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第1話 異変 フルール視点(1)
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「目撃されないと思い込み、不完全な形で呼び出してしまったこと。作成に夢中になるあまり、筆跡鑑定という存在をうっかり忘れて自ら脅迫状を書いてしまったこと。などなど。これらの『間抜け』によってお前は確証を複数生んでしまい、尻尾を掴まれてしまったんだ」
クリストフ様。これから大変なことになるのは、私ではなく貴方様ですよ――。そんな風に思っていたら、今度はそのような言葉がやってきました。
((……やはり……。クリストフ様は、頭が切れる方ですね))
『筆跡鑑定の存在を忘れるはずがない』『これは偽装なのでは?』。筆跡の重要さを貴族はよく知っているため、周囲の方々はそう感じるようになります。ですが敢えてそういった形で言及することによって、皆様の中からそういった考えを消し去ってしまいました。
学年トップ3の頭脳は、伊達ではありませんね。私が『保険』を用意していなければ、それらの捏造全てが事実となってしまっていました。
「フルール、これが俺が激しい憤りを覚えている理由だ。……まさかお前が、こんなにも心の汚い女だったとはな。そんな者を愛していた自分が情けない」
「……………………」
「もしも時の逆行が可能ならば、あの頃に戻って必死で自分自身を止めたい。『お前が愛している女は、見た目だけの女だ!』『中身は正反対で、醜悪な性質を隠し持っているんだぞ!』と叫んでな」
まるで本当に心から悔やみ、大きな怒りを覚えているかのよう。事実を知っている私でさえも騙せてしまいそうなほど巧みにお芝居をされ、そうしていたら――純白の制服をお召になられた5人の男性が、カフェテリアに現れました。
突然いらっしゃられたこの皆様は、この国の治安機関に属する方々。呼び出しはともかくとして脅迫状は罪となるため、クリストフ様が連絡を入れていたようですね。
「フルール。学院内で起きたことなら、大目に見てもらえると思っていたか? それは大きな間違いだ」
「……クリストフ様……。わたしは、怖いことさえなくなってくれれば幸せですので……。やっぱり、こういったことはおやめに――」
「駄目だ。そこにいるのは、君の優しさに応えられる女ではないのだからね」
こちらは恐らく、ベル様を持ち上げるための小細工なのでしょう。うるうるとした上目遣いに向けて静かにかぶりを振り、治安機関の方々へと一礼を行いました。
「フルール・レファネッサルと話すことは、もうありません。この者の連行をお願い致します」
「「「「「はっ」」」」」
治安機関の方々は背筋を伸ばして返事を行われ、あっという間に私は取り囲まれてしまいます。そしてそのまま、連行が始まる――ことは、ありませんでした。
なぜなら、
「待つんだ!! 彼女っ、フルールは無実だ!!」
私が拘束される、その直前でした。張り詰めた空気が漂っていたカフェテリア内に、そんなクリストフ様の大声が響き渡ったからです。
クリストフ様。これから大変なことになるのは、私ではなく貴方様ですよ――。そんな風に思っていたら、今度はそのような言葉がやってきました。
((……やはり……。クリストフ様は、頭が切れる方ですね))
『筆跡鑑定の存在を忘れるはずがない』『これは偽装なのでは?』。筆跡の重要さを貴族はよく知っているため、周囲の方々はそう感じるようになります。ですが敢えてそういった形で言及することによって、皆様の中からそういった考えを消し去ってしまいました。
学年トップ3の頭脳は、伊達ではありませんね。私が『保険』を用意していなければ、それらの捏造全てが事実となってしまっていました。
「フルール、これが俺が激しい憤りを覚えている理由だ。……まさかお前が、こんなにも心の汚い女だったとはな。そんな者を愛していた自分が情けない」
「……………………」
「もしも時の逆行が可能ならば、あの頃に戻って必死で自分自身を止めたい。『お前が愛している女は、見た目だけの女だ!』『中身は正反対で、醜悪な性質を隠し持っているんだぞ!』と叫んでな」
まるで本当に心から悔やみ、大きな怒りを覚えているかのよう。事実を知っている私でさえも騙せてしまいそうなほど巧みにお芝居をされ、そうしていたら――純白の制服をお召になられた5人の男性が、カフェテリアに現れました。
突然いらっしゃられたこの皆様は、この国の治安機関に属する方々。呼び出しはともかくとして脅迫状は罪となるため、クリストフ様が連絡を入れていたようですね。
「フルール。学院内で起きたことなら、大目に見てもらえると思っていたか? それは大きな間違いだ」
「……クリストフ様……。わたしは、怖いことさえなくなってくれれば幸せですので……。やっぱり、こういったことはおやめに――」
「駄目だ。そこにいるのは、君の優しさに応えられる女ではないのだからね」
こちらは恐らく、ベル様を持ち上げるための小細工なのでしょう。うるうるとした上目遣いに向けて静かにかぶりを振り、治安機関の方々へと一礼を行いました。
「フルール・レファネッサルと話すことは、もうありません。この者の連行をお願い致します」
「「「「「はっ」」」」」
治安機関の方々は背筋を伸ばして返事を行われ、あっという間に私は取り囲まれてしまいます。そしてそのまま、連行が始まる――ことは、ありませんでした。
なぜなら、
「待つんだ!! 彼女っ、フルールは無実だ!!」
私が拘束される、その直前でした。張り詰めた空気が漂っていたカフェテリア内に、そんなクリストフ様の大声が響き渡ったからです。
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