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第6話 予想外の出会い シメオン視点(2)
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「あのっ、確認させてもらいたいっ! ジャック――ゲゼッテス子爵令息ジャックの災難を予測しっ、昨夜訪れる災難を回避する手段を授けたのは貴方で間違いありませんねっ!?」
ヴァッケルスの南に位置するエリアの中にある、花屋サンテリア、その斜め前の道で露店占い屋を開いている占い師。その姿を見つけるや俺は駆け寄り、水晶を見つめていた老人の顔を覗き込んだ。
「ひっひっひ、そりゃあワシのことですな。ええ。ジャック様に切っ掛けを提示したのは、このワシですじゃ」
「よかった! 実を言いますと、貴方に尋ねたいことがあるんですっ。ですがその前に、失礼を承知でもう一点確認させていただきたく思います」
はやる気持ちを抑えて、確かめておかなければならないもの。それはもちろん、
「占い師殿。俺の身分と名前が分かりますか?」
本当に、『力』のある人物なのかだ。
俺は今変装をしているし、状況判断ができないように護衛は後方で――この占い師の死角となる場所で待機させている。
ジャックの件は極僅かだが、何かしらのトリックがある可能性を排除できない。これで言い当てられたら本物になるが……。どう、だ……?
「ふぇっ、ふぇっ、ふえっ。貴方様は貴族、子爵家のご令息ですな? 御名前は、シメオン・アルーザー。ついでに申し上げますと、年齢は17、生誕日は5月14日でございますでしょう?」
「…………素晴らしい。その通りです! やはり貴方は本物だ!!」
身分とフルネームだけではなく、年齢と誕生日まで言い当てるだなんて! 俺の中に僅かあった疑念は、この瞬間跡形もなく吹き飛んだ。
「でっ、では早速ですがっ、尋ねたい――ご助言いただきたいことがあるんですっ。報酬は言い値でご用意させていただきましょう! 貴方様だけが頼りでしてっ、是非救いの手をお差し伸べください!」
「貴族様にそこまで仰られては、断れませんなぁ。ふむ、ほうほう。貴方様の御悩みは、『婚約』に関してのことですな?」
「!! さすがです……!! ええ、ええ……! その通りでございます……!」
「ん~む、ほう、なるほど。ヴァネッサ・レーアリアという幼馴染との婚約が決まっておるんですな。しかしながら貴方様の本命は、ヨランド・サレティスという方の幼馴染。どうにかして今ある婚約を解消し、真に愛する人と結ばれたいのですな?」
「……なにもかも、完璧でございます……! 仰る通り、俺が愛しているのはヨランドなんです。……『ヴァネッサが好き』と繰り返しておけばヨランドになるはずだったのに、父上はヴァネッサを選んでしまった。その原因は、なんなのでしょう……?」
これまでいくら考えても答えが出なかった問題の、答え。それを知るべく、前のめりになって問い――…………え……?
そんな俺に向かって、信じられない返事がやって来たのだった。
「…………ふむ。その原因は、本心を悟られているからですな。どうやら御父上は、本命は別にいるとご存じのようですなぁ」
ヴァッケルスの南に位置するエリアの中にある、花屋サンテリア、その斜め前の道で露店占い屋を開いている占い師。その姿を見つけるや俺は駆け寄り、水晶を見つめていた老人の顔を覗き込んだ。
「ひっひっひ、そりゃあワシのことですな。ええ。ジャック様に切っ掛けを提示したのは、このワシですじゃ」
「よかった! 実を言いますと、貴方に尋ねたいことがあるんですっ。ですがその前に、失礼を承知でもう一点確認させていただきたく思います」
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本当に、『力』のある人物なのかだ。
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ジャックの件は極僅かだが、何かしらのトリックがある可能性を排除できない。これで言い当てられたら本物になるが……。どう、だ……?
「ふぇっ、ふぇっ、ふえっ。貴方様は貴族、子爵家のご令息ですな? 御名前は、シメオン・アルーザー。ついでに申し上げますと、年齢は17、生誕日は5月14日でございますでしょう?」
「…………素晴らしい。その通りです! やはり貴方は本物だ!!」
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「でっ、では早速ですがっ、尋ねたい――ご助言いただきたいことがあるんですっ。報酬は言い値でご用意させていただきましょう! 貴方様だけが頼りでしてっ、是非救いの手をお差し伸べください!」
「貴族様にそこまで仰られては、断れませんなぁ。ふむ、ほうほう。貴方様の御悩みは、『婚約』に関してのことですな?」
「!! さすがです……!! ええ、ええ……! その通りでございます……!」
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そんな俺に向かって、信じられない返事がやって来たのだった。
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