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第10話 3つめの異変 ミシェル視点(6)

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((馬車が停まった!? 何が起きたの!? トラブル……!? 何かっ、いけないことが――違うっ、そうだわっ! 休憩をとるために停まったのよ! な、なんだっ。脅かさないでよ――違うっ! 違うのが違うっ!!))

 忘れていた。休憩は、少し前に取ったばかり。
 こんなにも短いスパンでは行わない。

((じゃ、じゃあやっぱりトラブル……!? 学院に着く時間ではないからトラブルなんだわっ!! 何が起きたというのっっ!?))

 大急ぎで原因を考え始め、すぐに止める。
 お、落ち着きなさいわたくし。落ち着くのよわたくし!
 目隠しをしていて周りを見ていないのだから、考えたって分かるはずがない。あれこれ考えなくても、見えている人に聞けばすぐに分かるでしょ。

「あ、アンナっ! なにが起きたのっ! つぶさに説明なさい!!」

 そう気付いたから、急いで前方に確認をして――

「……………………あ、アンナ……?」

 ――どういうこと……?
 いつまで経っても、返事が来ない。

「あ、アンナ? 聞こえていないの? ねえっ。ねえ! ねえアンナ! 早く返事をしないと平手打ちをするわよっ!!」

 と怒鳴ってみても――返事は来ない。

「アンナ!? アンナっ! アナタいい加減にしなさいよ!! いつまでご主人様を待たせているのよ!! 早く返事をしないと平手打ちだけじゃ済まなくなるわよ!! クビにするわよ!!」
 
 さっきよりも語気を強めて1回――でも返事はなくて、さらに3回繰り返しても結果は同じだった。
 しかも……。アンナ――アンナだけではなくて、護衛や御者の名を呼んでみても一切反応はなかった……。

「………………。し、しょうがない、わね……」

 念には念をでそうしたくはないけれど、仕方がない。するしかない。
 周りの状況を把握するため、視覚を塞いでいた目隠しを外して――

「…………………………」

 ――目隠しを外したわたくしは、石像のように固まってしまう。


 な、んで……? どうして、なの……?
 どうして――


「あらこんばんは。やっと目が合いましたわね」


 ――向かいの席に、わたくしが座っているの…………?

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