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第3話 異常 クリストフ視点(4)

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「わたしと貴方様は一切ご縁がなかったのに、そんなことを仰られたり……。ずっとフルール様を愛されていたはずなのに、そんな風に仰られたり……。今のクリストフ様は、何もかもがおかしい……っ! クリストフ様はっ、何者かに『そう言え』と言われているんですわっ!」

 窮地で俺の声を遮ってくれた、ベル。彼女は酷く困惑しながらも、衆人に向けそう訴えてくれた。

((いいぞベルっ! 最高だ!))

 もう少しで成功となる状況下で、いきなり白状し始める。それはあり得ないことだもんな!
 その言い分の方が信憑性があって、うまく立ち回れれば助かるぞ!

「違うよ、ベル。もう嘘はやめにしよう。正直に話そう」
「わたしは正直に話していますわっ! 皆様もそちらは分かってくださいますっ! だって先ほど申し上げたように、この状況は異様なんですものっ!」

 そう、そうだベル! その調子でいってくれっ!

「もし本当にわたし達が関係を持っているのでれば、貴方様はわたしとの未来を強く望まれています。でしたら猶更、その機会を逃す真似はしませんわ」
『『『『『たし、かに……』』』』』
『『『『『そう、だよな……』』』』』
「……クリストフ様は今、ご自分の意思で口を動かされてはいませんよね? わたしに――わたし達に、正直にお教えください。ご協力できることがあるなら、喜んでさせていただきますので」
「ベル。俺は、何も隠していないよ。事実を言っているだけだ」
「…………この状況でも口外できないようなことが、おありなのですね……。分かりました。そちらが真実なのだと、思い込むように致します」

 パチ パチ パチ
 ベルは『任せておいてください』という頼りになる目配せを送ってくれて、そのあと改めて周囲を見回した――オーディエンスを見回した。

「二転三転となってしまい、申し訳ございません。こういった状況、ですので……。皆様も当分は、こちらが真実だと認識をしておいてください」
『『『『『……え、ええ。分かりましたわ』』』』』
『その方が、よさそうだもんな』
『とにかく今は、言われた通りにしておこう』

 よし! よっし!! やったぞ!!
 こうやって時間を稼いでいる間に異変の原因を突き止め、身体の自由を取り戻す。そうして改めてフルールの罪を言及すれば、軌道はしっかりと修正でき――

「ベル、だから裏はないと言っているだろう? ……仕方ないな。これはあとにしておこうと思っていたんだが――。俺達が関係を持っていて捏造をしたという、動かぬ証拠を2つ提示しようじゃないか」

 ――…………。なん、だと……。
 俺は、なにをするつも――しまった!! 俺は、いま――

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