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第6話 終わりと、もうひとつの始まり テレーズ視点(1)
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「…………ふぅ。このくらいにしておきましょうか」
顔を真っ青にして、震えながら逃げ出した三人。死に物狂いで飛び出していった姿を見届けたわたしは、ホイッスルを懐に仕舞いました。
『…………決めました。リンダ―さん達に捕えてもらったあとは、倉庫に閉じ込めて拷問をしましょう。死ぬまで、ず~っと』
もちろん、あの台詞は嘘。自分達の状況を良くしたいがために『ルナ』の名を出したあの人達に、膨大な量の恐怖を与えるためについたものです。
「三人の、あの表情。あんなにも怯えていたら、もう人目の多い場所には出ていかないでしょうね」
わたしが放った追っ手が目を光らせている。そう思い込んでいることでしょう。
ですので今後は人気(ひとけ)がない場所で、ビクビクしながらヒッソリ生きるという人生になるはずです。
「可能ならもっと何かしらをしたかったですが、リンダーさん達にもご迷惑をかけられませんしね。これで我慢しておきましょう」
気付かずに泣き付いてくる。これはまだ許せますが……。
『名前はっ、いっ、ルナといいます! 双子の妹でわたくしと同じ22歳で、とても優しい子なんです! どんな時も一緒にいてっ、本当に大切な妹なんです!』
『ルナはっ、自慢の子なんです!』
『ルナはっっ、大切な子なんです!』
あの言葉は、許せませんでした。
未だに、怒りの炎が燃えています。
ですが、あの状況ではアレが精一杯ですしね。この件はこれで終わりにして、気持ちを切り替えて仕事にもど――
「まさか、就職希望者が元家族だったなんてね。テレーズ、お疲れ様。大変だったね」
「いえ、大丈夫ですよ。ある程度のことはできましたし、むしろ、今日という日に起きてよかったのかもしれませ――あれ? お母さん、どうしてあの人達の正体を知っているんですか……?」
――仕事に戻ろうとしているとゼナイドお母さんがやって来て、わたしは首を傾げました。
あの三人はここから走って逃げたので、園内の人は泣き顔や泣き声を見て聞いています。ですが『元家族』という情報は、ここにいた人しか知らないはずです。
どうして知っているんでしょう……?
顔を真っ青にして、震えながら逃げ出した三人。死に物狂いで飛び出していった姿を見届けたわたしは、ホイッスルを懐に仕舞いました。
『…………決めました。リンダ―さん達に捕えてもらったあとは、倉庫に閉じ込めて拷問をしましょう。死ぬまで、ず~っと』
もちろん、あの台詞は嘘。自分達の状況を良くしたいがために『ルナ』の名を出したあの人達に、膨大な量の恐怖を与えるためについたものです。
「三人の、あの表情。あんなにも怯えていたら、もう人目の多い場所には出ていかないでしょうね」
わたしが放った追っ手が目を光らせている。そう思い込んでいることでしょう。
ですので今後は人気(ひとけ)がない場所で、ビクビクしながらヒッソリ生きるという人生になるはずです。
「可能ならもっと何かしらをしたかったですが、リンダーさん達にもご迷惑をかけられませんしね。これで我慢しておきましょう」
気付かずに泣き付いてくる。これはまだ許せますが……。
『名前はっ、いっ、ルナといいます! 双子の妹でわたくしと同じ22歳で、とても優しい子なんです! どんな時も一緒にいてっ、本当に大切な妹なんです!』
『ルナはっ、自慢の子なんです!』
『ルナはっっ、大切な子なんです!』
あの言葉は、許せませんでした。
未だに、怒りの炎が燃えています。
ですが、あの状況ではアレが精一杯ですしね。この件はこれで終わりにして、気持ちを切り替えて仕事にもど――
「まさか、就職希望者が元家族だったなんてね。テレーズ、お疲れ様。大変だったね」
「いえ、大丈夫ですよ。ある程度のことはできましたし、むしろ、今日という日に起きてよかったのかもしれませ――あれ? お母さん、どうしてあの人達の正体を知っているんですか……?」
――仕事に戻ろうとしているとゼナイドお母さんがやって来て、わたしは首を傾げました。
あの三人はここから走って逃げたので、園内の人は泣き顔や泣き声を見て聞いています。ですが『元家族』という情報は、ここにいた人しか知らないはずです。
どうして知っているんでしょう……?
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