わたし、何度も忠告しましたよね？

第１３話 嫌な再会 ミシェル視点（２）

「「「…………ご、拷問……」」」

　もしくは、人体実験……？　アレで刺したり切ったりするつもりなの……！？

「ええ、その通りですよ。しばらく身体中を切り刻んだ後、新薬の実験体をなっていただきます」
「「「いっ、いやあああああああああああああああああああああああああ――」」」
「というのは嘘です。さっき『身体を傷付けられない』と言っていたのをお忘れですか？」

　……そういえば……。そんなことを言っていた……。
　なら、本当に拷問と人体実験は違う。
　痛い思いは、せずに、済む……？

「よ、よかった――待ってください！　じゃあなんで注射器やメスがあるんですか！？」

　エリア―ヌさんの、言う通りだわ……。
　じゃあアレらは、なにに使うの……！？

「ああ、あれですか。あちらにあるものと、こちら――わたしが何度か使っていたマスクを使って、これから皆様のお顔を変えるのですよ。別人に生まれ変わっていただくためにね」
「別人……！？　なんのためにそんなことを……！？」
「影武者。要人の身代わりになっていただくために、その方々そっくりな顔を作るのですよ」

　わたくしは、第２王女殿下……。エリア―ヌさんは大公閣下の長女……。クレールさんは、宰相閣下の長女……。
　に、顔を変えられる……。

「先ほど――意識を失う前に申し上げたように、他国は仲が良いと見せかけて攻撃の機会を探っている。暗殺が起きてしまう可能性が常にあるのですよ」
「「「………………」」」
「ちょうど皆様は体型や髪質がそっくりで、しかも全員が貴族。付け焼刃ではありませんから所作などに違和感が出ることはなく、しかもミシェル様は侯爵家の娘として高等な貴族教育を受けています。貴方ならちょっと付け足せば王族にもなりすますことが可能で、なかなか真似できない第２王女殿下の所作を忠実に再現できるのですよね」

　だから……。わたくし達は、選ばれた……。

「ちなみに断ったり途中で裏切るような素振りが見られた場合は、その瞬間に・・・・・とてもよくないことが起きると思います。寿命が尽きるまで『死んだ方が楽』だと思うような目に遭い続ける羽目になりますので、従った方が得ですよ」
「「「……………………」」」
「さてミシェル様、エリア―ヌ様、クレール様。どうされますか？　お返事をお聞かせください」
「「「……従い、ます……」」」

　そう、答えるしかなかった。
　だって……。断ったら、それ以上の地獄が待っているんだもの……。

「そうですか。影武者はいつ何があるか分からない辛くきついお仕事ですが、運が良ければ天寿をまっとうできます。よかったですね」
「「「……………………」」」
「ではそろそろ、生まれ変わるための手術を始めましょうか。皆様、あとはお任せ致します――」
「ジネット、邪魔をしてごめん。ちょっといいかな？」

　ジネットが白衣の男女に向かって一礼をしていたら、扉が開いて男が入って来た。
　あれは……。ブノワ・マナハーツ……！？