１０年前にわたしを陥れた元家族が、わたしだと気付かずに泣き付いてきました

第９話 最悪の再会 俯瞰視点（２）

「「「ぎやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ！！　ぎやあああああああああ！？」」」

　大絶叫をあげていたイヴェットとレジスとゾエは、途中で驚きながら悲鳴をあげるようになりました。
　その理由は、予想とは違う痛みに襲われているから。
　三人へと飛んできたナイフは顔のど真ん中ではなく、それぞれの左頬を切りながら後方へと飛んで行ったのです。

「いたいぃいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ！！　焼けるみたいにいたいいいいいいいいいいいいいい！！」

　でも、生きている！？　なんで！？
　イヴェットは激痛によって地面を転がりながらも、頭の中がハテナマークで一杯になっていました。

「ぐぅぅぅぅうううううううう……！！　いたいぃぃ……！　外れた……！？　外した……！？」
「彼らは決して的を外しはしない。『イヴェットが傷付けた部位を切る』。それが目的だからそうなっているのさ」

　右手でレーナの左頬を叩（はた）いたから、左頬を狙った。先の行動の意図を説明したキックスは、くすりと薄笑いを浮かべました。

「僕はレーナを愛しているのでね。大切な人を傷付けた者は許さない、消してやりたいくらい憎いんだよ」
「「「…………」」」
「けれど殺してしまえば、絶望はそこで終わってしまう。それじゃあ足りない。だからお前達はこの場で殺さず、一生苦痛を与えてやろうと思っているんだよ」

　この先もずっと、じっくりと苦しめられるように。いつまでも後悔させられるように。
　キックスの中には、殺害という選択肢はありませんでした。

「これからお前達は『とある場所』に移動し、そこであることをしながら、死ぬまでソコで生活することになる。よかったね、探していた生活の場が見つかって」
「よっ、よくありません……！　お、お願いします……！　ゆ、許してくだ」
「意味のない質問をするね。これまでと今の状況下で、意思が通るとでも思っているのかい？」

　絶対に、通るはずはない。
　普段のキックスはどんな立場の人間の声であっても耳を傾けますが、もちろんソレは三人には適応されません。

「何を言ってもお前達の未来は変わらない。さあ、もう一度大移動の始まりだ」
「い、いやぁあああああああああ！！」
「いやだぁああああああああああ！！」
「いやぁあああああああああああ！！」

　イヴェット達はナイフを投擲した男達によって拘束され、再び乱暴に馬車へと投げ込まれます。そして同じように、新たな目的へと運ばれていって――