心を失ってしまった令嬢は、心優しい精霊王に愛される

柚木ゆず

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第4話 必ず、の理由~ラシェルの一か月間~ 俯瞰視点(1)

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((お姉様が、生贄に……!? そんな…………))

 それは現在から、一か月前のことでした。ターザッカル伯爵邸に国王自らが姿を現し、ラシェルは姉リヴィアが選ばれてしまったと知りました。

「わたしが死ぬ!? 嫌よっっ! 嫌よぉっっ!! どうしてわたしがこの国のために犠牲にならなくちゃいけないのぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおお!?」
「神よ!! なぜなのだ!? 貴族令嬢はごまんといるのに……!! なぜこの子をお選びになられたのですかっ!? なぜリヴィアなのですか!?」
「この世に必要のない女は山ほどいるのに!! どうしてリヴィアなの!? せめてラシェルなら…………!!」

 王が直々に儀式の説明などを行い、去ったあと。お屋敷内では姉リヴィア、父セゼール、母エミリが頭を抱え、一様に泣き喚いていました。
 そして、

「なんでアンタじゃないのよぉぉぉぉっ!! どうしてわたしなのよぉぉぉぉぉぉ!?」
「お前が先に産まれていれば、きっと! くそっ、くそぉぉぉ!!」
「ラシェル! 貴女を姉として登録しておけばよかったわっ!! 最悪よ!!」

 3人は八つ当たりを行い、ラシェルに沢山物を投げつけ怒鳴り散らしました。
 そうしてラシェルは心と身体に傷を負い、ですが――。ラシェルは『いい気味』だと嗤いません。それどころか、3人に同情をしていたのです。

((……お姉様達の言い分は、分かります……。急に死を宣告されるのは、大切な人がこんな形でいなくなるのは……。辛いですよね……))

 ラシェルが正しいことを口にすると、疎まれ暴言を吐かれてしまう――。いつもいつもまるで家族ではないような、邪魔者扱いをされている――。3人は理不尽な思考回路の持ち主だと、理解していました。
 ですが、それでも――

 リヴィアはただ一人の姉で、セゼールとエミリは唯一の両親であること。

 それに加え、

 ラシェルは人の痛みを自身の痛みのように、理解できる人間だったこと。

 これらの理由によって『自分にできることはないか』、と考えるようになります。そしてその結果――

((生贄は精霊王様から指定があったのではなく、公平にクジで選ばれただけ。でしたら…………私が、お姉様の代わりになります))

 そう決め、ぬか喜びをなどをさせる羽目になってはいけないと考え、念のため『身代わりになっても本当に大丈夫なのか?』を密かに確認。そうしてようやく『前日』に問題ないと確信を持ち、お屋敷に戻ったラシェルはその意志を伝えようとしたのですが――









 ※本日も複数回(お昼と夕方と夜ごろに)、投稿をさせていただきます。

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