わたし、何度も忠告しましたよね?

柚木ゆず

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第8話 押し寄せる恐怖 ミシェル視点(1)

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「今からっ! 今から3時間後に外出するわよ!!」

 走って宿舎に戻ったあと。わたくしは自室の扉を開け放ちながら、今後の予定をアンナに伝えた。

「お、お帰りなさいませお嬢様。外出、でございますか? どちらに外出されるのでしょうか……?」
「決まっているでしょう! マナサリア子爵家のお屋敷とっ、レモナッツ伯爵家のお屋敷よっ!」

 推理のしようがないなら、直接聞き出すしかない。
 2人とも実家に戻っているのだから実家を訪ねたら会えるはずだし、万が一会えなかったとしても、親に――当主に話を聞ける。本来こんな形での来訪はマナー違反なのだけれど、今回ばかりはそんな点を気にしていられないわ。

「それに相手は格下なのだから、このくらいの無理は通るわ。明日明後日は土曜日と日曜日で、しかも月曜日は創立記念日で休み。余裕を持って火曜日までに戻れて、学業に支障をきたしはしないわ」
「そ、そうでございますね。では至急、馬車の手配を――」
「さっき、3時間後と指定したのを忘れたの? すでに行っているわよ、わたくしが直々にね」

 真っ先に教員室を目指した理由は、準備を行うため。ここに戻る前にちゃんと、『足』と護衛の手配はしてある。

「できることならウチの人間で固めたいけど、今は一分一秒を争うの。学院が用意する馬車と護衛で移動するわ」
「承知いたしました。ではわたくしも準備を致します」

 なにかあったら大問題に発展してしまうから、学院も中途半端な馬車と護衛を用意しない。充分な水準を満たすものが出てくるためアンナもすぐ頷き、急ピッチで支度を整える。
 そうして無事に予定した3時間後の午後7時に学院を発てるようになり、もちろん即出発。まずは学院から近い方のお屋敷――エリア―ヌさんがいる、マナサリア子爵邸を目指す。

((……わたくしの知らないところで、何が起きているんですの……?))

 常時襲ってくる悪寒――不安と戦いながら移動を行い、数回の休憩を挟んで、出発からおよそ12時間後の午前7時過ぎに、マナサリア子爵邸に着いた。
 なのでわたくしが自ら門番と話して身分や来訪の目的を明かし、エリア―ヌさんとの接触を求めて――


「申し訳ございません。現在エリア―ヌお嬢様とのご面会は、どなた様であろうとも禁止となっております」


 ――なんですって……!?
 禁止……!?

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