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第7話 同時刻 ターザッカル邸内では 俯瞰視点(3)
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「へっ、減った!! ほらっ、減ってるんだ!! 数え間違いじゃない!! 我々が気付かない間に減って――違う!! そうだったが今は違うっ!! いっ、今! 今ぁぁ!! 札束が一つ消えたぁあぁああああああああああ!!」
セゼールが頭を抱えながら、沢山の札束を凝視していた時でした。突然フッと、100万ギルースの束が消えてしまったのでした。
「みっ、見ただろう!? 見たよな!? お前達も見ただろう!?」
「わ、わたくしは、それを見てはいないけれど……。…………たった今、見たわ。わたくしの目の前にある札束が…………2つ、消える瞬間を……」
「……わたしも、見ちゃった……。手の傍にあった札束3つが、急に消えた……」
2人もまたこれまで以上に身体を震わせ、そうしている間にも――6つの札束が消え去り、消失の連鎖はまだ止まりません。
「「「あ、ああ……。あああ…………」」」
3つ。2つ。3つ。2つ。4つ。3つ。5つ。数は不規則ですが確実に札束は減ってゆき、彼らが異変を認識してから僅か4分後でした。食卓に所狭しと並んでいた100の札束は、ひとつ残らず消えてしまったのでした。
「な、なんということだ……!? なんということだ……!!」
「1億ギールスが、なくなってしまうだなんて……。これは、夢なの……!? 悪夢なの……!?」
「ち、違う、夢なんかじゃない。だって……。頬っぺたを抓ったら、痛みがあるもの……」
まずは自身の右を頬を抓り、次にセゼールとエミリの頬を抓ります。そうしたことで2人も『ここは現実だ』と認識をし、それによってますます3人の顔色は悪くなりました。
「現実だなんて……。じゃあっ、ここが現実であるのなら!! 何がどうなってこうなっているんだ!?」
「こんな現象っ、聞いたことがないわ!! 何が起きているの!?」
「お、おかしい、おかしいよこんなのっ!! こ、怖いっ! とっ、とにかく離れよ!! 一旦食堂から出ようよ!!」
「あっ、ああっ、そうだな!! とっ、とにかく離れよう!! ここから出て一度冷静になろ――しまっ!?」
慌てて動いたことによって肘がグラスを押してしまい、床へと落下。それによって愛用していたグラスが割れ、入っていた赤ワインが絨毯に広がってしまいました。
そしてそんな出来事が、3人に更なる――これまでとの比にならない、夥しい量の恐怖を生むことになるのでした。
「ま、まあいいっ、放っておこう! そんなことより、今は――………………。ぎゃ、ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああ!?」
走り出そうとしていたセゼールが固まり、大絶叫をあげた理由。それは、気が付くと零れたワインが――
《この家の妹は妹じゃない 姉だ》
――まるで血文字のようなものを、絨毯に描いていたからでした。
セゼールが頭を抱えながら、沢山の札束を凝視していた時でした。突然フッと、100万ギルースの束が消えてしまったのでした。
「みっ、見ただろう!? 見たよな!? お前達も見ただろう!?」
「わ、わたくしは、それを見てはいないけれど……。…………たった今、見たわ。わたくしの目の前にある札束が…………2つ、消える瞬間を……」
「……わたしも、見ちゃった……。手の傍にあった札束3つが、急に消えた……」
2人もまたこれまで以上に身体を震わせ、そうしている間にも――6つの札束が消え去り、消失の連鎖はまだ止まりません。
「「「あ、ああ……。あああ…………」」」
3つ。2つ。3つ。2つ。4つ。3つ。5つ。数は不規則ですが確実に札束は減ってゆき、彼らが異変を認識してから僅か4分後でした。食卓に所狭しと並んでいた100の札束は、ひとつ残らず消えてしまったのでした。
「な、なんということだ……!? なんということだ……!!」
「1億ギールスが、なくなってしまうだなんて……。これは、夢なの……!? 悪夢なの……!?」
「ち、違う、夢なんかじゃない。だって……。頬っぺたを抓ったら、痛みがあるもの……」
まずは自身の右を頬を抓り、次にセゼールとエミリの頬を抓ります。そうしたことで2人も『ここは現実だ』と認識をし、それによってますます3人の顔色は悪くなりました。
「現実だなんて……。じゃあっ、ここが現実であるのなら!! 何がどうなってこうなっているんだ!?」
「こんな現象っ、聞いたことがないわ!! 何が起きているの!?」
「お、おかしい、おかしいよこんなのっ!! こ、怖いっ! とっ、とにかく離れよ!! 一旦食堂から出ようよ!!」
「あっ、ああっ、そうだな!! とっ、とにかく離れよう!! ここから出て一度冷静になろ――しまっ!?」
慌てて動いたことによって肘がグラスを押してしまい、床へと落下。それによって愛用していたグラスが割れ、入っていた赤ワインが絨毯に広がってしまいました。
そしてそんな出来事が、3人に更なる――これまでとの比にならない、夥しい量の恐怖を生むことになるのでした。
「ま、まあいいっ、放っておこう! そんなことより、今は――………………。ぎゃ、ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああ!?」
走り出そうとしていたセゼールが固まり、大絶叫をあげた理由。それは、気が付くと零れたワインが――
《この家の妹は妹じゃない 姉だ》
――まるで血文字のようなものを、絨毯に描いていたからでした。
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