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第10話 言い訳 シブリアン視点(2)

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「だ、そうだ。シブリアン。まだ言い訳を続けるか?」
「………………ち、ちがい、ますよ。言い訳、では、なくて。真実を、口にしている、だけなんです」
「まだ言うか。ではお前が口にしていた先程の言い分はともかくとしてだ、モニアス達の証言はどう説明する? 脅迫者が用意した女に花や甘いものを用意しリストランテに紹介した裏には、どういう理由があるんだ?」
「そ、それは…………。……………………」

 駄目だ。
 いくら考えても浮かんでこない。
 無理に決まってる! 花束にオペラにリストランテっ! こんなの誤魔化せるワケないじゃないか!!

((でも……))

 どうにかして完璧に誤魔化さないと、地獄が待っている。何もかもを手放さないといけなくなる、日常が崩壊してしまう。
 それは、避けないといけない。絶対に、だ。

「……………………………………」
「どうしたシブリアン。早く続けるのだ」
「……………………………………」

 悲劇を防ぐには……。防ぐには…………。防ぐ、ためには…………。

「……………………………………申し訳ございません。仰る通り俺は言い訳を続けていました。これまでの発言は全て嘘。俺シブリアンは、所謂浮気を行っておりました」

 正直に打ち明け、誠意を見せて減刑してもらうしかない――。
 この状況下で行えることはもうこれしかなく、俺はその場で両膝をついた。

「……ロバートに誘われていったリストランで給仕をしていたのが、その女クロエでして……。俺はロバートの罠に嵌まり、クロエに恋をしてしまったのです……」

 俺があの日クロエと会ってクロエに一目惚れをした裏には、ロバートがいる。これは紛れもない真実で、その過程を包み隠さず打ち明けた。

「まんまと罠に嵌まって写真を撮られ、命令に従わないとばら撒くと脅されて……。そんなロバートの狙いは、父上が所有する『ローレック記念硬貨』。自分が次期当主に選ばれるための賄賂として父に渡そうとしていて、俺はすり替えを命じられ……。3日前の晩に、執務室に忍び込みレプリカと入れ替えたのです……」
「………………」
「念のための鑑定が終われば、写真を渡すと約束していたんです……。ヤツは信仰している神に誓っていて、確実に戻って来るはずだったんです……。でも、裏切られてしまい……。今に致します……」
(………そうか、読めたぞ。そういうことだったか)

 父上が何かを呟いたが、気にしている場合じゃない。俺はすぐさま、畳みかける。

「このタイミングで言っても信用されないと思いますが、俺は次に会ったらクロエと別れようと思っていました。浮気はアドリエンヌへの裏切り、ですから……」
「「「「……………………」」」」
「……あの時は動揺して叫んでしまったが、タロット占いの結果を聞いて……ようやく、犯していることがどれだけのことかを理解していたんです。……アドリエンヌ、あの時は――あの時も、ごめんなさい」

 俺は静かに立ち上がり、アドリエンヌに歩み寄り、再び両膝をつく。
 そうしてここから、更に――


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