私の宝物を奪っていく妹に、全部あげてみた結果

柚木ゆず

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番外編その3 リンダ~ミレーヌの本性に気付く時~ リンダ視点(2)

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((ははぁ~ん。そういう事だったのね))

 瞳に大量の憤怒を宿しながら、満面の笑みを浮かべるミレーヌ。その姿を目にした瞬間、全てを理解した。

((私がこの女を鬱陶しく感じる理由。それは、同族嫌悪だったのね))

 ミレーヌ・リュシアは天然もの。この認識は大間違い。彼女は私と同類で、分厚い皮を被って生きている人間。
 私は本能的にそれを察知して、あんな印象になっていたみたい。

((この私を騙し続けるだなんて、やるじゃないの。でも、詰めが甘いわね。どんな事があってもキャラを維持しておかないと、寝首を掻かれちゃうわよ?))

 私が2人もいると落ち着かないし、何よりこの女は、同世代――ライバルの1人なんだもの。しっかりと、潰しておきましょう。

((……ミレーヌは温厚と見せかけて、かなり攻撃的でヒステリックみたいだから――。ソコを使いましょっか))

 お茶会を終えた私はミレーヌの身辺調査を改めて行い、彼女が密かに目をつけていた相手を把握する。そうして準備を整え、攻める時期を探っていると――

『ああもう、ムカつく……っ。どいつもこいつも、ムカつくムカつくムカつく……!!』

 ――ウェンズ公爵家邸で大々的に開かれた、チコとライエン様の婚約を祝うパーティー。ミレーヌはそこで、そんな声が漏れそうな程に激怒していた。

((今夜のミレーヌ・・・・は、かなりイライラしているみたいね。ふふふ。これなら、ちょっと仕掛ければすぐに嵌まってくれそう。……この機会に、ライバルを一匹蹴落としておきましょうか))

 だから。私は動き始め――

「実は、ミレーヌ様にご相談がありまして……。私は昨日、ヴァティス・ラインズ様からお食事のお誘いをいただきましたの」

「あ、あの、ですね……。お返事に、迷っているんです……」

「……私は、顔も心も――外も内も平均で、ミレーヌ様の足元にも及ばない女ですから……。不相応で、自ら身を引くべきなのでは…………って、思っているんです」

 ミレーヌが興味津々なラインズ様、その偽情報を用いて仕掛ける。そして、その結果――

「うるさい!! あの女がなんなのよ!? アイツは関係ないでしょ!! あんなヤツと一緒くたにするなぁああああああああああああああああああ!!」

 平手打ちとこんな絶叫を引き出し、ミレーヌはお仕舞い。こうして私は強力なライバルの蹴落としに成功し、おまけにっ。この際の介抱が縁となって、侯爵家の嫡男と知り合うことが出来たのでした~っ!


 〇〇〇


 と、喜んでいるリンダでしたが――。彼女はまだ、知りません。

((リンダ……。鬱陶しいわね))

 類は、友を呼ぶ。
 リンダの身近にも彼女以上に狡猾な人間がいて、蹴落としを狙っていることを――。

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