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エピローグ かつて家族だった者達のその後~元次女side~ テレーズ視点
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「…………嘘……。どうして……?」
パーティー会場に入ったわたしは、すぐに唖然となってしまいました。
だって……。
すでに集まってくれていた、家族や従業員の皆さんの中に……。
「お久しぶりでございます、お嬢様」
「10年ぶりですね、お嬢様」
カウティア家の家令であるライアンさんと、御者であるフィリップさんがいたからです。
それも、スロティアー農園の作業着を着て。
「わたくし共の目的は果たされ、カウティア家に留まる理由はなくなりました。ですので余生はこちらで、お嬢様と共に過ごさせていただこうと決めたのございます」
「自分も同じく、あのお屋敷に居る理由はなくなりました。ならお嬢様と共に汗を流す以外の選択肢はなく、本日テランス園長に雇っていただいたのですよ」
「ライアンさんとフィリップさんの加入、これが5日前に言ってたサプライズだよ。僕も、お話を伺った時は驚いたよ」
ライアンさんもフィリップさんも代々カウティア家に仕えていた家系の人で、当主が交代してもカウティア家に居続けると思っていました。ですので従業員になられたと聞いて、本当に驚きました。
「新生カウティア家は何度も引き留めたそうだけど、お二人ともテレーズと共に働く未来を選ばれたんだよ。……優しさが優しさを生んで、優しい人達が再開して一緒になる。素敵なことだね。素敵なことですね」
「はい」
「まことに」
「ええ」
わたし、ライアンさん、フィリップさん。みんなで一緒に、頷きます。
あの日の出来事をそんな風に感じてもらえて、想ってもらって。大好きな人や大切な人達に出会わせてくれた人と、同じ時を過ごせる。
こんなにも幸せなことはありません。
「ライアンさん。フィリップさん。わたしがテレーズになる切っ掛けを作ってくれて、ありがとうございます」
ですので、改めてお二人にお礼をして――。次はエヴァンさん達がいる方を向きます。
「皆さん。右も左も分からなかったわたしに、お仕事を教えてくれてありがとうございます」
色々な技術や知識を、嫌な顔一つせず、親身になって教えてくれた。そんな過去があるからこそ、わたしは一人前を名乗れるようになりました。
堂々と、副園長を務められています。
その感謝を伝え、次はお父さんとお母さんとお兄ちゃんを見つめます。
「トビお父さん、ゼナイドお母さん、テランスお兄ちゃん。遠い親戚の紹介とはいえ、見ず知らずのわたしを温かく迎え入れてくれました。わたしに第二の人生を与えてくれて、ありがとうございます」
血の繋がった娘のように、妹のように、接してくれたこと。涙が出てしまうほどに嬉しかったです。
そんな気持ちを伝えて、最後に――テランスさんへと向き直ります。
「あの日からいつも、わたしの幸せを考えてくれていますよね。だから家族としての好きに、異性としての好きが加わって。ご迷惑をかけた時もありました」
妹として見ている人が告白なんてしたら、迷惑かもしれない。そう感じて迷ったこともありました。
「でもそんな時も優しさで包み込んでくれて、わたしを受けて入れてくれて、夫婦になりましたよね。その前もそのあとも、ずっと幸せです。いつもありがとうございます」
これまでのことを思い出しながら感謝を告げて、そうしたら――沢山の拍手と笑顔が返ってきて。わたしも笑顔をお返しして、この場には沢山の笑顔の花が咲いたのでした。
今から10年前。わたしはテレーズとなり、第二の人生を歩み始めました。
その時はまさか、こんな毎日を過ごせるとは思ってもみませんでした。
お父さん、お母さん、お兄ちゃん、皆さん、テランスさん。
もう一度、言わせてください。
ありがとうございます。
わたしは、幸せです……!!
※本編完結いたしました。後日(明日か明後日)より、番外編を投稿させていただきます。
パーティー会場に入ったわたしは、すぐに唖然となってしまいました。
だって……。
すでに集まってくれていた、家族や従業員の皆さんの中に……。
「お久しぶりでございます、お嬢様」
「10年ぶりですね、お嬢様」
カウティア家の家令であるライアンさんと、御者であるフィリップさんがいたからです。
それも、スロティアー農園の作業着を着て。
「わたくし共の目的は果たされ、カウティア家に留まる理由はなくなりました。ですので余生はこちらで、お嬢様と共に過ごさせていただこうと決めたのございます」
「自分も同じく、あのお屋敷に居る理由はなくなりました。ならお嬢様と共に汗を流す以外の選択肢はなく、本日テランス園長に雇っていただいたのですよ」
「ライアンさんとフィリップさんの加入、これが5日前に言ってたサプライズだよ。僕も、お話を伺った時は驚いたよ」
ライアンさんもフィリップさんも代々カウティア家に仕えていた家系の人で、当主が交代してもカウティア家に居続けると思っていました。ですので従業員になられたと聞いて、本当に驚きました。
「新生カウティア家は何度も引き留めたそうだけど、お二人ともテレーズと共に働く未来を選ばれたんだよ。……優しさが優しさを生んで、優しい人達が再開して一緒になる。素敵なことだね。素敵なことですね」
「はい」
「まことに」
「ええ」
わたし、ライアンさん、フィリップさん。みんなで一緒に、頷きます。
あの日の出来事をそんな風に感じてもらえて、想ってもらって。大好きな人や大切な人達に出会わせてくれた人と、同じ時を過ごせる。
こんなにも幸せなことはありません。
「ライアンさん。フィリップさん。わたしがテレーズになる切っ掛けを作ってくれて、ありがとうございます」
ですので、改めてお二人にお礼をして――。次はエヴァンさん達がいる方を向きます。
「皆さん。右も左も分からなかったわたしに、お仕事を教えてくれてありがとうございます」
色々な技術や知識を、嫌な顔一つせず、親身になって教えてくれた。そんな過去があるからこそ、わたしは一人前を名乗れるようになりました。
堂々と、副園長を務められています。
その感謝を伝え、次はお父さんとお母さんとお兄ちゃんを見つめます。
「トビお父さん、ゼナイドお母さん、テランスお兄ちゃん。遠い親戚の紹介とはいえ、見ず知らずのわたしを温かく迎え入れてくれました。わたしに第二の人生を与えてくれて、ありがとうございます」
血の繋がった娘のように、妹のように、接してくれたこと。涙が出てしまうほどに嬉しかったです。
そんな気持ちを伝えて、最後に――テランスさんへと向き直ります。
「あの日からいつも、わたしの幸せを考えてくれていますよね。だから家族としての好きに、異性としての好きが加わって。ご迷惑をかけた時もありました」
妹として見ている人が告白なんてしたら、迷惑かもしれない。そう感じて迷ったこともありました。
「でもそんな時も優しさで包み込んでくれて、わたしを受けて入れてくれて、夫婦になりましたよね。その前もそのあとも、ずっと幸せです。いつもありがとうございます」
これまでのことを思い出しながら感謝を告げて、そうしたら――沢山の拍手と笑顔が返ってきて。わたしも笑顔をお返しして、この場には沢山の笑顔の花が咲いたのでした。
今から10年前。わたしはテレーズとなり、第二の人生を歩み始めました。
その時はまさか、こんな毎日を過ごせるとは思ってもみませんでした。
お父さん、お母さん、お兄ちゃん、皆さん、テランスさん。
もう一度、言わせてください。
ありがとうございます。
わたしは、幸せです……!!
※本編完結いたしました。後日(明日か明後日)より、番外編を投稿させていただきます。
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Vitch様。わざわざ感想をくださり、ありがとうございます。
描写不足で殆ど描けておらず、本当に申し訳ないのですが……。親族は双子の入れ替わりに気づいていなかったため、ざまぁの対象とはなっておらず……。そういったことは、その人たちには発生しないようになっております。
ただ時期は現在未定ではありますが、元家族たちの更にその後のエピソードは、入れさせていただこうかなと考えております……!
書記長様。わざわざ感想をくださり、ありがとうございます。
入れ替わりについてですが。親族は気づいていなかったようです。
ですので親族はこの件に関して特に関わってはおらず、ご期待を裏切ることになってしまいますが……。ざまぁの対象とはなってはおりません。
もちろん、元凶にはしっかりとしたざまぁが発生することになっております……!