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第1話 精霊界に着いた人形令嬢は 俯瞰視点(2)
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「『生贄はもう要らないから、精霊の祭壇は封印してもらって構わない』。そうメッセージを発信したんだよっ!? なのにどうしてリヴィアちゃんが来ちゃってるのっ!?」
「廃止……封印……? あの、ゴーチェ様……。去年…………ちょうど、1年前でした。ジスラン陛下が――我が国の王が、これまで同様に神託が届いたと仰られていましたよ……?」
毎回、99年目になると――生贄を求める年の1年前になると、『約束をゆめゆめ忘れるな』という知らせが国のトップに届く仕組みになっていました。そのため実際に選定が行われ、先程は国王達が見守る中で転移を行ってもいるので、リヴィアことラシェルは不思議そうに首を傾げました。
「その頃はまだ先代精霊王が統べていたから、確かに伝えていたと思う。だけど一か月前に体制が変わって、すぐに不要ってメッセージを送ったんだよっ!?」
「一か月前、ですか……? 人間界ではちょうど一か月前に、生贄を決めるクジ引きが陛下によって行われております。ですのでそういったものは、届いていないと思いますが……?」
「ううんそんなはずないよっ。だってその担当はボクで、ボクが実際に『生贄は不要』だってトップにメッセージを送ったんだから――って今はそんなコトはどうでもいいんだったっ! 大変だぁっ!」(マズイぞ……。この子…………元の世界に、戻れるのかな……!?)
「? ゴーチェ様? どうなされたのですか?」
「え!? なっ、何でもないよっ!」(精霊界に移動しちゃった人間が、人間界に戻るなんて……。実際は前例がないけど……。セレ様なら、きっと大丈夫だよね!)
アタフタして頭を抱えていたゴーチェは、コクコクと頷きます。そうして突如発生した動揺をどうにか消した彼は、ペコッと頭を下げました。
「バタバタしちゃってゴメンネ? ここから先は精霊王様とお話しした方がいいと思うから、『王の座』に――精霊王がいる場所に、案内するね。ついて来てっ」
「はい。よろしくお願い致します」
ラシェルはゴーチェによって手を引かれ、早歩きで進んでゆきます。
しばらくまっすぐ進んで、三つに分かれている道を右に曲がって。次の分かれ道を左に進み、もう一度右に曲がったあと、更に2分ほど直進します。そうすれば正面には七色に輝く木によって作られたアーチがあり、そこをくぐると――その先には、大きな大きなお城が建っていました。
「この中に、精霊王様がいるんだ。こっちこっち」
清らかさのみが存在する、白磁のようなもので造られたお城。その正面にある巨大な扉の前に立つと自動的にソレが開き、ラシェルは再び手を引かれて2階部分へと進みます。
リヴィアが生贄に選ばれたことによって何度か招待された、祖国ニッケリーズに建つ王城。そこから『豪奢』『贅沢』といった要素を引き、『品』を足した空間。澄んだ雰囲気の中にある長い階段や廊下を、早歩きではなく通常のスピードで歩き、突き当りにある真白の大扉の前で2人は立ち止まりました。
「この先が『王の座』で、これから入るね。…………精霊王様っ、大事なお話があり客人をお連れ致しましたっ!」
『ご苦労。入ってきてくれ』
温かさと静かな強さが含まれた、少しばかり低めの落ち着いた声。扉の向こうからバリトンボイスが返り、許可を得たことでゴーチェは扉を開けます。そうするとラシェルの瞳には広々とした空間と、最奥にある玉座――そこに座る、真白のローブを纏った美男の姿が映るようになったのでした。
「客人、御足労感謝する。俺はこの世界の王でありこの城の主、精霊王セレスティン・エスプリトだ」
※本日は夜までに、複数回(あと2~4回ほど)投稿をさせていただきます。
「廃止……封印……? あの、ゴーチェ様……。去年…………ちょうど、1年前でした。ジスラン陛下が――我が国の王が、これまで同様に神託が届いたと仰られていましたよ……?」
毎回、99年目になると――生贄を求める年の1年前になると、『約束をゆめゆめ忘れるな』という知らせが国のトップに届く仕組みになっていました。そのため実際に選定が行われ、先程は国王達が見守る中で転移を行ってもいるので、リヴィアことラシェルは不思議そうに首を傾げました。
「その頃はまだ先代精霊王が統べていたから、確かに伝えていたと思う。だけど一か月前に体制が変わって、すぐに不要ってメッセージを送ったんだよっ!?」
「一か月前、ですか……? 人間界ではちょうど一か月前に、生贄を決めるクジ引きが陛下によって行われております。ですのでそういったものは、届いていないと思いますが……?」
「ううんそんなはずないよっ。だってその担当はボクで、ボクが実際に『生贄は不要』だってトップにメッセージを送ったんだから――って今はそんなコトはどうでもいいんだったっ! 大変だぁっ!」(マズイぞ……。この子…………元の世界に、戻れるのかな……!?)
「? ゴーチェ様? どうなされたのですか?」
「え!? なっ、何でもないよっ!」(精霊界に移動しちゃった人間が、人間界に戻るなんて……。実際は前例がないけど……。セレ様なら、きっと大丈夫だよね!)
アタフタして頭を抱えていたゴーチェは、コクコクと頷きます。そうして突如発生した動揺をどうにか消した彼は、ペコッと頭を下げました。
「バタバタしちゃってゴメンネ? ここから先は精霊王様とお話しした方がいいと思うから、『王の座』に――精霊王がいる場所に、案内するね。ついて来てっ」
「はい。よろしくお願い致します」
ラシェルはゴーチェによって手を引かれ、早歩きで進んでゆきます。
しばらくまっすぐ進んで、三つに分かれている道を右に曲がって。次の分かれ道を左に進み、もう一度右に曲がったあと、更に2分ほど直進します。そうすれば正面には七色に輝く木によって作られたアーチがあり、そこをくぐると――その先には、大きな大きなお城が建っていました。
「この中に、精霊王様がいるんだ。こっちこっち」
清らかさのみが存在する、白磁のようなもので造られたお城。その正面にある巨大な扉の前に立つと自動的にソレが開き、ラシェルは再び手を引かれて2階部分へと進みます。
リヴィアが生贄に選ばれたことによって何度か招待された、祖国ニッケリーズに建つ王城。そこから『豪奢』『贅沢』といった要素を引き、『品』を足した空間。澄んだ雰囲気の中にある長い階段や廊下を、早歩きではなく通常のスピードで歩き、突き当りにある真白の大扉の前で2人は立ち止まりました。
「この先が『王の座』で、これから入るね。…………精霊王様っ、大事なお話があり客人をお連れ致しましたっ!」
『ご苦労。入ってきてくれ』
温かさと静かな強さが含まれた、少しばかり低めの落ち着いた声。扉の向こうからバリトンボイスが返り、許可を得たことでゴーチェは扉を開けます。そうするとラシェルの瞳には広々とした空間と、最奥にある玉座――そこに座る、真白のローブを纏った美男の姿が映るようになったのでした。
「客人、御足労感謝する。俺はこの世界の王でありこの城の主、精霊王セレスティン・エスプリトだ」
※本日は夜までに、複数回(あと2~4回ほど)投稿をさせていただきます。
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