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第2話 3人が今ここにいる理由~10年の間にあったこと~ 俯瞰視点(2)
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「レーナ様、おめでとうございますっ」
「「「「「おめでとうございます!」」」」」
それは、パーティーが始まる二十数分前の出来事。会場に、ラクラス伯爵夫人であるレーナが――元ライアークル子爵令嬢レーナが現れたことが、すべての始まりでした。
「ついに、夢を叶えられましたわね……!」
「『パンチュール』での金賞受賞、おめでとうございます……!」
「皆様、ありがとうございます。……自身にとって会心の絵を評価していただけたこと、この上ない幸せでございます」
つい先日行われた世界的なコンクールで、身近な人間が優れた成績を収めた。その事実に会場中の令嬢と令息が祝福の声をあげましたが、ただひとり、そうではない人間がおりました。
それはもちろん――
((なんでレーナばっかり……!!))
――ルナ・カウティアこと、イヴェットです。
イヴェットにとってレーナは、忌々しい因縁の相手であり、今でもライバル視をしている相手。しかもイヴェットも同じコンクールに作品を提出していて、自身の作品はなにも受賞できませんでした。
東と西のように正反対な結果となっていることが、許せないのです。
((そうね、会心のできよね! でもねえっ、それは自分の中で会心なだけ! わたくしから見たら全然わたくし以下! そのコンテストなら銅賞ももらえないレベルなのに……!! 反対にわたくしの作品は、それこそわたくし史上最高のっ、誰から見ても会心の出来な作品だった! 最低でも銀賞レベルなのに……!! おかしいわっ!!))
あの時と、同じです。
『まったく。三流審査員とレーナ・ライアークルのせいで、手間を取られてしまった』
『あの名画が――イヴェットが銅賞だなんて、本当に信じられないわ。何もかも、見る目のない審査員と振る舞い方を知らない芋臭い子爵令嬢のせいよ。こっちは周りに原因を作られてしまった側なのに、国外追放だなんて……! あまりにもバカげているわ!』
『わたくしも、そう思いますっ。なにも悪くないわたくしだけが被害者になるなんてっ。とにかく理不尽で、ルナが居なかったら大変な目に遭っていましたわ!』
父レジスも母ゾエも、あり得ないと繰り返す。誰一人としてそれが『実力』だと認めようとせず、『理不尽』の三文字が頭の中を満たしていました。
――一週間前に結果が発表されてからずっと、激しい苛立ちを覚えていた――。
そして、
「本当におめでとうございます」
「「「「「おめでとうございます」」」」」
「あの日はこれまでの画家人生の中で、最も幸福な人なりました。ですが、ここで止まりはしません。むしろここからがスタート。更に上の世界を目指せるように…………自分の殻を更に破れるよう、精進してまいります」
――称えられる姿。はにかむ姿。決意をする姿――。
それらを目の前で見て聞いたことで、感情が理不尽に大爆発してしまう。
「また……。また偶々受賞しただけのくせに! 生意気なのよ!!」
あの頃のように叫びながら歩み寄り、あの頃のように思い切りレーナの頬を――
「おや? 僕の妻になにをなさるおつもりでしょうか?」
――あの頃と同じように頬を叩くことはできず、振った右手は物静かな男性に――レーナの夫であるキックスが受け止められました。
そのため暴力は成立しませんでしたが、当たらなかったからと言って収まる問題ではなく――
「「「「「おめでとうございます!」」」」」
それは、パーティーが始まる二十数分前の出来事。会場に、ラクラス伯爵夫人であるレーナが――元ライアークル子爵令嬢レーナが現れたことが、すべての始まりでした。
「ついに、夢を叶えられましたわね……!」
「『パンチュール』での金賞受賞、おめでとうございます……!」
「皆様、ありがとうございます。……自身にとって会心の絵を評価していただけたこと、この上ない幸せでございます」
つい先日行われた世界的なコンクールで、身近な人間が優れた成績を収めた。その事実に会場中の令嬢と令息が祝福の声をあげましたが、ただひとり、そうではない人間がおりました。
それはもちろん――
((なんでレーナばっかり……!!))
――ルナ・カウティアこと、イヴェットです。
イヴェットにとってレーナは、忌々しい因縁の相手であり、今でもライバル視をしている相手。しかもイヴェットも同じコンクールに作品を提出していて、自身の作品はなにも受賞できませんでした。
東と西のように正反対な結果となっていることが、許せないのです。
((そうね、会心のできよね! でもねえっ、それは自分の中で会心なだけ! わたくしから見たら全然わたくし以下! そのコンテストなら銅賞ももらえないレベルなのに……!! 反対にわたくしの作品は、それこそわたくし史上最高のっ、誰から見ても会心の出来な作品だった! 最低でも銀賞レベルなのに……!! おかしいわっ!!))
あの時と、同じです。
『まったく。三流審査員とレーナ・ライアークルのせいで、手間を取られてしまった』
『あの名画が――イヴェットが銅賞だなんて、本当に信じられないわ。何もかも、見る目のない審査員と振る舞い方を知らない芋臭い子爵令嬢のせいよ。こっちは周りに原因を作られてしまった側なのに、国外追放だなんて……! あまりにもバカげているわ!』
『わたくしも、そう思いますっ。なにも悪くないわたくしだけが被害者になるなんてっ。とにかく理不尽で、ルナが居なかったら大変な目に遭っていましたわ!』
父レジスも母ゾエも、あり得ないと繰り返す。誰一人としてそれが『実力』だと認めようとせず、『理不尽』の三文字が頭の中を満たしていました。
――一週間前に結果が発表されてからずっと、激しい苛立ちを覚えていた――。
そして、
「本当におめでとうございます」
「「「「「おめでとうございます」」」」」
「あの日はこれまでの画家人生の中で、最も幸福な人なりました。ですが、ここで止まりはしません。むしろここからがスタート。更に上の世界を目指せるように…………自分の殻を更に破れるよう、精進してまいります」
――称えられる姿。はにかむ姿。決意をする姿――。
それらを目の前で見て聞いたことで、感情が理不尽に大爆発してしまう。
「また……。また偶々受賞しただけのくせに! 生意気なのよ!!」
あの頃のように叫びながら歩み寄り、あの頃のように思い切りレーナの頬を――
「おや? 僕の妻になにをなさるおつもりでしょうか?」
――あの頃と同じように頬を叩くことはできず、振った右手は物静かな男性に――レーナの夫であるキックスが受け止められました。
そのため暴力は成立しませんでしたが、当たらなかったからと言って収まる問題ではなく――
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