婚約破棄ですか? でしたら貴方様には、その代償を払っていただきますね

柚木ゆず

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第5話 一つ目の代償によって~フルールside~ フルール視点

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「……前世の自分に、感謝をしなければなりませんね」

 カフェテリアで大騒動があった日から、79日後。ようやくクリストフ様に関する件が全て解決となり、私は自室でホッと胸を撫で下ろしていました。
 あの時以前の出来事を思い出さなければ、待ってたのは同じ結末。罠にはまり、人生が台無しになってしまっていました。
 ですので私は過去の私に今一度感謝を示し、そうしたあとは、右の手のひらを――私にしか見えない、そこにある小さなハート形をした紋章を見つめました。

「代償が発動してから、今日で79日目。そろそろ、効果がなくなる頃ですね」

 あの『代償その1』は、無限ではなく有限。三か月が経過すると『契約の証』が消え、以降は自由に操れなくなってしまいます。

「ですのでクリストフ様は、もうすぐ自由に動けるようになりますが……。その後、どんな選択をなさるのでしょうか?」

 そう呟きながら右手から左の手のひらへと視線を移し、そこにあるもう一つのハート形を――二つめの代償に関する紋章を、見つめます。

「第2の代償は、一つ目が解けた後、とある行動を取った場合にのみ発動します。……私としてはそうなって欲しくはないのですが、どうなのでしょうかね……?」

 クリストフ様は私を裏切った、今はもう大嫌いとなっている方です。けれど私には秘密裏に契約を交わし、心から信用していなかった、という事実がありますので。そのお詫びとして自害などの指示は出さず、今回の収監で水に流すことにしていたのです。

「……クリストフ様。もしも貴方様が反省をなさらず、あることを実行してしまったら――。その時は、恐ろしいことが起きてしまいます」

 それは、一つ目の非ではありません。あれとは比較にならない程のものが、その身にやってくることになります。


「そうなってしまうと、どうしようもなくなってしまいますので。そうならないことを、祈っております」

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