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第5話 とあるお話 イヴェット視点(1)

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「サロメさん、マックさん、レイさん、でしたっけ。貴方達は全員、嘘を吐いていますね」

 突然口の右端を吊り上げた、副園長のテレーズさん。不思議なことをしていた彼女は、更に不思議なことを言い始めた。
 嘘……? なにを、急に……?

「わ、わたくしは――わたくし達は、嘘なんて吐いておりませんわ。ど、どちらが嘘なのだとお思いなのでしょうか……?」
「そ、そうだな。我々は、嘘などついておりませぬ。どちらを勘違いされてしまっているのでしょうか……?」
「ご納得いただけるようすぐ、家族全員で説明をさせてくださいませっ。どちらがお気になられているのでしょうかっ?」
「嘘は山ほどありますが、そうですね。まずは、それぞれのお名前について指摘をさせてもらいましょうか」

 な、名前……?
 確かに、サロメという名前もバーナルという姓も偽物だけど……。この人と会うのは初めて、初対面。嘘だと気付くはずがありませんわよ……?

「サロメ、マックス、レイ、そしてバーナル。そのどれもが偽りのもの。本当の名前はそれぞれ、イヴェット、レジス、ゾエ。姓はカウティア、ですよね?」
「「「!?」」」

 どっ、どうなってますの!?
 なんでわたくし達の名を……!? それも、フルネームで当てるなんて……!?

「次は、病気の妹さんについてです。貴方がたには確かに、ルナという妹であり娘がいました。ですが真実は、『妹であり子であるルナが居た』ということだけですよね?」
「ちっ、ちがっ! 違います! ルナはっ、妹は本当に病気なんですっ! ええっとっ! あのっ、ですねっ! そっ、祖国っ、隣の国にあるっ! せっ、レベッキ医院という施設で面倒を見ていただいていて――」
「いいえ、そんな場所にルナは居ませんよ。だって『ルナ』は今から10年前に、貴方がたが姉『イヴェット』の身代わりにして、国外への追放と殺害を指示したのですからね」
「「「…………」」」

 また――ううん。さっき以上に信じられない言葉が出て、わたくし全員の心臓が止まりそうになった。
 ど、どうなってますの……!? な、なんで……

「なんで、そんなことを、言えますの……? あ、貴方は……。なんなんです、の……?」

 ガタガタ震える唇を必死に動かして、確認をしてみる……。
 なぜ……? どうして……?
 あの出来事は、関係者以外――叔父様や叔母様、親族でさえも知らないはずなのに……。なん、なんですの……!?

「わたしの正体ですか? では、教えてあげましょうか」

 フッと、嗤ったあと。副園長はまるで、貴族のように流麗なカーテ・シーを行って――……………………………………。

「「「…………………………」

 しんじられないことを……。言った……。


「お久しぶりですね、皆さん。わたしはかつて貴方がたの妹であり子どもだった、ルナですよ」
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