16 / 23
第7話 まだ続く、想定外 ~終幕の時~ 俯瞰視点(1)
しおりを挟む
「………………」「………………」
ボロボロではあるものの、自信たっぷりでヴィクトル達を迎えたブノアとステファン。そんな彼らの様子は、僅か3分足らずで激変することとなりました。
「紹介をさせていただきますね。僕が祖国から取り寄せていたものは、こちらの丸薬。魅了を強制的に解除できる効果を持つ、薬になります」
今から2日半前に言及されていた、真偽を見極めるアイテム。その正体は、かかっている魅了を解くことができる薬。
まるで想定外な、くだんの56通りにはないものが登場してしまったため、あっという間に余裕はなくなっていたのです。
「魅了は、何かしらの強いショックを受けないと解けない。その『強いショック』は人によってまるで異なっており、解除には非常に多くの時間を費やします。そこで僕達は、被害者を早急に救えるものを開発していたのですよ」
「そ、そう、なのですね……。…………え……? え……? コレで、見極める……? コレで……?」
「ど……。どういうこと…………なのですかな……」
丸薬は呑むもので、ヴィクトルはこれを呑まそうとしている――。すでに解けていることになっている者に呑ませて、なにが分かるというんだ?――。
ブノアとステファンは意図がまるで理解できず首を大きく傾げ、そうしているとヴィクトルの口元がくすりと緩みました。
「ええ、そうですね。貴方がたが現在思われているであろうことは、もっともです。それでは真偽など見極められませんよね」
「……え、ええ……」
「……こ、こんなもので……。どう、見極めるというのですか……?」
「どのように、嘘を吐いているか否かを調べるのか? そちらは、この丸薬のもう一つの性質を利用するのですよ」
その言葉を合図に、控えていた男二人が――王家の使者2人が動き出し、ブノアとステファンにそれぞれ1枚の紙を渡しました。
二人に渡された紙、それは丸薬の詳細が記されたもの。事細かな成分、そして、仕組みが記されたものです。
「ブノア様、ステファン様。その紙の中段、赤い線で囲んでいる部分をご覧ください」
「は、はい……」「はい……」
戸惑いながら二人は紙面に目を落とし、指定された箇所を読み始めます。そうして彼らはこの丸薬の仕組みを理解し始め、動いていた視線は『ある部分』で揃って止まってしまうこととなりました。
「な……。な……!」「なぁ……!」
ブノア達の視線を止め、更には激しく震えるようになった訳。それは――
《注意
もしも過去一度も魅了にかかった経験のないものに使用してしまうと、その者には強い魅了がかかってしまう。
必ずや魅了が確定してから使用するように 》
そこには、そのような文字が並んでいたからです。
ボロボロではあるものの、自信たっぷりでヴィクトル達を迎えたブノアとステファン。そんな彼らの様子は、僅か3分足らずで激変することとなりました。
「紹介をさせていただきますね。僕が祖国から取り寄せていたものは、こちらの丸薬。魅了を強制的に解除できる効果を持つ、薬になります」
今から2日半前に言及されていた、真偽を見極めるアイテム。その正体は、かかっている魅了を解くことができる薬。
まるで想定外な、くだんの56通りにはないものが登場してしまったため、あっという間に余裕はなくなっていたのです。
「魅了は、何かしらの強いショックを受けないと解けない。その『強いショック』は人によってまるで異なっており、解除には非常に多くの時間を費やします。そこで僕達は、被害者を早急に救えるものを開発していたのですよ」
「そ、そう、なのですね……。…………え……? え……? コレで、見極める……? コレで……?」
「ど……。どういうこと…………なのですかな……」
丸薬は呑むもので、ヴィクトルはこれを呑まそうとしている――。すでに解けていることになっている者に呑ませて、なにが分かるというんだ?――。
ブノアとステファンは意図がまるで理解できず首を大きく傾げ、そうしているとヴィクトルの口元がくすりと緩みました。
「ええ、そうですね。貴方がたが現在思われているであろうことは、もっともです。それでは真偽など見極められませんよね」
「……え、ええ……」
「……こ、こんなもので……。どう、見極めるというのですか……?」
「どのように、嘘を吐いているか否かを調べるのか? そちらは、この丸薬のもう一つの性質を利用するのですよ」
その言葉を合図に、控えていた男二人が――王家の使者2人が動き出し、ブノアとステファンにそれぞれ1枚の紙を渡しました。
二人に渡された紙、それは丸薬の詳細が記されたもの。事細かな成分、そして、仕組みが記されたものです。
「ブノア様、ステファン様。その紙の中段、赤い線で囲んでいる部分をご覧ください」
「は、はい……」「はい……」
戸惑いながら二人は紙面に目を落とし、指定された箇所を読み始めます。そうして彼らはこの丸薬の仕組みを理解し始め、動いていた視線は『ある部分』で揃って止まってしまうこととなりました。
「な……。な……!」「なぁ……!」
ブノア達の視線を止め、更には激しく震えるようになった訳。それは――
《注意
もしも過去一度も魅了にかかった経験のないものに使用してしまうと、その者には強い魅了がかかってしまう。
必ずや魅了が確定してから使用するように 》
そこには、そのような文字が並んでいたからです。
22
お気に入りに追加
659
あなたにおすすめの小説
婚約破棄にはなりました。が、それはあなたの「ため」じゃなく、あなたの「せい」です。
百谷シカ
恋愛
「君がふしだらなせいだろう。当然、この婚約は破棄させてもらう」
私はシェルヴェン伯爵令嬢ルート・ユングクヴィスト。
この通りリンドホルム伯爵エドガー・メシュヴィツに婚約破棄された。
でも、決して私はふしだらなんかじゃない。
濡れ衣だ。
私はある人物につきまとわれている。
イスフェルト侯爵令息フィリップ・ビルト。
彼は私に一方的な好意を寄せ、この半年、あらゆる接触をしてきた。
「君と出会い、恋に落ちた。これは運命だ! 君もそう思うよね?」
「おやめください。私には婚約者がいます……!」
「関係ない! その男じゃなく、僕こそが君の愛すべき人だよ!」
愛していると、彼は言う。
これは運命なんだと、彼は言う。
そして運命は、私の未来を破壊した。
「さあ! 今こそ結婚しよう!!」
「いや……っ!!」
誰も助けてくれない。
父と兄はフィリップ卿から逃れるため、私を修道院に入れると決めた。
そんなある日。
思いがけない求婚が舞い込んでくる。
「便宜上の結婚だ。私の妻となれば、奴も手出しできないだろう」
ランデル公爵ゴトフリート閣下。
彼は愛情も跡継ぎも求めず、ただ人助けのために私を妻にした。
これは形だけの結婚に、ゆっくりと愛が育まれていく物語。
婚約なんてするんじゃなかった——そう言われたのならば。
ルーシャオ
恋愛
ビーレンフェン男爵家次女チェリーシャは、婚約者のスネルソン伯爵家嫡男アンソニーに振り回されていた。彼の買った時代遅れのドレスを着て、殴られたあざを隠すよう化粧をして、舞踏会へ連れていかれて、挙句にアンソニーの同級生たちの前で「婚約なんてするんじゃなかった」と嘲笑われる。
すでにアンソニーから離れられやしないと諦めていたチェリーシャの前に現れたのは、長い黒髪の貴公子だった。
婚約者に「愛することはない」と言われたその日にたまたま出会った隣国の皇帝から溺愛されることになります。~捨てる王あれば拾う王ありですわ。
松ノ木るな
恋愛
純真無垢な心の侯爵令嬢レヴィーナは、国の次期王であるフィリベールと固い絆で結ばれる未来を夢みていた。しかし王太子はそのような意思を持つ彼女を生意気と見なして疎み、気まぐれに婚約破棄を言い渡す。
伴侶と寄り添う心穏やかな人生を諦めた彼女は悲観し、井戸に身を投げたのだった。
あの世だと思って辿りついた先は、小さな貴族の家の、こじんまりとした食堂。そこには呑めもしないのに酒を舐め、身分社会に恨み節を唱える美しい青年がいた。
どこの家の出の、どの立場とも知らぬふたりが、一目で恋に落ちたなら。
たまたま出会って離れていてもその存在を支えとする、そんなふたりが再会して結ばれる初恋ストーリーです。
あの素晴らしい愛をもう一度
仏白目
恋愛
伯爵夫人セレス・クリスティアーノは
33歳、愛する夫ジャレッド・クリスティアーノ伯爵との間には、可愛い子供が2人いる。
家同士のつながりで婚約した2人だが
婚約期間にはお互いに惹かれあい
好きだ!
私も大好き〜!
僕はもっと大好きだ!
私だって〜!
と人前でいちゃつく姿は有名であった
そんな情熱をもち結婚した2人は子宝にもめぐまれ爵位も継承し順風満帆であった
はず・・・
このお話は、作者の自分勝手な世界観でのフィクションです。
あしからず!
【完結】『お姉様に似合うから譲るわ。』そう言う妹は、私に婚約者まで譲ってくれました。
まりぃべる
恋愛
妹は、私にいつもいろいろな物を譲ってくれる。
私に絶対似合うから、と言って。
…て、え?婚約者まで!?
いいのかしら。このままいくと私があの美丈夫と言われている方と結婚となってしまいますよ。
私がその方と結婚するとしたら、妹は無事に誰かと結婚出来るのかしら?
☆★
ごくごく普通の、お話です☆
まりぃべるの世界観ですので、理解して読んで頂けると幸いです。
☆★☆★
全21話です。
出来上がっておりますので、随時更新していきます。
婚約者をないがしろにする人はいりません
にいるず
恋愛
公爵令嬢ナリス・レリフォルは、侯爵子息であるカリロン・サクストンと婚約している。カリロンは社交界でも有名な美男子だ。それに引き換えナリスは平凡でとりえは高い身分だけ。カリロンは、社交界で浮名を流しまくっていたものの今では、唯一の女性を見つけたらしい。子爵令嬢のライザ・フュームだ。
ナリスは今日の王家主催のパーティーで決意した。婚約破棄することを。侯爵家でもないがしろにされ婚約者からも冷たい仕打ちしか受けない。もう我慢できない。今でもカリロンとライザは誰はばかることなくいっしょにいる。そのせいで自分は周りに格好の話題を提供して、今日の陰の主役になってしまったというのに。
そう思っていると、昔からの幼馴染であるこの国の次期国王となるジョイナス王子が、ナリスのもとにやってきた。どうやらダンスを一緒に踊ってくれるようだ。この好奇の視線から助けてくれるらしい。彼には隣国に婚約者がいる。昔は彼と婚約するものだと思っていたのに。
身分違いの恋に燃えていると婚約破棄したではありませんか。没落したから助けて欲しいなんて言わないでください。
木山楽斗
恋愛
侯爵令嬢であるセリティアは、ある日婚約者である侯爵令息のランドラから婚約破棄を告げられた。
なんでも彼は、とある平民の農家の女性に恋をしているそうなのだ。
身分違いの恋に燃えているという彼に呆れながら、それが危険なことであると説明したセリティアだったが、ランドラにはそれを聞き入れてもらえず、結局婚約は破棄されることになった。
セリティアの新しい婚約は、意外な程に早く決まった。
その相手は、公爵令息であるバルギードという男だった。多少気難しい性格ではあるが、真面目で実直な彼との婚約はセリティアにとって幸福なものであり、彼女は穏やかな生活を送っていた。
そんな彼女の前に、ランドラが再び現れた。
侯爵家を継いだ彼だったが、平民と結婚したことによって、多くの敵を作り出してしまい、その結果没落してしまったそうなのだ。
ランドラは、セリティアに助けて欲しいと懇願した。しかし、散々と忠告したというのにそんなことになった彼を助ける義理は彼女にはなかった。こうしてセリティアは、ランドラの頼みを断るのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる