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第8話 気が付くと 俯瞰視点(2)
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「ぎぁ!?」
「あがぁ!?」
「ぎゃぁ!?」
――縄の切断を試み始めて、5分ほどが経過した頃でした。三人の口からパキッという嫌な音が聞こえ、三人全員の口内に激痛が走りました。
「歯がぁあ!?」「歯がぁ!!」「歯ぁぁ!?」
三人が噛みきろうとしているのは、固く太い丈夫な縄。歯の耐久力が縄の耐久力に敵わず、歯が割れてしまったのです。
「!!!!!!!!!!」
「!!!!!!!!!!」
「!!!!!!!!!!」
激しい痛みによって三人は声にならない声を上げ、仰け反り――
「うぁあああああああああああああ!!」
「うごおおおおおおおおおああああ!!」
「うぐあああああああああああああ!!」
――ますが、全員すぐさま縄に噛みつきます。
早くしないとテランスが来てしまう。
死にたくない。
絶対に逃げる。
そんな思いが痛みをかき消し、再びイヴェット&レジス&ゾエと縄の戦いが幕を開けます。
「うああああああああああああああうぐ!? まっ、負けるかぁああああああああ!!」
「うごぉぉおおおおおおおおぐふ!? こっ、このくらいいいいいいいいいい!!」
「うぐああああああああああぎぃ!? よくもぉぉぉおぉおおおおおおおおお!!」
相変わらず縄は固く、犬歯が完全に砕けました。ですが絶体絶命の状況が起爆剤となって別の歯で噛み始め――
割れる。別の歯で噛みつく。割れる。別の歯で噛みつく。
――そんな流れが、三回繰り返された時でした。
「やっ、やりましたわ!!」
生への執着心が人一倍強いイヴェットが、縄を噛み切る。
そうして自由になったレジスが残る二人の縄を解き、ついに三人は拘束から抜け出したのでした。
「やったな! イヴェットっ、ゾエ! 俺達はやったのだ!」
「縄の勝負に勝ったわ! しかも見て! わたくし達以外は誰もいないわよ!!」
自分とイヴェットとレジス。三人しかいない空間を見回し、ゾエはニッコリと満面の笑みを浮かべました。
「お父様! お母様っ!」
「うむっ! 今なら逃げられる!!」
「さあっ、出ましょ!!」
ボロボロになった歯を唇と唇の間で覗かせながら、三人は勢いよく走りだします。
薄暗い部屋を縦断した先にある、少し大きめのドア。扉にあるノブを勢いよく握り、重い扉を開け放ち――
「………………」
「………………」
「………………」
――笑顔の花を咲かせながら飛び出した三人の顔から、一瞬にしてキラキラとした笑顔が消え去りました。
せっかく咲いた花があっという間に散った理由。それは、
「無駄な努力、ご苦労様です」
にこやかに微笑むテランスと、7人の大男。
最悪の光景が広がっていたからです。
「あがぁ!?」
「ぎゃぁ!?」
――縄の切断を試み始めて、5分ほどが経過した頃でした。三人の口からパキッという嫌な音が聞こえ、三人全員の口内に激痛が走りました。
「歯がぁあ!?」「歯がぁ!!」「歯ぁぁ!?」
三人が噛みきろうとしているのは、固く太い丈夫な縄。歯の耐久力が縄の耐久力に敵わず、歯が割れてしまったのです。
「!!!!!!!!!!」
「!!!!!!!!!!」
「!!!!!!!!!!」
激しい痛みによって三人は声にならない声を上げ、仰け反り――
「うぁあああああああああああああ!!」
「うごおおおおおおおおおああああ!!」
「うぐあああああああああああああ!!」
――ますが、全員すぐさま縄に噛みつきます。
早くしないとテランスが来てしまう。
死にたくない。
絶対に逃げる。
そんな思いが痛みをかき消し、再びイヴェット&レジス&ゾエと縄の戦いが幕を開けます。
「うああああああああああああああうぐ!? まっ、負けるかぁああああああああ!!」
「うごぉぉおおおおおおおおぐふ!? こっ、このくらいいいいいいいいいい!!」
「うぐああああああああああぎぃ!? よくもぉぉぉおぉおおおおおおおおお!!」
相変わらず縄は固く、犬歯が完全に砕けました。ですが絶体絶命の状況が起爆剤となって別の歯で噛み始め――
割れる。別の歯で噛みつく。割れる。別の歯で噛みつく。
――そんな流れが、三回繰り返された時でした。
「やっ、やりましたわ!!」
生への執着心が人一倍強いイヴェットが、縄を噛み切る。
そうして自由になったレジスが残る二人の縄を解き、ついに三人は拘束から抜け出したのでした。
「やったな! イヴェットっ、ゾエ! 俺達はやったのだ!」
「縄の勝負に勝ったわ! しかも見て! わたくし達以外は誰もいないわよ!!」
自分とイヴェットとレジス。三人しかいない空間を見回し、ゾエはニッコリと満面の笑みを浮かべました。
「お父様! お母様っ!」
「うむっ! 今なら逃げられる!!」
「さあっ、出ましょ!!」
ボロボロになった歯を唇と唇の間で覗かせながら、三人は勢いよく走りだします。
薄暗い部屋を縦断した先にある、少し大きめのドア。扉にあるノブを勢いよく握り、重い扉を開け放ち――
「………………」
「………………」
「………………」
――笑顔の花を咲かせながら飛び出した三人の顔から、一瞬にしてキラキラとした笑顔が消え去りました。
せっかく咲いた花があっという間に散った理由。それは、
「無駄な努力、ご苦労様です」
にこやかに微笑むテランスと、7人の大男。
最悪の光景が広がっていたからです。
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