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第10話 3つめの異変 ミシェル視点(7)
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「ふふふ。ようやく気付いてくれましたわねぇ」
顔も髪形も体型も声音も、全部おんなじ。アンナが座っていたはずの場所にはわたくしが居て、妖艶に口元を緩めた……。
なにもかもが、わたくし……。ということは……。
「ど、どっぺ……。どっぺ……。どっぺ……」
「ええ、そうですわよ。わたくしは貴女。俗に言うドッペルゲンガーですわ」
目の前にいるのは、あの化け物。
わたくしを死なせる、化け物……。
「会いに行こうとしていたのに、急にお屋敷から出ていってしまうんですもの。寂しくなって追いかけてしまいましたわ」
「…………アンナは……。ほかの人間は……。どこ、に……」
「ああ、あの人達? あの人達は邪魔だから、消しましたわ」
消す……。
しん、だ……。
「邪魔者はいなくなって、今居るのは2人だけ。ふふふ。楽しいことになりそうですわ」
「…………………………」
「この場で殺してしまうのは勿体ない、まずはわたくしの世界に連れて行きましょうか。さあわたくし、新たな旅立ちの時ですわよ。わたくしと一緒に――」
「いやあああ!! いやああ!! いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
悲鳴をあげながら急いで扉を開けて外に飛び出る!! 馬車から飛び降りて走って! 走ってっ!
森!!
近くに森があったから森に逃げる!!
「とにっ、とにかくっ! 逃げないと! 撒かないと!!」
捕まったらよく分からない場所に連れていかれてしまう! 連れて行かれないように走って走って走って走る!!
「はあ! はあっ! はあっ! はあっ! はあっ!」
足の裏が痛いし肺も心臓も裂けてしまいそうだけど走る!! もっと走って走って走って走る!
道を右に曲がって真っすぐ進んで左に曲がって真っすぐ進んで右に曲がって真っすぐ進んで左に曲がって真っすぐ進んで右に曲がる!!
「はあ! はあ! はあ! はあ! はあ!」
ドッペルゲンガーを惑わせるようにジグザグに進んでいって、どのくらいこんなことを続けたのか分からない。
「も、もう、限界……」
身体が動かなくなるまで全力疾走をして、地面に座り込む。
これ以上は走れない……けど、たぶんものすごい距離を走った。その最中に何度も右折と左折を繰り返したから、ドッペルガンガーは見失ったはず……!
「だい、じょうぶ……。だいじょうぶ……」
とりあえずあそこにある茂みに隠れて、体力を回復させましょう……。
また走れるようになった様子を見つつ、茂みから出て……。どこか近くの街か村に、助けを求めて――
「みーつけたぁ」
――……。隠れようとしていた茂み、から……。わたくしが――ドッペルゲンガーが、出てきた……。
「ひ……。ひぃ……。ひぃぃ……」
「さすがにもう動けないみたいねぇ。ふふふ。じゃあ、今度こそ一緒に行きましょうか。わたくしの世界にねぇ」
「ぁ、ぁぁ……。ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
ドッペルゲンガーの手が、わたくしへと伸びてきて――。
やがて、目の前が真っ暗になって――
顔も髪形も体型も声音も、全部おんなじ。アンナが座っていたはずの場所にはわたくしが居て、妖艶に口元を緩めた……。
なにもかもが、わたくし……。ということは……。
「ど、どっぺ……。どっぺ……。どっぺ……」
「ええ、そうですわよ。わたくしは貴女。俗に言うドッペルゲンガーですわ」
目の前にいるのは、あの化け物。
わたくしを死なせる、化け物……。
「会いに行こうとしていたのに、急にお屋敷から出ていってしまうんですもの。寂しくなって追いかけてしまいましたわ」
「…………アンナは……。ほかの人間は……。どこ、に……」
「ああ、あの人達? あの人達は邪魔だから、消しましたわ」
消す……。
しん、だ……。
「邪魔者はいなくなって、今居るのは2人だけ。ふふふ。楽しいことになりそうですわ」
「…………………………」
「この場で殺してしまうのは勿体ない、まずはわたくしの世界に連れて行きましょうか。さあわたくし、新たな旅立ちの時ですわよ。わたくしと一緒に――」
「いやあああ!! いやああ!! いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
悲鳴をあげながら急いで扉を開けて外に飛び出る!! 馬車から飛び降りて走って! 走ってっ!
森!!
近くに森があったから森に逃げる!!
「とにっ、とにかくっ! 逃げないと! 撒かないと!!」
捕まったらよく分からない場所に連れていかれてしまう! 連れて行かれないように走って走って走って走る!!
「はあ! はあっ! はあっ! はあっ! はあっ!」
足の裏が痛いし肺も心臓も裂けてしまいそうだけど走る!! もっと走って走って走って走る!
道を右に曲がって真っすぐ進んで左に曲がって真っすぐ進んで右に曲がって真っすぐ進んで左に曲がって真っすぐ進んで右に曲がる!!
「はあ! はあ! はあ! はあ! はあ!」
ドッペルゲンガーを惑わせるようにジグザグに進んでいって、どのくらいこんなことを続けたのか分からない。
「も、もう、限界……」
身体が動かなくなるまで全力疾走をして、地面に座り込む。
これ以上は走れない……けど、たぶんものすごい距離を走った。その最中に何度も右折と左折を繰り返したから、ドッペルガンガーは見失ったはず……!
「だい、じょうぶ……。だいじょうぶ……」
とりあえずあそこにある茂みに隠れて、体力を回復させましょう……。
また走れるようになった様子を見つつ、茂みから出て……。どこか近くの街か村に、助けを求めて――
「みーつけたぁ」
――……。隠れようとしていた茂み、から……。わたくしが――ドッペルゲンガーが、出てきた……。
「ひ……。ひぃ……。ひぃぃ……」
「さすがにもう動けないみたいねぇ。ふふふ。じゃあ、今度こそ一緒に行きましょうか。わたくしの世界にねぇ」
「ぁ、ぁぁ……。ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
ドッペルゲンガーの手が、わたくしへと伸びてきて――。
やがて、目の前が真っ暗になって――
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