10年前にわたしを陥れた元家族が、わたしだと気付かずに泣き付いてきました

柚木ゆず

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第6話 終わりと、もうひとつの始まり  テレーズ視点(2)

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「実はアンタ達が事務所で話しをしている時、あの子が――テランスが入ろうとしてたんだよ。エヴァンが持っていこうとしていたお茶を届けるためにね」
「ぁ、そうだったんですね」
「んでその時に、ドアの向こうから響いてきた声が聞こえた。だから面接希望者の三人が元家族だとあの子が知って、その話を聞いたから知っていたのさ」

 そういえばすっかり忘れていましたが、エヴァンさんが『お茶の準備をする』と言ってくれていました。ちょうどテランスさんが帰ってきて、代わりに届けてくれていたんですね。

「結果として盗み聞きをしてしまい、ごめん。それと、ここにあるフロランタンだね。その言葉とこのお土産をテレーズに伝えて渡して、二人でお茶でも飲みながら食べていてほしい。それがあの子からの頼まれごとさ」
「あ、ありがとうございます。あれは室外に聞こえる声量で喋っていた、わたしが悪いのであって――お母さん。テランスさんはどちらに行ったんですか?」

 今日はわたしのために、打ち合わせ以外のお仕事は入れていなかったはずです。なにか、あったのでしょうか……?

「ああ、うん。そうさね。あっちもあっちで、出掛けている間に色々なことがあったみたいでねえ。あの三人に大事な用があるとかで、アタシもよく分からないんだけどさあ、接触するための仕込みをするらしいよ」
「え……? 仕込み、ですか……?」
「ついでに、アンタを何度も怒らせたお礼もするって言ってたね。時間がなくてちゃんと話す暇がなかったから、まあ、詳しい話は戻って来たあの子にしてもらおうじゃないか」
「そう、ですね。そうしましょう」

 ここであれこれ想像しても、答えは出ません。ですのでテランスさんが願っていたように、わたしはお母さんと一緒に休憩をすることにしたのでした。


   〇〇〇


「こっ、ここまで来ればっ、とりあえず大丈夫! 撒けたはずですわ!」

 あれから、なんと1時間後。必死になって走り続けていた三人は、ようやく『走る』を止めて『歩く』へと変えました。

「はぁ、はぁ、はぁ……。そうだな……。安心していいだろうな……」
「ええ、そう、ね……。やった……やったわ……! どうにか逃げ切れたわ……!」

 追いかけられていると思い込んで、全力疾走を繰り返したイヴェットとレジスとゾエ。三人は嬉し涙を零しながら、仲良く抱擁を行い――ですがその直後、全員の様子が一変することになりました。
 なぜならば――





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