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第7話 3年後~準備完了~ クリストフ視点(4)

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「マスターっ! マスターっ!? どうしてしまったんだ!? 返事をしてくれ!! 何か喋ってくれっ!!」
「…………………………? カウンターに、グラス……?」

 どうにか喉を動かし我武者羅に叫んでいたら、彼はやっと喋ってくれた……。の、だが……。
 それは、俺が期待したものではなかった……。

「? ?? 店内には誰も居ないのに、おかしいですね。いったい、誰に対してグラスを出していたのでしょう……?」

 そのグラスは俺に対して出したもの!! 店内には俺がいるのにっ!!
 ヤツは何度も首を傾げ、ぁぁぁぁぁ……。グラスを回収し、洗浄を始めてしまった!

「マスター!! マスターっっ!! マスタぁぁーっ!! どうしてしまったんだ!? こんな時に冗談はやめてくれっ!! やめてくれぇぇ!!」
「…………おや? これは、札束……? 今朝の報酬を、仕舞い忘れていたみたいですね……?」
「違う! それは俺が持ってきた金だ!! なにを言っているんだマスター!? かっ、返せ――ああぁぁああああああああ!?」

 咄嗟にヤツの腕を掴もうとしたら、ヤツの身体をすり抜けてしまった……。
 何度やっても、同じで……。誰かに触れることも、できなくなってしまった……。

 余計に、状況が悪化してしまった……。

「声が、届かない……。姿を、認識されない……。触れられない……。まさか…………。俺は…………。誰からも、気付かれなくなってしまうのか……?」

 そんなはずは、ないよな……? 考えすぎ、だよな……? ちょっと時間が経てば、元に戻ってくれるよな……?

「大丈夫、だよな……? そう、なんだよな……?」

 口内が海となってしまう程に、ひとりでに溜まっていた唾液。それを呑み込み、乾いた笑みを浮かべてみる。

「大丈夫、なんだよな……? そんなことには、ならないよな……?」

 し、心配し過ぎだぞクリストフ。落ち着こうクリストフ。安心して待っているんだクリストフ。そんなことにならないから冷静になれクリストフ。

「そ、そうだよな。そうだよなっ! そうに決まっているよなっ!」

 懸命に自分に言い聞かせ、締めに自分の胸元を強く叩く。そうして不安を追い出そう――と、していた俺は……。
 あることに気付いて……。更なる…………過去最大の不安に、襲われる羽目になったのだった。

「ぁ、ぁぁぁぁ……。いつの間にか、俺の身体がほぼ透明になっている……!」

 誰にも気付かれない、じゃない。それどころじゃない。
 これは――

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