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第7話 最悪の目覚めから始まる、最悪な1日 ミシェル視点(1)
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「ひっ!? きゃああああああああああああああああああああああああああああ!?」
「お嬢様!? いかがなさいましたか!?」
「……はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……。なんでもない……。なんでもありませんわ……。ちょっと……ほんの少しだけ、悪趣味な夢を見てしまっただけですわ……」
夢でよかったと心から安堵してしまうくらい、恐ろしい悪夢を見た。できるならアンナに見た内容を伝えて、からだの中にある恐怖を和らげたかった。
でも口に出してしまえば、それが実際に起きてしまうような気がした。
だからわたくしは言及せず、呼吸を整えてからベッドを降りた。
「……アンナ。今は何時?」
「午前5時21分でございます」
「そう、朝食まではそこそこ時間があるわね……。…………今日はクレールさんの部屋に行って、少しお喋りをして、そこから一緒に食堂に移動するわ」
あの部屋にはクレールさんとその侍女がいて、わたくし達を合わせたら4人になる。この中にある恐怖を数で薄めるために、そう決めた。
「承知いたしました。お嬢様」
「ええ。お願い」
いつものようにアンナにメイクなどを身だしなみを整えさせて、外に出る準備ができた。そこでわたくしはまだ人気(ひとけ)がない廊下へと出て、右方向へと進んでいく。
「……………………」
「? お嬢様?」
「……………………そこの曲がり角、嫌な感じがするわ。アンナ、先に行って様子を見てきて頂戴」
「畏まりました」
何かあった時はアンナの犠牲だけで済むように、わたくしはその場で立ち止まって待機する。
先行させたアンナは、ゆっくりと階段へと続く廊下を進んでいって――
「お嬢様、お待たせいたしました。違和感はどこにもありませんでした」
――何事もなく、わたくしのもとまで戻って来た。
アンナは、観察眼が優れている。ないといえば本当になくて、安心して進めるみたいね。
「そう。なら進みましょうか」
気になっていた角を曲がって階段を使って3階に上がり、左、真っすぐ、右の3方向に伸びている廊下を、左に進む。そしてそちらに進路を変えて更に10数秒ほど前進したところで、わたくしは足を止めた。
いま目の前にある部屋が、今朝の目的地。クレールさんの部屋。
「クレールさん、わたくしですわ。ミシェルですわ。ここを開けて頂戴」
コンコンコンとノックをして、返事を待つ。
…………。
………………。
……………………。
…………………………??
「おかしいわね……? なんで返事がないのかしら……?」
聞こえて、いない?
部屋の広さを考えると、そんなはずはないのだけれど……。中に誰かしらいるのに反応がないのだから、そうなるわね。
「はぁ、手間をかけさせるわね。……クレールさん、わたくしですわ! ミシェルですわっ! ここを開けて頂戴っ!」
さっきより大きめの声を出し、さっきよりも強めにノックをする。
この大きさなら、絶対に聞こえる。わたくしは息を吐いて苛立ちを身体から出しながら、返事が聞こえてくるのを待って――
「……………………うそ、でしょう……?」
――3分近く経っても、うんともすんとも反応はなかった。
まさか……。
まさか…………。
「お嬢様!? いかがなさいましたか!?」
「……はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……。なんでもない……。なんでもありませんわ……。ちょっと……ほんの少しだけ、悪趣味な夢を見てしまっただけですわ……」
夢でよかったと心から安堵してしまうくらい、恐ろしい悪夢を見た。できるならアンナに見た内容を伝えて、からだの中にある恐怖を和らげたかった。
でも口に出してしまえば、それが実際に起きてしまうような気がした。
だからわたくしは言及せず、呼吸を整えてからベッドを降りた。
「……アンナ。今は何時?」
「午前5時21分でございます」
「そう、朝食まではそこそこ時間があるわね……。…………今日はクレールさんの部屋に行って、少しお喋りをして、そこから一緒に食堂に移動するわ」
あの部屋にはクレールさんとその侍女がいて、わたくし達を合わせたら4人になる。この中にある恐怖を数で薄めるために、そう決めた。
「承知いたしました。お嬢様」
「ええ。お願い」
いつものようにアンナにメイクなどを身だしなみを整えさせて、外に出る準備ができた。そこでわたくしはまだ人気(ひとけ)がない廊下へと出て、右方向へと進んでいく。
「……………………」
「? お嬢様?」
「……………………そこの曲がり角、嫌な感じがするわ。アンナ、先に行って様子を見てきて頂戴」
「畏まりました」
何かあった時はアンナの犠牲だけで済むように、わたくしはその場で立ち止まって待機する。
先行させたアンナは、ゆっくりと階段へと続く廊下を進んでいって――
「お嬢様、お待たせいたしました。違和感はどこにもありませんでした」
――何事もなく、わたくしのもとまで戻って来た。
アンナは、観察眼が優れている。ないといえば本当になくて、安心して進めるみたいね。
「そう。なら進みましょうか」
気になっていた角を曲がって階段を使って3階に上がり、左、真っすぐ、右の3方向に伸びている廊下を、左に進む。そしてそちらに進路を変えて更に10数秒ほど前進したところで、わたくしは足を止めた。
いま目の前にある部屋が、今朝の目的地。クレールさんの部屋。
「クレールさん、わたくしですわ。ミシェルですわ。ここを開けて頂戴」
コンコンコンとノックをして、返事を待つ。
…………。
………………。
……………………。
…………………………??
「おかしいわね……? なんで返事がないのかしら……?」
聞こえて、いない?
部屋の広さを考えると、そんなはずはないのだけれど……。中に誰かしらいるのに反応がないのだから、そうなるわね。
「はぁ、手間をかけさせるわね。……クレールさん、わたくしですわ! ミシェルですわっ! ここを開けて頂戴っ!」
さっきより大きめの声を出し、さっきよりも強めにノックをする。
この大きさなら、絶対に聞こえる。わたくしは息を吐いて苛立ちを身体から出しながら、返事が聞こえてくるのを待って――
「……………………うそ、でしょう……?」
――3分近く経っても、うんともすんとも反応はなかった。
まさか……。
まさか…………。
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