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第6話 人間界にて~1つめの思い出の場所~ 俯瞰視点(1)
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「…………………………」
「ラシェル嬢。貴女はこの場所を、よく知っているんだ。貴女にとって大事な思い出のある場所、その一つなのだよ」
人間界ことエプリタニアの森に降り立ったあと、セレスティンは転移用魔法陣を再度展開。それによって2人は瞬時の移動を行い、森から500キロ以上離れた場所――今は廃墟となっている大きなお屋敷の前、中庭に到着しました。
「…………………………」
「ここは、貴女の生家。貴女はこの屋敷で双子の妹として生まれ、ここで素敵な友と楽しい時間を過ごしたのだよ」
今から18年前の、7月12日。初産を迎える母エミリのメンタルなど複数の理由により、姉妹はエミリの実家であるレウザート伯爵邸――現在は旧伯爵邸となっているお屋敷で生を受け、3歳になるまではここを中心として、6歳になるまでは1年の半分程度をこの場所で過ごしていました。
そしてラシェルはこの場所で、人生初めての親友が出来ていたのです。
「「「チチチチチッ。チチチチチチッ」」」
「ほらラシェル嬢、貴女を察知してすぐ来てくれた。貴女の親友たちが」
お屋敷の周りを気持ちよさそうに飛んでいた、今はラシェルの両肩にチョコンと乗っている3匹の小さな鳥。2匹のオスと1匹のメス。彼らこそがラシェルが3歳の頃にできた、人生で初めての親友でした。
「ラシェル嬢。貴女は親に育児を放棄されてしまった3匹を、あそこ――かつては木があった場所で見つけ、介抱した。そうして世話をするうちに彼らは貴女を慕うようになり、貴女達の間に絆が生まれていたのだよ」
一緒に歌を歌ったり、一緒にお散歩をしたり、一緒にお昼寝をしたり。ラシェル達は沢山の思い出を作り、そのため――。ターザッカル伯爵邸からは相当離れているため滅多に会えなくなってはいましたが、それでもラシェルは定期的にココを訪れていたのでした。
「チチチッ!」
「チ? チチ?」
「チチチチチ……?」
「彼女は現在家族に陥れられ、心を失ってしまっているのだよ。だが、安心してもらって構わない。必ずや元通りにしてみせる」
昨日もう会えないって言ってたのに来てくれたよ! あれ? でもいつもと様子が違うよ? どうしたのかな……? 精霊は動物の声が分かるため、戸惑う彼らに対して断言をします。そうして約束を終えたセレスティンは、視線を下へとおろし――横抱きにしているラシェルの瞳を、覗き込むように見つめました。
これから始まるのは、1回目の魂への干渉。彼はすっかり光を失くしてしまっている碧眼を、直視して――
「ラシェル嬢。貴女はこの場所を、よく知っているんだ。貴女にとって大事な思い出のある場所、その一つなのだよ」
人間界ことエプリタニアの森に降り立ったあと、セレスティンは転移用魔法陣を再度展開。それによって2人は瞬時の移動を行い、森から500キロ以上離れた場所――今は廃墟となっている大きなお屋敷の前、中庭に到着しました。
「…………………………」
「ここは、貴女の生家。貴女はこの屋敷で双子の妹として生まれ、ここで素敵な友と楽しい時間を過ごしたのだよ」
今から18年前の、7月12日。初産を迎える母エミリのメンタルなど複数の理由により、姉妹はエミリの実家であるレウザート伯爵邸――現在は旧伯爵邸となっているお屋敷で生を受け、3歳になるまではここを中心として、6歳になるまでは1年の半分程度をこの場所で過ごしていました。
そしてラシェルはこの場所で、人生初めての親友が出来ていたのです。
「「「チチチチチッ。チチチチチチッ」」」
「ほらラシェル嬢、貴女を察知してすぐ来てくれた。貴女の親友たちが」
お屋敷の周りを気持ちよさそうに飛んでいた、今はラシェルの両肩にチョコンと乗っている3匹の小さな鳥。2匹のオスと1匹のメス。彼らこそがラシェルが3歳の頃にできた、人生で初めての親友でした。
「ラシェル嬢。貴女は親に育児を放棄されてしまった3匹を、あそこ――かつては木があった場所で見つけ、介抱した。そうして世話をするうちに彼らは貴女を慕うようになり、貴女達の間に絆が生まれていたのだよ」
一緒に歌を歌ったり、一緒にお散歩をしたり、一緒にお昼寝をしたり。ラシェル達は沢山の思い出を作り、そのため――。ターザッカル伯爵邸からは相当離れているため滅多に会えなくなってはいましたが、それでもラシェルは定期的にココを訪れていたのでした。
「チチチッ!」
「チ? チチ?」
「チチチチチ……?」
「彼女は現在家族に陥れられ、心を失ってしまっているのだよ。だが、安心してもらって構わない。必ずや元通りにしてみせる」
昨日もう会えないって言ってたのに来てくれたよ! あれ? でもいつもと様子が違うよ? どうしたのかな……? 精霊は動物の声が分かるため、戸惑う彼らに対して断言をします。そうして約束を終えたセレスティンは、視線を下へとおろし――横抱きにしているラシェルの瞳を、覗き込むように見つめました。
これから始まるのは、1回目の魂への干渉。彼はすっかり光を失くしてしまっている碧眼を、直視して――
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