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第10話 第3の目的地 俯瞰視点(1)
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「ラシェル嬢、今の貴女は本来の記憶を持っている。故にここが、どこなのか理解できるだろう?」
「はい、分かります。ここは、『ライフェークス孤児院』。私の唯一の、心残りとなっていた場所です」
小さな教会の隣にある、少し寂れた建物。その前に降り立ったラシェルは、引き続き淡々と返事を行いました。
『けほっ、けほっ。せっかくお姉ちゃんが来てくれたのに、おカゼで遊べないなんて……。ざんねん……』
『じゃあオレルちゃん、1か月後に一緒に遊ぼ? 次来た時は今回遊べなかった分も一緒に遊ぶから、元気を出してね?』
『ほんとうっ!? やった~っ! オレルねっ、元気出すっ! はやくおカゼ直して、待ってるね~っ!』
ラシェルは定期的に各地の孤児院を訪ねており、前回訪問の際に、風邪を引いてしまっていた5歳の孤児オレルと約束をしていました。
しかしその直後に姉リヴィアが生贄に選ばれてしまい、この孤児院はお屋敷から非常に離れた場所にありました。そのため時間的な問題で再会が叶わず、
((ごめんなさい、オレルちゃん……。あんなにも、楽しみにしてくれていたのに……。私は、貴方との約束を守れませんでした……))
多くの罪悪感を抱き、人知れず涙していたのです。
「少女オレルの満面の笑みが目に焼き付いていて、貴女はどうしても反故にしたくはなかった。そこで懸命に調整を行うも、悪天候によって断念せざるを得なかった」
「はい。そう理解した時私は沢山の涙を流し、謝罪を繰り返していたようです」
「だがこうして、ライフェークス孤児院を訪れることができた。この中にいる少女オレルと再会し、約束を果たせる」
「はい。そうですね」
「約束を破らずに済んでよかったな、ラシェル嬢。…………諦めていた願いが無事叶って、嬉しいだろう?」
セレスティンは意図的に早いテンポで口を動かし、ふと、5秒ほど沈黙。その後はゆっくりとした口調で、隣へと顔を向けました。
すると――
「はい、そうですね。嬉しく感じており――え……? 嬉、しい……? 私は、嬉しく、感じている…………?」
相変わらず淡々と答えていたラシェルは、不思議そうに自分の胸元に触れ始めたのでした。
「はい、分かります。ここは、『ライフェークス孤児院』。私の唯一の、心残りとなっていた場所です」
小さな教会の隣にある、少し寂れた建物。その前に降り立ったラシェルは、引き続き淡々と返事を行いました。
『けほっ、けほっ。せっかくお姉ちゃんが来てくれたのに、おカゼで遊べないなんて……。ざんねん……』
『じゃあオレルちゃん、1か月後に一緒に遊ぼ? 次来た時は今回遊べなかった分も一緒に遊ぶから、元気を出してね?』
『ほんとうっ!? やった~っ! オレルねっ、元気出すっ! はやくおカゼ直して、待ってるね~っ!』
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すると――
「はい、そうですね。嬉しく感じており――え……? 嬉、しい……? 私は、嬉しく、感じている…………?」
相変わらず淡々と答えていたラシェルは、不思議そうに自分の胸元に触れ始めたのでした。
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