上 下
11 / 26

第3話 異常 クリストフ視点(6)

しおりを挟む
「どちらが正しいか、これによって証明されたな。皆(みな)、俺とベルは秘密裏に関係を持っていたんだよ」
「ち、ちが……。ちがい、ますわ……。これは…………。ちがい、ますの……っ」

 このまま『関係あり』だと確定してしまったら、大変なことになってしまう。だからベルは、顔面蒼白になりながらも否定を行う。
 頼む、頼むベル……っ。上手い言い訳を、見つけてくれ……!

「違う? ネックレスという明白な証拠があるのに、違うというのか? じゃあその理由を教えてくれ」

 すまない、ベル……! 俺は、こんなことを言いたくないんだ……。ベルを、応援しているんだ……!
 俺に、負けないでくれ……っ。どうにか、この危機を乗り越えてくれ……っ!

「自らの意思であの刻印があるものを身に着けていたのに、そうじゃない。ではなんのために着けていたんだ?」
「そ、それは……。それは……」
「それは、なんだ? どういった経緯で、そこにあったんだ?」
「それは……。それは…………。それは…………………………。めっ、命令されていたのですわ!」

 二十秒以上は、空白があっただろう。黒目を激しく上下左右に動かしていたベルは、どもりながら大声を出した。
 め、めいれい……!?

「皆様っ! 実を言いますとわたしも脅迫されていましたのっ! 圧倒的権力を持った恐ろしい存在に、そうしろと脅迫されていましたの!!」
『『『『『……………………』』』』』
「実は実は『フルールを追い詰めたあと、自らの罪だとして明かせ』『次にそれを否定しろ』『否定したあとネックレスに言及しろ』『あらかじめネックレスをつけて事実だと思い込ませろ』『そうしてお前達は白眼視をされろ』! こういったシナリオを組み立てられておりましてっっ! わたしは――わたし達はその通りに動いていただけなんですのっ」
『『『『『……………………』』』』』
「相手の意図目的は、一切分かりませんっ。ですが『敵』はあまりにも強大で、従わざるを得なかったのですっ! 実際に関係は一切持っていないのに、持っていると明かさないといけなかったのですっ! 逆らったり誰かに伝えたりするとどこに居ても即殺すと脅されていてっっ。仕方なく行っていただけなのです――えっ!? みっ、皆様っ!? なんなのですかっ!? なぜ白い目で見るのですかっ!?」

 その理由は…………言い分が、あまりにも滅茶苦茶だから……。
 どこに居ても即殺すと言われているのに言及して生きている点、などなど。矛盾不自然が多々あるから、嘘だと一瞬でバレてしまったんだ……。

((……これでは、もう……))

 挽回は無理で――っっ!?

「これで、偽りだと確定した。では次は2つめ、『捏造』に関する証拠を提示しようじゃないか」

 ま、まだ終わらせはくれない……。へたり込んだベルを尻目に、俺の身体はまた独りでに動き出して――。
 更に、大変なことに……。なっていって、しまうのだった…………。

しおりを挟む
感想 86

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されたのでグルメ旅に出ます。後悔したって知りませんと言いましたよ、王子様。

みらいつりびと
恋愛
「汚らわしい魔女め! 即刻王宮から出て行け! おまえとの婚約は破棄する!」  月光と魔族の返り血を浴びているわたしに、ルカ王子が罵声を浴びせかけます。  王国の第二王子から婚約を破棄された伯爵令嬢の復讐の物語。

婚約破棄、果てにはパーティー追放まで!? 事故死を望まれた私は、第2王子に『聖女』の力を見出され性悪女にざまぁします

アトハ
恋愛
「マリアンヌ公爵令嬢! これ以上貴様の悪行を見過ごすことはできん! 我が剣と誇りにかけて、貴様を断罪する!」  王子から突如突き付けられたのは、身に覚えのない罪状、そして婚約破棄。  更にはモンスターの蔓延る危険な森の中で、私ことマリアンヌはパーティーメンバーを追放されることとなりました。  このまま私がモンスターに襲われて"事故死"すれば、想い人と一緒になれる……という、何とも身勝手かつ非常識な理由で。    パーティーメンバーを追放された私は、森の中で鍋をかき混ぜるマイペースな変人と出会います。  どうにも彼は、私と殿下の様子に詳しいようで。  というかまさか第二王子じゃないですか?  なんでこんなところで、パーティーも組まずにのんびり鍋を食べてるんですかね!?  そして私は、聖女の力なんて持っていないですから。人違いですから!  ※ 他の小説サイト様にも投稿しています

妹が嫌がっているからと婚約破棄したではありませんか。それで路頭に迷ったと言われても困ります。

木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるラナーシャは、妹同伴で挨拶をしに来た婚約者に驚くことになった。 事前に知らされていなかったことであるため、面食らうことになったのである。 しかもその妹は、態度が悪かった。明らかにラナーシャに対して、敵意を抱いていたのだ。 だがそれでも、ラナーシャは彼女を受け入れた。父親がもたらしてくれた婚約を破談してはならないと、彼女は思っていたのだ。 しかしそんな彼女の思いは二人に裏切られることになる。婚約者は、妹が嫌がっているからという理由で、婚約破棄を言い渡してきたのだ。 呆気に取られていたラナーシャだったが、二人の意思は固かった。 婚約は敢え無く破談となってしまったのだ。 その事実に、ラナーシャの両親は憤っていた。 故に相手の伯爵家に抗議した所、既に処分がなされているという返答が返ってきた。 ラナーシャの元婚約者と妹は、伯爵家を追い出されていたのである。 程なくして、ラナーシャの元に件の二人がやって来た。 典型的な貴族であった二人は、家を追い出されてどうしていいかわからず、あろうことかラナーシャのことを頼ってきたのだ。 ラナーシャにそんな二人を助ける義理はなかった。 彼女は二人を追い返して、事なきを得たのだった。

婚約破棄されたから、とりあえず逃げた!

志位斗 茂家波
恋愛
「マテラ・ディア公爵令嬢!!この第1王子ヒース・カックの名において婚約破棄をここに宣言する!!」 私、マテラ・ディアはどうやら婚約破棄を言い渡されたようです。 見れば、王子の隣にいる方にいじめたとかで、冤罪なのに捕まえる気のようですが‥‥‥よし、とりあえず逃げますか。私、転生者でもありますのでこの際この知識も活かしますかね。 マイペースなマテラは国を見捨てて逃げた!! 思い付きであり、1日にまとめて5話だして終了です。テンプレのざまぁのような気もしますが、あっさりとした気持ちでどうぞ読んでみてください。 ちょっと書いてみたくなった婚約破棄物語である。 内容を進めることを重視。誤字指摘があれば報告してくださり次第修正いたします。どうぞ温かい目で見てください。(テンプレもあるけど、斜め上の事も入れてみたい)

妹に婚約者を奪われ、屋敷から追放されました。でもそれが、私を虐げていた人たちの破滅の始まりでした

水上
恋愛
「ソフィア、悪いがお前との婚約は破棄させてもらう」 子爵令嬢である私、ソフィア・ベルモントは、婚約者である子爵令息のジェイソン・フロストに婚約破棄を言い渡された。 彼の隣には、私の妹であるシルビアがいる。 彼女はジェイソンの腕に体を寄せ、勝ち誇ったような表情でこちらを見ている。 こんなこと、許されることではない。 そう思ったけれど、すでに両親は了承していた。 完全に、シルビアの味方なのだ。 しかも……。 「お前はもう用済みだ。この屋敷から出て行け」 私はお父様から追放を宣言された。 必死に食い下がるも、お父様のビンタによって、私の言葉はかき消された。 「いつまで床に這いつくばっているのよ、見苦しい」 お母様は冷たい言葉を私にかけてきた。 その目は、娘を見る目ではなかった。 「惨めね、お姉さま……」 シルビアは歪んだ笑みを浮かべて、私の方を見ていた。 そうして私は、妹に婚約者を奪われ、屋敷から追放された。 途方もなく歩いていたが、そんな私に、ある人物が声を掛けてきた。 一方、私を虐げてきた人たちは、破滅へのカウントダウンがすでに始まっていることに、まだ気づいてはいなかった……。

婚約破棄?それならこの国を返して頂きます

Ruhuna
ファンタジー
大陸の西側に位置するアルティマ王国 500年の時を経てその国は元の国へと返り咲くために時が動き出すーーー 根暗公爵の娘と、笑われていたマーガレット・ウィンザーは婚約者であるナラード・アルティマから婚約破棄されたことで反撃を開始した

婚約破棄ですか? では、この家から出て行ってください

八代奏多
恋愛
 伯爵令嬢で次期伯爵になることが決まっているイルシア・グレイヴは、自らが主催したパーティーで婚約破棄を告げられてしまった。  元、婚約者の子爵令息アドルフハークスはイルシアの行動を責め、しまいには家から出て行けと言うが……。  出ていくのは、貴方の方ですわよ? ※カクヨム様でも公開しております。

私を家から追い出した妹達は、これから後悔するようです

天宮有
恋愛
 伯爵令嬢の私サフィラよりも、妹エイダの方が優秀だった。  それは全て私の力によるものだけど、そのことを知っているのにエイダは姉に迷惑していると言い広めていく。  婚約者のヴァン王子はエイダの発言を信じて、私は婚約破棄を言い渡されてしまう。  その後、エイダは私の力が必要ないと思い込んでいるようで、私を家から追い出す。  これから元家族やヴァンは後悔するけど、私には関係ありません。

処理中です...