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第11話 ? ミシェル視点(2)
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「正解です。わたしはアンナではなく、ジネット。貴方が――貴方がたがストレス発散の捌け口としていた人間ですよ」
面白い反応をしないどころか、腹が立つ台詞を吐き続ける生意気な女。
見間違いじゃない……。本人がそう言っているのだから、間違いない……。あのジネットが、目の前にいる……。
「どうして、ここに……。いつの間に、馬車に乗り込んだ、の……?」
「いつ? 最初から乗っていますよ。お屋敷を発つときから――厳密に言うと、サンクテール学院を発つ時からずっと」
「……なんですって……。じゃ、じゃあ……」
「ええ、そうですよ。あの2人に会いに行くと言いながら自室に戻っていた時、すでにわたしは貴方の侍女に化けていたのですよ」
ずっと、アンナじゃなかった……。。
わたくしはずっと、アンナではなくて……。変装したジネットと会話をしていた……。
「な、なんのために……。そんなこと、を……」
「お礼をするため、ですね。わたしの大切な人を――ブノワ・マナハーツを傷付けようとしたことへの」
あの日アンナに行わせた、階段からの突き落とし。
あれが、切っ掛け……。
「目には目で、本当なら『身体』にアレコレしたかったんですよ。けれど幸か不幸か貴方には使い道があり、肉体を傷付けるわけにはいきません。そこで精神を削ることにしたのですよ。色々なイベントを用意してね」
まずは、順番に仲間を消していって不安にさせて……。居ても経っても居られなくして、それぞれのお屋敷を訪ねるように仕向けて……。
その際に失神するレベルの恐怖を与えて、ウチのお屋敷で一泊するようにして……。過去の2人と同じ状況にした上で、水やビスケットを頼まれたと嘘を吐いてドッペルゲンガーに信憑性を持たせて……。
目隠しをした状態で移動をさせて、ドッペルゲンガーに成りすまして最大級の恐怖を与える……。
それが、この女の計画……。
これまで起きていた異変の全ては、ジネットの仕業だった……。
「わたしの計画はつつがなく進み、無事メンタルはボロボロになりました。本音を言うともう少しお礼をしたかったのですが、あちらの準備が整ったようですしね。すべてを明かして運ぶことにしたのですよ」
「………………な、なんなの……。なんなのよ、あんた……」
アンナだけじゃなくわたくしの姿まで完璧に再現して、まったく同じ声を出せるだなんて……。有り得ない……。
あり得ないことをできているこの女は、何者なの……!?
「貴方は真実を知っても、まもなく口外できなくなる。悪影響はありませんしね、教えてあげましょうか。わたしの正体を」
「……………………」
「ローレヴァル子爵家。実を言いますと我が家(いえ)は、ただの子爵家ではありません。ローレヴァル家はとあるふたつの役割を王家より賜った家のひとつであり、わたしはその任務を帯びている『国の影』なのですよ」
面白い反応をしないどころか、腹が立つ台詞を吐き続ける生意気な女。
見間違いじゃない……。本人がそう言っているのだから、間違いない……。あのジネットが、目の前にいる……。
「どうして、ここに……。いつの間に、馬車に乗り込んだ、の……?」
「いつ? 最初から乗っていますよ。お屋敷を発つときから――厳密に言うと、サンクテール学院を発つ時からずっと」
「……なんですって……。じゃ、じゃあ……」
「ええ、そうですよ。あの2人に会いに行くと言いながら自室に戻っていた時、すでにわたしは貴方の侍女に化けていたのですよ」
ずっと、アンナじゃなかった……。。
わたくしはずっと、アンナではなくて……。変装したジネットと会話をしていた……。
「な、なんのために……。そんなこと、を……」
「お礼をするため、ですね。わたしの大切な人を――ブノワ・マナハーツを傷付けようとしたことへの」
あの日アンナに行わせた、階段からの突き落とし。
あれが、切っ掛け……。
「目には目で、本当なら『身体』にアレコレしたかったんですよ。けれど幸か不幸か貴方には使い道があり、肉体を傷付けるわけにはいきません。そこで精神を削ることにしたのですよ。色々なイベントを用意してね」
まずは、順番に仲間を消していって不安にさせて……。居ても経っても居られなくして、それぞれのお屋敷を訪ねるように仕向けて……。
その際に失神するレベルの恐怖を与えて、ウチのお屋敷で一泊するようにして……。過去の2人と同じ状況にした上で、水やビスケットを頼まれたと嘘を吐いてドッペルゲンガーに信憑性を持たせて……。
目隠しをした状態で移動をさせて、ドッペルゲンガーに成りすまして最大級の恐怖を与える……。
それが、この女の計画……。
これまで起きていた異変の全ては、ジネットの仕業だった……。
「わたしの計画はつつがなく進み、無事メンタルはボロボロになりました。本音を言うともう少しお礼をしたかったのですが、あちらの準備が整ったようですしね。すべてを明かして運ぶことにしたのですよ」
「………………な、なんなの……。なんなのよ、あんた……」
アンナだけじゃなくわたくしの姿まで完璧に再現して、まったく同じ声を出せるだなんて……。有り得ない……。
あり得ないことをできているこの女は、何者なの……!?
「貴方は真実を知っても、まもなく口外できなくなる。悪影響はありませんしね、教えてあげましょうか。わたしの正体を」
「……………………」
「ローレヴァル子爵家。実を言いますと我が家(いえ)は、ただの子爵家ではありません。ローレヴァル家はとあるふたつの役割を王家より賜った家のひとつであり、わたしはその任務を帯びている『国の影』なのですよ」
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