22 / 23
第13話 ロバートの一年間 俯瞰視点
しおりを挟む
「……ち、父上……。ダリオ、に、兄さん。は、ははは。オレはヘンな聞き間違いをしてしまったみたいだ。もう一回、ちゃんと言ってください」
あちこちでシブリアンとクロエの写真がばら撒かれてから、ちょうど半年が経ったころでした。屋敷の一階部にある執務室に呼ばれたロバートは、父と兄を交互に見つめていました。
「酷い聞き間違いをしてしまいましたよ。もう一度お願いしま――」
「ロバートよ、お前は聞き間違いなどしてはおらんよ」
「今聞いたことは、どこにも間違いはない。お前の追放がさっき、正式に決まった」
俺が追放されるはずがない――。そんなロバートの考えは、一瞬にして木っ端みじんとなってしまったのでした。
「つ、追放……!? 理由は……!? 理由はなんなのですか……!?」
「理由か? 理由は次期当主殿が希望したからだ」
「次期当主殿……ダリオ兄さんが!? なぜだっ!? 兄さんどうして!?」
「従者が教えてくれたよ。お前は僕を蹴落とし自分が登るために、色々と暗躍していたそうじゃないか。……そんなことを考える人間が居たら落ち着かないからね、悪影響を及ぼす輩を排除するんだよ」
というのは、半分嘘。
ロバートがそうであったように、双子に兄ダリオも弟を忌々しく思っていました。
――これまで邪魔をしてきた大嫌いな人間に、仕置きをしてやる――。
大きな力であり父親の後ろ盾を得たダリオはずっとそんなことを考えていて、ようやくソレに必要な根回しが全て済んでいたのでした。
「大事な兄弟が居なくなるのは寂しいことだけど、仕方がない。さようならだ」
「父上!! コイツは嘘を吐いている!! 単にオレを攻撃したいだけなんです!! こんなことを許してはいけま――」
「お前はわたしを平気で騙すような人間だ。お前の言うことなど聞かんよ」
エタンはあの件で、今なお激しい怒りを抱いていました。
ですので味方にはなってくれず、いくら食い下がっても無駄。ロバートはあっという間に全てを失ってしまい、路頭に迷う羽目になったのでした。
「……くそ……! くそ……! くそぉぉぉぉぉぉ……!!」
全てを失ってしまったのなら、自分で働かないと生きていけない。けれどダリオ達がそこでも暗躍をしていて、知り合いを頼ることなどができなくなっていた――日雇いでしか、働けなくなってしまっていました。
そのためロバートは、よりよい環境を求めて彷徨い続け――
「……ここだ……。ここなら仕事もたくさんあって、少しは楽に暮らせる……」
――『ランティナーズ』へと、流れ着いていたのでした。
あちこちでシブリアンとクロエの写真がばら撒かれてから、ちょうど半年が経ったころでした。屋敷の一階部にある執務室に呼ばれたロバートは、父と兄を交互に見つめていました。
「酷い聞き間違いをしてしまいましたよ。もう一度お願いしま――」
「ロバートよ、お前は聞き間違いなどしてはおらんよ」
「今聞いたことは、どこにも間違いはない。お前の追放がさっき、正式に決まった」
俺が追放されるはずがない――。そんなロバートの考えは、一瞬にして木っ端みじんとなってしまったのでした。
「つ、追放……!? 理由は……!? 理由はなんなのですか……!?」
「理由か? 理由は次期当主殿が希望したからだ」
「次期当主殿……ダリオ兄さんが!? なぜだっ!? 兄さんどうして!?」
「従者が教えてくれたよ。お前は僕を蹴落とし自分が登るために、色々と暗躍していたそうじゃないか。……そんなことを考える人間が居たら落ち着かないからね、悪影響を及ぼす輩を排除するんだよ」
というのは、半分嘘。
ロバートがそうであったように、双子に兄ダリオも弟を忌々しく思っていました。
――これまで邪魔をしてきた大嫌いな人間に、仕置きをしてやる――。
大きな力であり父親の後ろ盾を得たダリオはずっとそんなことを考えていて、ようやくソレに必要な根回しが全て済んでいたのでした。
「大事な兄弟が居なくなるのは寂しいことだけど、仕方がない。さようならだ」
「父上!! コイツは嘘を吐いている!! 単にオレを攻撃したいだけなんです!! こんなことを許してはいけま――」
「お前はわたしを平気で騙すような人間だ。お前の言うことなど聞かんよ」
エタンはあの件で、今なお激しい怒りを抱いていました。
ですので味方にはなってくれず、いくら食い下がっても無駄。ロバートはあっという間に全てを失ってしまい、路頭に迷う羽目になったのでした。
「……くそ……! くそ……! くそぉぉぉぉぉぉ……!!」
全てを失ってしまったのなら、自分で働かないと生きていけない。けれどダリオ達がそこでも暗躍をしていて、知り合いを頼ることなどができなくなっていた――日雇いでしか、働けなくなってしまっていました。
そのためロバートは、よりよい環境を求めて彷徨い続け――
「……ここだ……。ここなら仕事もたくさんあって、少しは楽に暮らせる……」
――『ランティナーズ』へと、流れ着いていたのでした。
190
お気に入りに追加
399
あなたにおすすめの小説
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。
あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。
「君の為の時間は取れない」と。
それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。
そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。
旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。
あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。
そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。
※35〜37話くらいで終わります。
王妃様は死にました~今さら後悔しても遅いです~
由良
恋愛
クリスティーナは四歳の頃、王子だったラファエルと婚約を結んだ。
両親が事故に遭い亡くなったあとも、国王が大病を患い隠居したときも、ラファエルはクリスティーナだけが自分の妻になるのだと言って、彼女を守ってきた。
そんなラファエルをクリスティーナは愛し、生涯を共にすると誓った。
王妃となったあとも、ただラファエルのためだけに生きていた。
――彼が愛する女性を連れてくるまでは。
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。
【完結】愛されていた。手遅れな程に・・・
月白ヤトヒコ
恋愛
婚約してから長年彼女に酷い態度を取り続けていた。
けれどある日、婚約者の魅力に気付いてから、俺は心を入れ替えた。
謝罪をし、婚約者への態度を改めると誓った。そんな俺に婚約者は怒るでもなく、
「ああ……こんな日が来るだなんてっ……」
謝罪を受け入れた後、涙を浮かべて喜んでくれた。
それからは婚約者を溺愛し、順調に交際を重ね――――
昨日、式を挙げた。
なのに・・・妻は昨夜。夫婦の寝室に来なかった。
初夜をすっぽかした妻の許へ向かうと、
「王太子殿下と寝所を共にするだなんておぞましい」
という声が聞こえた。
やはり、妻は婚約者時代のことを許してはいなかったのだと思ったが・・・
「殿下のことを愛していますわ」と言った口で、「殿下と夫婦になるのは無理です」と言う。
なぜだと問い質す俺に、彼女は笑顔で答えてとどめを刺した。
愛されていた。手遅れな程に・・・という、後悔する王太子の話。
シリアス……に見せ掛けて、後半は多分コメディー。
設定はふわっと。
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
完結 そんなにその方が大切ならば身を引きます、さようなら。
音爽(ネソウ)
恋愛
相思相愛で結ばれたクリステルとジョルジュ。
だが、新婚初夜は泥酔してお預けに、その後も余所余所しい態度で一向に寝室に現れない。不審に思った彼女は眠れない日々を送る。
そして、ある晩に玄関ドアが開く音に気が付いた。使われていない離れに彼は通っていたのだ。
そこには匿われていた美少年が棲んでいて……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる