わたし、何度も忠告しましたよね?

柚木ゆず

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第9話 それは最後の○○ ミシェル視点

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「おかしいぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい――え……? ここ、は、どこ……?」

 気が付くと仰向けになっていて、目を開けると白い天井があった。
 わたくしはさっきまで、外で立っていたはずなのに……。なぜ、仰向けになっているの……? いつの間に、目を閉じてしまっていたの……?

「よかった。お目覚めになられたのですね」
「……え? あん、な……?」
「ここは、馬車の中でございます。お嬢様はレモナッツ伯爵邸の門の前で、失神してしまわれたのでございます」

 …………それを聞いて、思い出した。

『お、おかしい。こんなこと、有り得ない。おかしい……! おかしい……! おかしいおかしいおかしいおかしいおかしい……!!』

 異常なことが連続したせいで、パニックになってしまって……。恐怖で気を失っていたのね……。

「……気絶したわたくしを、車内に運んだのね。それでこの馬車は、どこに向かっているの?」

 車内は揺れていて、それは動いている証。
 わたくしは何も指示を出していないのだけれど。なにを目指しているのかしら……?

「ザユテイワのお屋敷へと向かっております。現状を鑑みるとそちらが最適と、勝手ながら判断させていただきました」
「そう。良い判断ですわ」

 こんな時は、できるだけ多くの人と――心を許せる人とひとりでも多く話をしたい。
 夜になっているもののまだ土曜日で、火曜日までたっぷり時間はあるもの。一泊して心労を取りましょう。

「ねえ、アンナ。わたくしはどのくらい意識を失っていたの?」
「4時間ほどでございます」
「そんなにも眠ってしまっていたのね。だったら、ええと……」
「到着までおよそ11時間となります」
「……長いわね。もう少し早くならないの――と言っても無駄よね」

 いくら怒鳴っても馬は言語を理解できないし、無理をさせてしまうと事故を起こしかねない――結局こちらが悪影響が出てしまう。そこで仕方なくアンナや護衛とオールドメイド(ババ抜き)をして暇を潰すことにして、

「お嬢様、さすがでございます」
「ふふん、そうでしょうそうでしょう。これが、持つ者ですわっ」

 なんと全ゲームで1番になるというちょっとした偉業を成し遂げ、そうしているうちにお屋敷に着き、わたくしは上機嫌で馬車を降りる。
 そうしたらお父様、お母様、お兄様が出迎えてくれて――

「久しぶりだねミシェル。まずは食事にしよう」
「アンナが伝書鳩を飛ばしていてね、ディナーを用意しているの。みんなで食べましょう」
「急いでケーキも用意しているんだよ。さあ食堂に行こう」

 ――美味しいものを食べたり楽しくお喋りをして、久しぶりに楽しい時間を過ごしたのでしたわ!!


 ○○


 それはミシェルにとって、最後の幸せなひととき。
 まもなく、ミシェルは――


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