り、もう一度ギュッと抱き締めてから、傍にいるセレスティンへと首を向けました。
「セレスティン様…………ありがとうございます。貴方様、そしてゴーチェ様のおかげで、私は私を取り戻せました」
「よかったよ、おめでとう。俺も嬉しく思う――などと会話をしたいところだが、すまないな。そうする前に少し、用事を片付けに行ってくる」
北西と、南の方角。王城とターザッカル伯爵邸がある方向を眺め、転移用魔法陣を使うため物陰へと歩いてゆきます。
「この続きは、それが終わってからにしよう。それまで彼女と、楽しい時間を過ごすといい」
「はい……っ。そう、させていただきます……っ!」
「??? えっと、オレル、お姉ちゃんと遊んでいいの? お兄ちゃんありがとう~」
「ふふ、どういたしまして。では失礼する」
セレスティンはオレルの頭をそっと撫でた後、人気(ひとけ)がない地点へと移動を行い、
《ぐす……っ、ぐす……っっ! おめでとうございます! ありがとうございますっ! セレ様っ!》
魔法陣を展開させようとしていたら、側近の涙声が脳内に響いてきました。
《ラシェルちゃん、幸せそうに笑ってて……っ。よかったぁ……っ。よかったよぉ……っっ》
「ああ、そうだな。彼女はお前にも、感謝をしていたぞ」
《はい……っ、聞いてました……っ! ちゃんと感情が籠ってて……っ。よかったぁっ、ホントによかったぁぁっ!》
セレスティンからラシェルという人について詳しく聞かされているため、ゴーチェにとっても『どうにかしてあげたい女の子』でした。ずっと助けたかった存在がこうして無事目的を達成し、彼もまた大粒の涙をどっさりと零しました。
《優しくて思い遣りのある人が酷い目に遭うなんて、おかしいもん! 絶対に救いたいと思っててっ、反対にっ! セレ様……っ!》
「ああ。あの者達は、看過できない」
王ジスラン、父セゼール、母エミリ、双子の姉リヴィア。2人の頭には共に4つの名前が浮かんでおり、これから始まるのは該当者の『処理』でした。
《セレ様。祭壇を覆う輪は、消しておきました》
「ならアレが出るのは、三十分程度あとか。ならば先に、あちらに行くか」
彼の視線は、北西へと固定。まずはジスランが住まう王城へと、セレスティンは飛んだのでした。
「ううん、そうじゃないの……っ。会えない間に、色々なことがあってね……っ。こうやってオレルちゃんに会えたことがね、すごく嬉しいの……っ」
ラシェルが抱えていた問題は、子どもにはあまりにも重いものでした。そのためラシェルは嬉し涙を零しながら何度も何度も首を左右に振り、もう一度ギュッと抱き締めてから、傍にいるセレスティンへと首を向けました。
「セレスティン様…………ありがとうございます。貴方様、そしてゴーチェ様のおかげで、私は私を取り戻せました」
「よかったよ、おめでとう。俺も嬉しく思う――などと会話をしたいところだが、すまないな。そうする前に少し、用事を片付けに行ってくる」
北西と、南の方角。王城とターザッカル伯爵邸がある方向を眺め、転移用魔法陣を使うため物陰へと歩いてゆきます。
「この続きは、それが終わってからにしよう。それまで彼女と、楽しい時間を過ごすといい」
「はい……っ。そう、させていただきます……っ!」
「??? えっと、オレル、お姉ちゃんと遊んでいいの? お兄ちゃんありがとう~」
「ふふ、どういたしまして。では失礼する」
セレスティンはオレルの頭をそっと撫でた後、人気(ひとけ)がない地点へと移動を行い、
《ぐす……っ、ぐす……っっ! おめでとうございます! ありがとうございますっ! セレ様っ!》
魔法陣を展開させようとしていたら、側近の涙声が脳内に響いてきました。
《ラシェルちゃん、幸せそうに笑ってて……っ。よかったぁ……っ。よかったよぉ……っっ》
「ああ、そうだな。彼女はお前にも、感謝をしていたぞ」
《はい……っ、聞いてました……っ! ちゃんと感情が籠ってて……っ。よかったぁっ、ホントによかったぁぁっ!》
セレスティンからラシェルという人について詳しく聞かされているため、ゴーチェにとっても『どうにかしてあげたい女の子』でした。ずっと助けたかった存在がこうして無事目的を達成し、彼もまた大粒の涙をどっさりと零しました。
《優しくて思い遣りのある人が酷い目に遭うなんて、おかしいもん! 絶対に救いたいと思っててっ、反対にっ! セレ様……っ!》
「ああ。あの者達は、看過できない」
王ジスラン、父セゼール、母エミリ、双子の姉リヴィア。2人の頭には共に4つの名前が浮かんでおり、これから始まるのは該当者の『処理』でした。
《セレ様。祭壇を覆う輪は、消しておきました》
「ならアレが出るのは、三十分程度あとか。ならば先に、あちらに行くか」
彼の視線は、北西へと固定。まずはジスランが住まう王城へと、セレスティンは飛んだのでした。
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