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第7話 二つめの自業自得 俯瞰視点(1)
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「ひぃ!?」「うああ!?」「ぎゃあ!?」
嬉し涙を零しながら抱き合っていた、イヴェット、レジス、ゾエ。そんな三人は揃って悲鳴をあげ、おもわずその場に尻もちをついてしまいました。
喜びと安堵が、一瞬に消えてなくなる。その理由は、馬車が停まったから。
大切に使い込まれていると分かる、年季を感じる中型の馬車。そんなものが突如として自分達の目の前で停まったため、三人はこのようになっていたのです。
「るっ、ルナがっ、おっ、追いかけてきた!? にげっ、にげ!!」
「にげっ! にげぇ!」
「ぁぁぁ!! にげぇぇぇ!! 逃げたいっ、のにぃぃ!!」
一度安心してしまい、疲労がどっと押し寄せていたこと。予想外なことが起きて、激しく動揺してしまっていること。
それらによって立ち上がることさえもできなくなり、イヴェット達はさらに狼狽え始めます。
「あぁぁあぁ!!」「うああああああああ!!」「ぎいあああああ!!」
ジタバタジタバタジタバタ。滂沱の涙を流しながら手足をバタつかせていると、馬車の扉が開き――穏やかそうに見える男性が、降りてきました。
清潔感のあるブラウンの髪の毛と温厚なタレ目が印象的な、20代半ばに見える男。そんな彼は護衛役も兼ねた御者と共に、イヴェット達に駆け足で近づいていき――
「大丈夫ですか!? どうされたのですか!?」
――三人を、心配そうに覗き込みました。
「「「…………。え……?」」」
「あ、驚かせてすみません。膝や肘などから血を流している……満身創痍な人の姿が偶然目に入り、心配になってお声をかけています」
逃走中に入った茂みで切ったり、転んですりむいたりした傷。男性は三人の身体を見渡しながら、丁寧に会釈を行いました。
「身体はボロボロですし、精神的にもかなりダメージを受けていらっしゃるようにお見受けします。皆様さえよければ、ウチで休まれていきませんか?」
「「「…………へ? うち……? やすむ……?」」」
「僕は――僕達親子は、そうですね、ここから西に10キロほど離れた場所で宿屋を営んでいるんです。ここでお会いしたのも何かの縁ですし、なにより、『困っている人は親身になって助けなさい』という曾祖父の言葉を大切にしておりましてね。よろしければ、お世話を焼かせてはもらえませんか?」
他意を一切感じない、柔らかい微笑み。それを向けられた三人は――
「おっ、お願いしますっ。お言葉に甘えさせてもらいますわっ!」
――しばらくヒソヒソ話で相談したあと、イヴェットが代表して返事をしました。
よくよく考えてみたら、この馬車は進行方向から来た――農園の関係者じゃない。
実際にもうヘトヘトで、動けないくらい疲労が溜まっている。
そんな理由で三人は休ませてもらうことになり、男性に促されて馬車に乗り込んで――
嬉し涙を零しながら抱き合っていた、イヴェット、レジス、ゾエ。そんな三人は揃って悲鳴をあげ、おもわずその場に尻もちをついてしまいました。
喜びと安堵が、一瞬に消えてなくなる。その理由は、馬車が停まったから。
大切に使い込まれていると分かる、年季を感じる中型の馬車。そんなものが突如として自分達の目の前で停まったため、三人はこのようになっていたのです。
「るっ、ルナがっ、おっ、追いかけてきた!? にげっ、にげ!!」
「にげっ! にげぇ!」
「ぁぁぁ!! にげぇぇぇ!! 逃げたいっ、のにぃぃ!!」
一度安心してしまい、疲労がどっと押し寄せていたこと。予想外なことが起きて、激しく動揺してしまっていること。
それらによって立ち上がることさえもできなくなり、イヴェット達はさらに狼狽え始めます。
「あぁぁあぁ!!」「うああああああああ!!」「ぎいあああああ!!」
ジタバタジタバタジタバタ。滂沱の涙を流しながら手足をバタつかせていると、馬車の扉が開き――穏やかそうに見える男性が、降りてきました。
清潔感のあるブラウンの髪の毛と温厚なタレ目が印象的な、20代半ばに見える男。そんな彼は護衛役も兼ねた御者と共に、イヴェット達に駆け足で近づいていき――
「大丈夫ですか!? どうされたのですか!?」
――三人を、心配そうに覗き込みました。
「「「…………。え……?」」」
「あ、驚かせてすみません。膝や肘などから血を流している……満身創痍な人の姿が偶然目に入り、心配になってお声をかけています」
逃走中に入った茂みで切ったり、転んですりむいたりした傷。男性は三人の身体を見渡しながら、丁寧に会釈を行いました。
「身体はボロボロですし、精神的にもかなりダメージを受けていらっしゃるようにお見受けします。皆様さえよければ、ウチで休まれていきませんか?」
「「「…………へ? うち……? やすむ……?」」」
「僕は――僕達親子は、そうですね、ここから西に10キロほど離れた場所で宿屋を営んでいるんです。ここでお会いしたのも何かの縁ですし、なにより、『困っている人は親身になって助けなさい』という曾祖父の言葉を大切にしておりましてね。よろしければ、お世話を焼かせてはもらえませんか?」
他意を一切感じない、柔らかい微笑み。それを向けられた三人は――
「おっ、お願いしますっ。お言葉に甘えさせてもらいますわっ!」
――しばらくヒソヒソ話で相談したあと、イヴェットが代表して返事をしました。
よくよく考えてみたら、この馬車は進行方向から来た――農園の関係者じゃない。
実際にもうヘトヘトで、動けないくらい疲労が溜まっている。
そんな理由で三人は休ませてもらうことになり、男性に促されて馬車に乗り込んで――
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