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第9話 裏切りの理由 俯瞰視点
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「ロバート、素晴らしい贈り物をありがとうな。こんな息子を持って幸せだよ」
「……………………ち、ちち、うえ……?」
シブリアンが写真を突きつけられる、1日前のことでした。自室でくつろいでいたロバートは、部屋を訪ねて来た父バーダンの顔を見て唖然となりました。
バーダンはニコニコとしているものの、その目は激しく血走っている――怒りの笑みを浮かべていたからです。
「ど、どういう、意味、ですか……? それは、コイン……? オレが差し上げた『ローレック記念硬貨』が、どうかしたのですか……?」
「ああ、どうかしたさ。なにせあのコインを鑑定してみたら、こんな結果が返って来たのだからなぁ」
――非常に精巧に作られた偽物――。
バーダンがつき出した書類には、そんな文字がハッキリと記されていました。
「にせ、もの……!? 父上っ、きっと間違いです! 鑑定機関が間違えているのですよ!」
「鑑定機関がミスを犯してしまえば信頼がなくなってしまう。間違うはずがない」
バーダンの言い分は、すべて事実。鑑定を申し込んだ機関は正確に判定しており、それは間違いなく『偽物』だったのです。
((……バカな……。アイツが、偽物を用意するはずはない……。そんな真似をするはずがない……! なにが起きてるんだ……!? なにがどうなって――))
「感謝するぞ。お前のおかげで、ようやく決めることができたぞ。次期当主は、ダリオに決めた」
「父上!! お待ちください!! そちらは――」
「自身の利益のために親を平然と騙そうとする者など、信用ならん。これは決定事項で覆ることはない」
「違うんです!! 話を聞いてください!! 父上っ、オレの話を――」
「お前とは当分話すつもりはない。……追い出されないだけ有難く思うのだな」
何を言っても無駄。父バーダンは淡々と踵を返し、いくら呼びかけても返事が戻ってくることはなかったのでした。
「………………………………ぁ、ぁぁぁ……。ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……!!」
ずっと求めていた『座』に、双子の兄が収まるようになってしまった。
その絶望がロバートを襲い――
「くそぉおおおおおおおお!! アイツのせいでれええええええええええええええええええええええええええ!!」
――その感情はやがて怒りへと変わり、すぐさまお屋敷を飛び出しました。
「……シブリアン、お前のせいでオレの人生は滅茶苦茶になっちまった……! そのお礼に、お前の人生も滅茶苦茶にしてやる……!!」
そうしてロバートは写真を複製して浮気の噂をばら撒き、やがてアドリエンヌの父ジャックの耳に入ることになったのでした――。
「……………………ち、ちち、うえ……?」
シブリアンが写真を突きつけられる、1日前のことでした。自室でくつろいでいたロバートは、部屋を訪ねて来た父バーダンの顔を見て唖然となりました。
バーダンはニコニコとしているものの、その目は激しく血走っている――怒りの笑みを浮かべていたからです。
「ど、どういう、意味、ですか……? それは、コイン……? オレが差し上げた『ローレック記念硬貨』が、どうかしたのですか……?」
「ああ、どうかしたさ。なにせあのコインを鑑定してみたら、こんな結果が返って来たのだからなぁ」
――非常に精巧に作られた偽物――。
バーダンがつき出した書類には、そんな文字がハッキリと記されていました。
「にせ、もの……!? 父上っ、きっと間違いです! 鑑定機関が間違えているのですよ!」
「鑑定機関がミスを犯してしまえば信頼がなくなってしまう。間違うはずがない」
バーダンの言い分は、すべて事実。鑑定を申し込んだ機関は正確に判定しており、それは間違いなく『偽物』だったのです。
((……バカな……。アイツが、偽物を用意するはずはない……。そんな真似をするはずがない……! なにが起きてるんだ……!? なにがどうなって――))
「感謝するぞ。お前のおかげで、ようやく決めることができたぞ。次期当主は、ダリオに決めた」
「父上!! お待ちください!! そちらは――」
「自身の利益のために親を平然と騙そうとする者など、信用ならん。これは決定事項で覆ることはない」
「違うんです!! 話を聞いてください!! 父上っ、オレの話を――」
「お前とは当分話すつもりはない。……追い出されないだけ有難く思うのだな」
何を言っても無駄。父バーダンは淡々と踵を返し、いくら呼びかけても返事が戻ってくることはなかったのでした。
「………………………………ぁ、ぁぁぁ……。ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……!!」
ずっと求めていた『座』に、双子の兄が収まるようになってしまった。
その絶望がロバートを襲い――
「くそぉおおおおおおおお!! アイツのせいでれええええええええええええええええええええええええええ!!」
――その感情はやがて怒りへと変わり、すぐさまお屋敷を飛び出しました。
「……シブリアン、お前のせいでオレの人生は滅茶苦茶になっちまった……! そのお礼に、お前の人生も滅茶苦茶にしてやる……!!」
そうしてロバートは写真を複製して浮気の噂をばら撒き、やがてアドリエンヌの父ジャックの耳に入ることになったのでした――。
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