上 下
10 / 32

第5話 困惑 ミシェル視点

しおりを挟む
「たいがく……!? エリア―ヌさんが……!?」
「はい……。宿舎の入り口でエリア―ヌさんの帰りを待っていると、後ろで荷物の運搬作業がはじまりまして……。不思議に思い近くに居た先生に訪ねてみたら……。本日付で自主退学をされたと、仰られました……」

 今朝早くに、エリア―ヌさんのお父様が――マナサリア子爵家の当主が、じきじきにいらしていて……。その旨を学院長先生に伝えた、らしい……。

「そんな……。バカな……。自主退学だなんて……。な、なにかの間違い……その方の、勘違いじゃないんですの……!?」

 学院を退学する。それはどのような事情があれ貴族界では『大きな傷』が残ってしまうもので、今後の人生に大きな悪影響を及ぼしてしまう。まともな家なら、交際、婚約の話を持ち掛けてこなくなってしまうものなのに……。
 退学、した……!?

「き、きっとそうですわっ。荷物の運搬作業は、何かしらの別の理由で行っているだけ。エリア―ヌさんはすぐ戻ってきますわよ」
「……いえ、勘違いではありません……。他の先生方にも……。学院長先生ご本人にも、確認しております……」
「……………………」

 クレールさんも何かの間違いだと思い、複数人に確認をした……。
 その場にいた教師陣ならともかく、ここのトップである学院長が間違えるはずはない……。エリア―ヌさんの退学は、事実、なんですわ……。

「ど、どうしてなの……!? 自主退学だなんて……。どうしてそんなことになっているんですの……!?」
「理由は、まったく分かりません。詳細は箝口令が敷かれていて、推測することしかできないのですが……。直前……前日まで、エリア―ヌさんにそんな素振りはありませんでしたので……。昨日の欠席…………お家に戻られた際に、何かがあったと見れる、のですが……。それは…………」
「ええ……。それはそれで、有り得ませんわ……」

 だってさっき言ったように、退学なんてしてしまえば『大きな傷』が残ってしまう。
 特にエリア―ヌさんの家は『子爵家』で、殊更に娘に傷がつくと不味い。どんなに深刻な問題が発生したとしても、退学なんてさせない。せめて休学にしますわ……。

「それに……。有り得ないことは、まだありますわよ……。なぜ…………わたくし達に一切、連絡がないんですの……!?」

 わたくし達は入学してからずっと一緒にいた。そんな相手に一言も残さないなんて、おかしい。お父様がいらっしゃったのなら、手紙くらい渡すように頼むはずですわ。

「は、はい……。そちらも……。仰るとおりで、ございます……」
「…………なんなんですの……!? どうなってるんですの……!?」

 何もかも、ワケが分からない。
 なにが起きているの……!?


 ○○


 仲間の突然の自主退学を知り、混乱するミシェル。
 そんな彼女は、まだ知りません。
 まもなく、更に混乱する羽目になることを――。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

公爵令嬢は父の遺言により誕生日前日に廃嫡されました。

夢見 歩
ファンタジー
日が暮れ月が昇り始める頃、 自分の姿をガラスに写しながら静かに 父の帰りを待つひとりの令嬢がいた。 リリアーヌ・プルメリア。 雪のように白くきめ細かい肌に 紺色で癖のない綺麗な髪を持ち、 ペリドットのような美しい瞳を持つ 公爵家の長女である。 この物語は 望まぬ再婚を強制された公爵家の当主と 長女による生死をかけた大逆転劇である。 ━━━━━━━━━━━━━━━ ⚠︎ 義母と義妹はクズな性格ですが、上には上がいるものです。 ⚠︎ 国をも巻き込んだ超どんでん返しストーリーを作者は狙っています。(初投稿のくせに)

「あなたの好きなひとを盗るつもりなんてなかった。どうか許して」と親友に謝られたけど、その男性は私の好きなひとではありません。まあいっか。

石河 翠
恋愛
真面目が取り柄のハリエットには、同い年の従姉妹エミリーがいる。母親同士の仲が悪く、二人は何かにつけ比較されてきた。 ある日招待されたお茶会にて、ハリエットは突然エミリーから謝られる。なんとエミリーは、ハリエットの好きなひとを盗ってしまったのだという。エミリーの母親は、ハリエットを出し抜けてご機嫌の様子。 ところが、紹介された男性はハリエットの好きなひととは全くの別人。しかもエミリーは勘違いしているわけではないらしい。そこでハリエットは伯母の誤解を解かないまま、エミリーの結婚式への出席を希望し……。 母親の束縛から逃れて初恋を叶えるしたたかなヒロインと恋人を溺愛する腹黒ヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。 この作品は他サイトにも投稿しております。 扉絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:23852097)をお借りしております。

お父様お母様、お久しぶりです。あの時わたしを捨ててくださりありがとうございます

柚木ゆず
恋愛
 ヤニックお父様、ジネットお母様。お久しぶりです。  わたしはアヴァザール伯爵家の長女エマとして生まれ、6歳のころ貴方がたによって隣国に捨てられてしまいましたよね?  当時のわたしにとってお二人は大事な家族で、だからとても辛かった。寂しくて悲しくて、捨てられたわたしは絶望のどん底に落ちていました。  でも。  今は、捨てられてよかったと思っています。  だって、その出来事によってわたしは――。大切な人達と出会い、大好きな人と出逢うことができたのですから。

婚約破棄と言いますが、好意が無いことを横においても、婚約できるような関係ではないのですが?

迷い人
恋愛
婚約破棄を宣言した次期公爵スタンリー・グルーバーは、恥をかいて引きこもり、当主候補から抹消された。 私、悪くありませんよね?

公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌

招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」 毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。 彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。 そして…。

今更、いやですわ   【本編 完結しました】

朝山みどり
恋愛
執務室で凍え死んだわたしは、婚約解消された日に戻っていた。 悔しく惨めな記憶・・・二度目は利用されない。

私たち、幸せになります!

ハリネズミ
恋愛
 私、子爵令嬢セリア=シューリースは、家族の中で妹が贔屓され、自分が邪険に扱われる生活に嫌気が差していた。    私の婚約者と家族全員とで参加したパーティーで、婚約者から突然、婚約破棄を宣言された上に、私の妹を愛してしまったなどと言われる始末。ショックを受けて会場から出ようとするも、家族や婚約者に引き止められ、妹を擁護する家族たち。頭に血が上って怒鳴ろうとした私の言葉を遮ったのはパーティーの主催者であるアベル=ローゼン公爵だった。  家族に嫌気が差していた私は、一部始終を見ていて、私を気の毒に思ってくれた彼から誘いを受け、彼と結婚することになる――。  ※ゆるふわ世界観なので矛盾等は見逃してください※  ※9/12 感想でご指摘頂いた箇所を修正致しました。

婚約破棄って、貴方誰ですか?

やノゆ
恋愛
ーーーその優秀さを認められ、隣国への特別留学生として名門魔法学校に出向く事になった、パール・カクルックは、学園で行われた歓迎パーティーで突然婚約破棄を言い渡される。 何故かドヤ顔のその男のとなりには、同じく勝ち誇ったような顔の少女がいて、パールは思わず口にした。 「いや、婚約破棄って、貴方誰ですか?」

処理中です...