10年前にわたしを陥れた元家族が、わたしだと気付かずに泣き付いてきました

柚木ゆず

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第5話 とあるお話 イヴェット視点(3)

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「スロティアー農園はその規模と知名度故に、しばしば厄介な人たち・・・・・・がいらっしゃるんです。関係者の心身に万が一何かがあったら大変ですからね、その手の対処に長けた方が常駐してくださっているんですよ」

 あの手この手で自分達の手中に収めようとする人間が、いるから……。どんなことにも対処できるように、専門の人間がココだけでも10人もいる……

「ちなみにわたしがこの『非常用ホイッスル』を吹いたら、すぐさまその方々が飛んできてくださるんですよ」
「「「………………」」」
「ですからあなた方が暴れようとしたら、あっという間に捕まってしまうんですよ。まあもっとも、暴れようとしなくても、これからホイッスルを鳴らすんですけどね」

 …………え…………?
 どういう……?

「あら? 分からないのですか? わたしの目の前に居るのは、かつてわたしを殺そうとした生き物たち。おまけにずっと、片方だけを贔屓して蔑ろにしてきた生き物たちなんですよ? ……そのお礼をしたくなるのは、当然ですよねぇ」

 ニヤリ。おもわず背筋が凍る笑みが、零れた……。

「貴方達が行おうとしていた、殴る程度では全然気が済みません。んーと、そうですねぇ」
「「「………………」」」
「…………決めました。リンダ―さん達に捕えてもらったあとは、倉庫に閉じ込めて拷問をしましょう。死ぬまで、ず~っと」

 敷地の奥にある倉庫の、壁に縛り付けて……。
 全身を鞭で打ったり……。
 色んな箇所を、ナイフで切ったり……。
 熱した棒をくっつけたり……。
 傷口に塩を塗り込んだり……。

「ぁ、ぁぁ……」

 聞いているだけで恐ろしくなって…………失禁してしまうことを……。悪魔のような微笑みを浮かべながら、口にした……。

「あらあら、なんて汚らしいのかしら。床を汚してしまった分も、お仕置きを追加しないといけませんねぇ」
「ひっ、ひぃ!!」「ひぁあ!!」「ひぃぃぃっ!!」
「イヴェット、レジスさん、ゾエさん。よく分かりませんが、貴方達は相当に苦労されたようですね? でもご安心を。ここからはたのしい時間が、はじまりますよぉ」

 アレが楽しい!? ちっとも楽しくない!!
 楽しいのはそっちだけ!!
 こっちにとっては地獄!!

((いや! いやっっ! いやいやいやいやいやいやいやいやいやいや!!))

 そんな人生いや! 絶対にいや! 死ぬのはいや!
 だ、だからっ。
 わたくしは――わたくしたち、は――

「では、はじめましょうか。ホイッスルを吹いて――」
「「「う、うああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」」

 逃げる!!
 転びそうになりながら事務所を飛び出して!! ホイッスルに気づいて追いかけられ始める前に走って走って発して園内を横断してぇぇぇ!!
 また走って走って走って走ってぇぇぇぇ!!
 園から出ても、まだ走る!!
 だってっ、絶対に例の10人が追いかけてくるんだもの!!

「「「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」」」

 わたくし達は全ての力を使って、死に物狂いで走って――

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