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第1話 精霊界に着いた人形令嬢は 俯瞰視点(1)
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「………………ここが、精霊の住む精霊界。精霊王様は、どこかしら……?」
青ではなく七色の空の下にある、金色や銀色の木や草花が広がる森。そんな異様な場所に独り転移しても、ラシェルは動揺一つしません。
姉リヴィアとして100年に1度の生贄となり、家族であり祖国の平穏を維持するために。ラシェルは微塵も怯えることなく歩き出し、目的の存在を探し始めます。
「…………生贄を待ってくださっていると、思っていたのだけど……。違う、みたいね……。誰かいらっしゃらないかしら……?」
周囲をキョロキョロと見回しながら進み、真っすぐ続く道を前進してゆきます。そうして人間にとっては異様に映る景色の中を、平然と1分ほど歩いた頃でした。不意にラシェルの目の前に30センチほどの光の球体が現れ、それはやがて身長140センチくらいの人型へと姿を変えました。
「うわっ、セレさ――じゃなかった、精霊王様の言った通りだ! ホントに人が来ちゃってるよっ!」
「精霊王……っ。貴方様は、精霊王様の関係者様なのでしょうか?」
シャツと長ズボンのような服を着た、12歳前後に見えるツンツン髪の少年。そんな彼が口にした言葉を聞き、ラシェルの声は自然とワントーン大きくなりました。
「え? う、うん、そうだよ。ボクは精霊王の補佐を務める、ゴーチェっていうんだ。モチロン精霊で、そういう君の名前は?」
「わたしはニッケリーズに属するターザッカル伯爵家の長女、リヴィアと申します。齢(よわい)は18でございます」
目の前にいるのは、目的の存在と深く関わる者。そのためラシェルはカーテシーを行い、丁寧に自己の紹介を行いました。
「ふ~ん、ターザッカル家のリヴィアちゃんね。……ん~? んん~? リヴィアちゃんっていうの? なんか違うような気がするような……?」
「??? ゴーチェ様。わたしは、正真正銘のリヴィアでございますよ?」
黒魔術の効果により、ラシェルは自分を双子の姉リヴィアと思い込んでいます。それによって迷いなく即答を行い、堂々とした反応によってゴーチェは信じてしまいました。
「そ、そっか、ヘンなコト聞いてゴメンネ? ところでリヴィアちゃん。ここには何しに来たの? うっかり迷い込んじゃった?」
「え? いえ。わたしはご要望に従い、献上に参りました」
「……? ご要望? 献上? 誰の? なにを?」
「精霊王様による、生贄の御所望でございます。今回の生贄はわたしリヴィア・ターザッカルと決まり、この心身を捧げに参りました」
加護を得るための、100年に1度の取り決め。それを果たすためだと説明を行い、そうすれば――。首を傾げていたゴーチェの目は丸くなり、ラシェルにとってあまりにも予想外な大声が飛び出したのでした。
「生贄!? そんなの求めていないよ!? だって生贄のシステムは、現精霊王様が廃止にしたんだからっ!」
青ではなく七色の空の下にある、金色や銀色の木や草花が広がる森。そんな異様な場所に独り転移しても、ラシェルは動揺一つしません。
姉リヴィアとして100年に1度の生贄となり、家族であり祖国の平穏を維持するために。ラシェルは微塵も怯えることなく歩き出し、目的の存在を探し始めます。
「…………生贄を待ってくださっていると、思っていたのだけど……。違う、みたいね……。誰かいらっしゃらないかしら……?」
周囲をキョロキョロと見回しながら進み、真っすぐ続く道を前進してゆきます。そうして人間にとっては異様に映る景色の中を、平然と1分ほど歩いた頃でした。不意にラシェルの目の前に30センチほどの光の球体が現れ、それはやがて身長140センチくらいの人型へと姿を変えました。
「うわっ、セレさ――じゃなかった、精霊王様の言った通りだ! ホントに人が来ちゃってるよっ!」
「精霊王……っ。貴方様は、精霊王様の関係者様なのでしょうか?」
シャツと長ズボンのような服を着た、12歳前後に見えるツンツン髪の少年。そんな彼が口にした言葉を聞き、ラシェルの声は自然とワントーン大きくなりました。
「え? う、うん、そうだよ。ボクは精霊王の補佐を務める、ゴーチェっていうんだ。モチロン精霊で、そういう君の名前は?」
「わたしはニッケリーズに属するターザッカル伯爵家の長女、リヴィアと申します。齢(よわい)は18でございます」
目の前にいるのは、目的の存在と深く関わる者。そのためラシェルはカーテシーを行い、丁寧に自己の紹介を行いました。
「ふ~ん、ターザッカル家のリヴィアちゃんね。……ん~? んん~? リヴィアちゃんっていうの? なんか違うような気がするような……?」
「??? ゴーチェ様。わたしは、正真正銘のリヴィアでございますよ?」
黒魔術の効果により、ラシェルは自分を双子の姉リヴィアと思い込んでいます。それによって迷いなく即答を行い、堂々とした反応によってゴーチェは信じてしまいました。
「そ、そっか、ヘンなコト聞いてゴメンネ? ところでリヴィアちゃん。ここには何しに来たの? うっかり迷い込んじゃった?」
「え? いえ。わたしはご要望に従い、献上に参りました」
「……? ご要望? 献上? 誰の? なにを?」
「精霊王様による、生贄の御所望でございます。今回の生贄はわたしリヴィア・ターザッカルと決まり、この心身を捧げに参りました」
加護を得るための、100年に1度の取り決め。それを果たすためだと説明を行い、そうすれば――。首を傾げていたゴーチェの目は丸くなり、ラシェルにとってあまりにも予想外な大声が飛び出したのでした。
「生贄!? そんなの求めていないよ!? だって生贄のシステムは、現精霊王様が廃止にしたんだからっ!」
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