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第7話 同時刻 ターザッカル邸内では 俯瞰視点(2)
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「? あなた、どうしたの?」
「お父様? テーブルに、何かあるの?」
「………………な、なあ、お前達。札束の数が、減っていないか?」
ニコニコ笑顔でナイフとフォークを手にしていた、父セゼール。彼は両手に握っていたカトラリーを置き、悪趣味に広げていた札束を見回しました。
「さっきまでは、もっとあったような気がするんだが……。お前達は……どう、思う?」
「もう、あなたったら。減っているはずがないでしょう?」
「まだ一度も使っていないんだもの。お父様、それは気のせいよ」
「そ、そうだよな……。しかし…………明らかに、減っているような………………。す、すまないがエミリとリヴィアも、カウントを手伝ってくれ」
そんなはずはないけれど、そう感じる。そこでセゼールは数え間違いがなくなるよう三等分して、それぞれ数えていきます。
「1、2、3、4、5…………………………33。ちゃんとあるわよ、あなた」
「わたしのところも、束はちゃんと33ある。やっぱりお父様の勘違いで――お父様、どうして急に震え始めたの? ……まさか……」
「………………ああ、そのまさかだ……。お前たち2人で、66。だから34ないといけないのに、こちらには29しかない……。5つも減っているんだ!!」
ついさっき自分達が丁寧に100つの束を並べていて、それ以降自分たち以外誰も食卓には近づいていない。つまりそれは本来、決してあり得ないこと。
そのためセゼールの顔は瞬く間に青ざめてゆき、ソレはエミリとリヴィアにも伝播してしまいました。
「どうなってるの!? かっ、数え間違いでしょっ? おっ、お父様もう一回数えてみてっっ! 落ち着いてゆっくり数え直してみてっ!」
「きっ、きっと勘違いよっ! そんなこと起きるはずないものっ! さ、さああなた! もう一度っ!」
「う、うむ。い、1、2、3、4、5,6…………」
額にたっぷり浮かんだ脂汗を拭い、今一度確認しています。
さっき以上に、一つ一つ丁寧に。妻と娘に見守られながら、慎重にカウントしていって――
「にっ、24だって!? さっきより更に5つ減っただって!?」
その結果セゼールは先ほど以上の、激しい動揺に襲われることとなりました。
ですがそれはまだ、衝撃の始まりに過ぎませんでした。この絶叫を切っ掛けとして、更なる異変が発生し――
「お父様? テーブルに、何かあるの?」
「………………な、なあ、お前達。札束の数が、減っていないか?」
ニコニコ笑顔でナイフとフォークを手にしていた、父セゼール。彼は両手に握っていたカトラリーを置き、悪趣味に広げていた札束を見回しました。
「さっきまでは、もっとあったような気がするんだが……。お前達は……どう、思う?」
「もう、あなたったら。減っているはずがないでしょう?」
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そんなはずはないけれど、そう感じる。そこでセゼールは数え間違いがなくなるよう三等分して、それぞれ数えていきます。
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「………………ああ、そのまさかだ……。お前たち2人で、66。だから34ないといけないのに、こちらには29しかない……。5つも減っているんだ!!」
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そのためセゼールの顔は瞬く間に青ざめてゆき、ソレはエミリとリヴィアにも伝播してしまいました。
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「う、うむ。い、1、2、3、4、5,6…………」
額にたっぷり浮かんだ脂汗を拭い、今一度確認しています。
さっき以上に、一つ一つ丁寧に。妻と娘に見守られながら、慎重にカウントしていって――
「にっ、24だって!? さっきより更に5つ減っただって!?」
その結果セゼールは先ほど以上の、激しい動揺に襲われることとなりました。
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