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第5話 とあるお話 イヴェット視点(2)
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………………ル、ナ? どういうこと? ルナは10年前に死んだ。死んでる。フィリップが処分した。
フィリップはお父様に心酔している絶対服従の忠犬、お父様を裏切るはずがない! じゃあなんで生きているの!? 死体!? 死体が喋ってるの!?
ワケが分からなくなって頭を抱えていると、嘲笑いながら説明された……。
「皆さんは、あのあとルナは死んだと思っていましたよね? それは大間違い。わたしはライアンさんとフィリップさんによって、救われていたのですよ」
家令のライアンと、御者兼今回の実行役だったフィリップ。ライアンが新しい居場所を紹介して……。フィリップが、そこに運んでいた……。
「う、嘘よ……。フィリップが、ライアンも……一緒になって助けるだなんて……。だって、フィリップは、ライアンだって、お父様の忠実なしもべだった……」
「そ、そう、だ……。特にフィリップは、あの日から――15年前に俺の活躍を目の当たりにし、ライアン以上に心酔した……。アレが、裏切るはずがない……」
「そうですね、フィリップさんは裏切るはずがありません。実際、一度も裏切ってなどいませんよ。だってあの方は、そもそもレジスさんのしもべなどではないのですから」
アイツは、ずっとお芝居をしていた……。
理由は、分からないけど……。
わたくし達がそう思い込むように、振る舞っていただけだった……。
「ライアンさんも、そう。お二人とも貴方がたの駒でないのですから、命令を実行しはしません。あの日わたしはルナ・カウティアからテレーズ・ナルリアスとなって、日常も一変することになります」
邪険にされていたお屋敷での生活とは、正反対……。
「トビお父さん。ゼナイドお母さん。二人の子どもである、テランスお兄ちゃん。エヴァンさん達スタッフの皆さん。素敵な方々に囲まれて、とても幸せな、充実した毎日をすごしていたのですよ」
365日みんなと汗を流しながら働き、笑い合う……。そんな生活を、していて……。
しかも……。しかも……。
「そうして1年前、こちらに来てから9年が経った頃ですね。わたしはテランスお兄ちゃんと結婚し、副園長となりました」
最初に受付をしていた男が言っていた、園長。この大きなスロティアー農園のトップに立つ人間の、妻になっていた……。
「イヴェット、レジスさん、ゾエさん、どうもありがとうございます。皆さんのおかげでわたしの人生は、とても幸せなものになりました」
「「「………………………………」」」
「殺されかけた者が幸せになって、殺そうとした者達が不幸になる。やはりこの世はよくできていますね。ふふっ。この世界に生まれてきてよかったですよ」
!!!!!!!!!!!!!!!!
ルナは嫌みたっぷりに嗤って、それを見たわたくし達の血の気は一気に上昇した。
腹が立つ! イライラする!!
ルナのくせにわたくし達をバカにするなんてっ、許せない!! 絶対に許せない!
だから――
「おやおや? と~っても悔しくって、殴りかかろうとしているんですか? うん。別にそうしても構いませんが、そんな暇はないと思いますよ?」
――生意気にベラベラ動く口を叩いてやろうとしていたら、突然ルナが懐からホイッスルを取り出した。
??? それは……なに……?
フィリップはお父様に心酔している絶対服従の忠犬、お父様を裏切るはずがない! じゃあなんで生きているの!? 死体!? 死体が喋ってるの!?
ワケが分からなくなって頭を抱えていると、嘲笑いながら説明された……。
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「う、嘘よ……。フィリップが、ライアンも……一緒になって助けるだなんて……。だって、フィリップは、ライアンだって、お父様の忠実なしもべだった……」
「そ、そう、だ……。特にフィリップは、あの日から――15年前に俺の活躍を目の当たりにし、ライアン以上に心酔した……。アレが、裏切るはずがない……」
「そうですね、フィリップさんは裏切るはずがありません。実際、一度も裏切ってなどいませんよ。だってあの方は、そもそもレジスさんのしもべなどではないのですから」
アイツは、ずっとお芝居をしていた……。
理由は、分からないけど……。
わたくし達がそう思い込むように、振る舞っていただけだった……。
「ライアンさんも、そう。お二人とも貴方がたの駒でないのですから、命令を実行しはしません。あの日わたしはルナ・カウティアからテレーズ・ナルリアスとなって、日常も一変することになります」
邪険にされていたお屋敷での生活とは、正反対……。
「トビお父さん。ゼナイドお母さん。二人の子どもである、テランスお兄ちゃん。エヴァンさん達スタッフの皆さん。素敵な方々に囲まれて、とても幸せな、充実した毎日をすごしていたのですよ」
365日みんなと汗を流しながら働き、笑い合う……。そんな生活を、していて……。
しかも……。しかも……。
「そうして1年前、こちらに来てから9年が経った頃ですね。わたしはテランスお兄ちゃんと結婚し、副園長となりました」
最初に受付をしていた男が言っていた、園長。この大きなスロティアー農園のトップに立つ人間の、妻になっていた……。
「イヴェット、レジスさん、ゾエさん、どうもありがとうございます。皆さんのおかげでわたしの人生は、とても幸せなものになりました」
「「「………………………………」」」
「殺されかけた者が幸せになって、殺そうとした者達が不幸になる。やはりこの世はよくできていますね。ふふっ。この世界に生まれてきてよかったですよ」
!!!!!!!!!!!!!!!!
ルナは嫌みたっぷりに嗤って、それを見たわたくし達の血の気は一気に上昇した。
腹が立つ! イライラする!!
ルナのくせにわたくし達をバカにするなんてっ、許せない!! 絶対に許せない!
だから――
「おやおや? と~っても悔しくって、殴りかかろうとしているんですか? うん。別にそうしても構いませんが、そんな暇はないと思いますよ?」
――生意気にベラベラ動く口を叩いてやろうとしていたら、突然ルナが懐からホイッスルを取り出した。
??? それは……なに……?
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